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前衛的悪役令嬢

悪役令嬢・ファンタジック・パレード

作者:momoyama
「ニニーに謝罪しろ、マーズ」
 ランド王子が、マーズ公爵令嬢に不快な顔をしながらそう言い放つ。周囲の人々が怪訝な目で見つめている。
「私は何もしていませんわ! あんな小娘なんかに謝罪するもんですか!」
「ならばさっさとこの学園から消えろ! 私の前に二度と現れるな!」
 マーズ令嬢の後ろから、マーズの執事がやってくる。そしてマーズの腕をがっちりとつかむ。
「な、何をするのです! 離しなさい!」
「弁えてください、マーズ様。お父上からの命令です」
「何よ! 私は悪くないわ! 離しなさい! 離して!」
 マーズはそう叫びながら、ずるずると連れていかれるのだった。
「……皆の者、騒がせてすまない。教室の方へ戻ってくれ」
 ランド王子が周囲の人間にそう伝えると、人々はあちこちへと立ち去っていく。

「あの、ランド様」
 王子の横にいたニニーが小さな声で問いかける。
 それを聞き、ランド王子は微笑みを浮かべる。
「ん、どうしたんだ? ニニー」
「私、マーズ様を見送りたいのですが。よろしいですか……?」
「何を言ってるんだ。あいつはお前をいじめていた張本人だぞ。見送りなんかしたらまた何を言われるかわからない……」
「でも、どうしても見送りたいんです! お願いです、行かせてください!」
「……どうしてもか?」
「はい」
「……分かった。ただし私も一緒に付き合うぞ。ニニー一人では何をされるかわからんからな」
「ありがとうございます! では裏口から外へ出ましょう!」
「ん? アイツは馬車で帰るだろうから直接正門に行った方がいいんじゃ……」
「外でお見送りしたいんです。皆も待ってるはずですよ」
「皆?」

 裏口を出て、外から正門前に行くと、正門付近の道の両脇に人だかりができていた。
「な、なんだこの人だかりは。これ全部あいつの見送りか!?」
「多分そうですよ。あ、あそこのブルーシートが私たちの座る場所ですよ!」
「む、むぅ。だがなんでこんなに人が集まってるんだ? あいつは人望は無かったはずだが……」
 周囲を見ると、どの人も閉まっている正門を見つめている。それほどマーズが出てくるのが待ち遠しいのだろうか、とランドは思った。

 と、その時。

 どこからともなく、オーケストラ調の音楽が流れ始めた。
「な、なんだ? どこで演奏しているんだ?」
『まもなく、夢と愛情のショータイム、悪役令嬢・ファンタジック・パレードが始まります。最後までゆっくりとお楽しみください』
「うわぁっ!? なんだこの声は!」
「落ち着いてください、ランド様。魔術によるスピーチです」
「ま、魔術? 何故あいつの見送りごときにそんな大がかりな事を……」
 すると、正門がギギィと開く。
「ようやく奴が来たか。どんな悲鳴を上げて帰るのか見ものだな」
 だがランド王子は次の瞬間、驚愕して言葉を失う。

 巨大なフロートに乗った、この世界の女神がやってきたのだ。



 ♪真実の愛 夢と愛情♪
 ♪満ちた世界 今作り出そうよ♪
 ♪君もできる 心こめて♪
 ♪叫ぼう refused magical♪
『hello people! Today is a good lost love day.』

 軽快な歌と共に、女神の乗っているフロートが道沿いに動く。
 女神は周囲の人たちに笑顔で手を振りながら、外国語で語り掛けている。

「ど、どういうことだ。なぜ女神さまがこんな所に! というかなぜ外国語なんだ……」
「きゃー! 女神様ー! こっち向いてー!」
 焦るランド王子を尻目に、ニニーはおおはしゃぎで女神に手を振る。すると女神はニニーと目を合わせ、手を振ってくれた。
「ね、ね、ランド様! 女神様が手を振ってくれましたよ!」
「そ、それは名誉な事だな……じゃなくて! そもそもなんで女神様がこんな所にいるんだよ!?」
「あ、見てくださいランド様。ダンサーさん可愛いですよ!」
「話を聞け!」
 ニニーが指さした先には、妖精の格好をした沢山のダンサーがいた。ダンサーたちは女神のフロートの後を追いながら、華麗な舞を披露している。
「まったく何なんだ一体。女神様の祝祭が同じ時間に始まっていたのか?」
「違いますよ。これは悪役令嬢・ファンタジック・パレードです」
「……なんだそれ」
「悪役令嬢であるマーズ様の婚約破棄を記念して開催される、盛大なパレードです。皆これが楽しみで来たんですよ!」
「なんでそんなしょうもない事を盛大に祝うの!? と言うかそれだけのために女神様わざわざ召喚したの!?」
「それだけ、とかしょうもない、とか言っちゃダメですよ。悪役令嬢のマーズ様にとっては一世一代のビッグイベントなんですから」
「そんなんマーズ一人が心の中で祝えばいいだろ!? と言うかさっきから悪役令嬢悪役令嬢って、確かにアイツは悪い奴だけどどんだけマーズを悪役にしたいんだよ!?」
「あ、次のフロートが来ますよランド様」
「だから人の話を聞……」
 ランド王子がちらりとフロートを見た瞬間、口からブーッと噴き出す。

 そこにはランドの父であるスラー王国国王を乗せたフロートがあったのだ。



 ♪皆の笑顔 皆の世界♪
 ♪守るために 世界を作ろうよ♪
 ♪広がりゆく 愛と共に♪
 ♪叫ぼう refused magical♪
『皆の者、今日は宴だ。盛大に楽しんで帰るといい!』

 微妙に貴族風にアレンジされた楽曲と共に、フロートは進む。
 城をかたどったフロートの頂点には王。周囲にはランド王子の兄弟がダンスを踊っている。
 そしてフロートの後を、兵士の格好をした者達が軽快なステップを踏みながら歩んでいた。

「ち、父上、兄上! 一体どうしてここに……!」
「あ! ランド様立ち上がっちゃダメです!」
「フゴッ!?」
 ランドは立ち上がろうとしたものの、マントをニニーに引っ張られブルーシート内で盛大にこける。
「何するんだニニー! これは国家の問題だぞ!」
「立ち上がったら他のお客さんの迷惑になります。そういう行動は王子として慎んでください!」
「王子として国王の乱心を止める方が良いと思うんだが!?」
「やだなぁ、乱心じゃなくて純真なんですよ、国王は。あ、国王様ー! こっち向いてー!」
 ニニーはまたおおはしゃぎで国王に手を振る。すると国王はニニーと目を合わせ、手を振ってくれた。
「ね、ね、ランド様! 国王様も手を振ってくれましたよ!」
「そんなん私と結婚したらいくらでも手を振れるだろ!? それより色々突っ込むべきポイントがあるだろう!?」
「あ、そんな事より次のフロートはこの国の勇者様ですよ!」
「『そんな事より』じゃねーよ! と言うか勇者様も来てんの!? どんだけ盛大なパレードなんだよ!」



 ♪広い大地 迷わず行け♪
 ♪明日のために 戦いを始めよう♪
 ♪永久に続く 未来のために♪
 ♪叫ぼう refused magical♪
『Enjoy the grand party of lost love today! let go!』

 民族調のアレンジがされた楽曲と共に、フロートは進行する。
 広大な大地を想像させる、大きなフロートの中心に勇者。その周囲で仲間たちが手を振っている。

「キャー、勇者様ー! こっち向いて―!」
 ニニーはまたまたおおはしゃぎで勇者に手を振る。すると勇者はニニーと目を合わせ、手を振ってくれた。
「ね、ね、ランド様! 今度は勇者様に手を振ってもらいました! これはもう最高な気分ですね!」
「いや、なんでちょいちょい外国語喋る人が混じってんの!? と言うかあの人この国の勇者だよね!? 母国語喋れよ!」
「勇者様は語学力が堪能ですからね。無理もありません」
「語学力があろうがなかろうが、母国の人間に外国語使うのはおかしいだろ!?」
「何ですかさっきからいちゃもんばっかり。この豪華なパレードのどこが不満だって言うんですか」
「豪華すぎるんだよっ! 無礼な女が勝手に身を滅ぼしただけで、なんでこんな王国のパーティみたいなことやる必要があるんだよ!! あと突っ込み所もちょいちょいあるし!」
「なるほど、そういう理由で満足できないって訳ですね。でも次のフロートを見てください。もっと豪華なので、きっと満足するに違いありませんよ」
「いや、国王、勇者と来て今更豪華もクソも……何ぃっ!?」
 ランド王子は次のフロートに目をやり、再び驚愕する。

 次のフロートにいたのは……魔王だった。

 ◆

 ♪深い闇 晴れない霧♪
 ♪迷いも惑いも 全部味方にして♪
 ♪手を取り合い 力合わせ♪
 ♪叫ぼう refused magical♪
『闇の力が高まる……。ククク、これが失恋の宴の力か。素晴らしい! これなら勇者も倒せるに違いない……!』

 怪しげなアレンジがされた楽曲と共に、フロートは前へ行く。
 玉座のフロートに座るのは、怪しげなオーラをまとう魔王。
 その威圧感は、一目見ただけで何者なのか分かってしまう。
 そのフロートの周囲を踊るのはゴブリンとスケルトン達。人間を超えるほどのキレのあるダンスを披露している。

「お、おいニニー逃げるぞ! 魔王だ! 魔王がいるぞ!」
「そりゃあ盛大なパレードですからね。魔王ぐらいいますよ」
「なにその『そんな人どこにでもいる』的な反応!? 魔王だぞ! 魔の王なんだぞ!?」
「大丈夫です、暴れはしないですから安心してください」
「いや、『これなら勇者も倒せるに違いない』とか不穏なこと言ってたぞ!? ……というか前方に勇者居るのになんで気づかないの!?」
「あ、ゴブリンー! スケルトーン! こっち向いて―っ、キャーッ!」
「え、そこ『キャー魔王様ー!』じゃないのっ!? ……てかよく見たらあいつら踊り上手すぎだろ魔物の癖に!?」
 ニニーは例のごとくおおはしゃぎでゴブリンとスケルトンに手を振る。ニニーの近くで踊っていたゴブリンとスケルトンはそれに気づくと、ニニーに近づきにっこりと握手してくれた。
「ランド様ー! 今度は握手までしてくれましたよ? 凄いでしょーっ」
「低俗な魔物の癖にきっちりした対応をしただと!? というかスケルトンどうやって『にっこり』したの!?」
「でも汚いから後でちゃんと手を洗っておきますね」
「自分から呼んでおいて酷いな!?」
「さて、いよいよクライマックスですよー。最後はマーズ様のフロートです!」
「ようやくマーズかよ!? 今までが凄すぎてもうあいつの見送りとかもうどうでもよくなってきたわっ!!」

 ◆

 ♪ラララララ ララララララ♪
 ♪ララララララ ルルルルルルル♪
 ♪ララララララ ルルルルルルル♪
 ♪叫ぼう refused magical♪
『オーッホッホッホ! 皆の者、私に跪きなさい! 宝石を持ってくるのですわ!』

 クライマックスのような壮大なアレンジと共に、フロートが先に進む。
 煌びやかな宝石があしらわれたフロートの頂点に、マーズは立っている。
 そしてその周囲で、執事の姿をしたダンサー達が鮮やかな踊りを披露していた。

「全然反省してねーなアイツ……てか壮大なアレンジなのに歌詞適当!? 最後の一文以外数秒で書ける歌詞じゃねーか!?」
「私考案の歌詞なんですよ、これ」
「聞きたくない情報だったっ! お前もっと頑張れよ!?」
「あ、マーズ様ー! こっちこっち! こっち向いて―!」
『あら、ニニーじゃないの。いつも通り、私の靴を舐めて泥にまみれていなさい!』
「やったー! ランド様、私マーズ様に声かけられましたよ! 嬉しー!」
「いや、発言内容全然嬉しくない内容だよ!? というかマーズさっき『私は何もしていませんわ』とか言ってたくせに堂々といじめてるじゃねーか!?」
『あら、ランド王子御機嫌よう。今日は婚約破棄を祝うパレード、楽しんでいただいてますか?』
「わ、すごいすごい。ランド様も声かけてもらいましたね!」
「婚約破棄した相手に婚約破棄を祝うパレードを楽しんで貰うとか、前衛的すぎるだろ!? 止まれ止まれ! こんな茶番いい加減やめろぉ!」

 と、ランドが叫ぶとすべてのフロートがぴたりと止まった。

「……? 大人しくやめてくれたのか?」
「ち、違いますよランド様! これはきっと……」
『ダンスタイムですわー!』
「えっ……!?」
 マーズが大声でそう叫ぶと、音楽が切り替わりアップテンポな楽曲が流れる。

 ♪dancing dancing Passionately dancing♪
 ♪dancing dancing Happily dancing♪
 ♪dancing dancing lost love dancing♪
 ♪dancing dancing 皆で踊れ♪

 それに合わせダンサー、女神、国王、ランドの兄弟、勇者、仲間たち、魔王、ゴブリン、スケルトン、そしてマーズが軽快にシンクロしたダンスを踊りだす。

「凄い! 凄い! 停止ショーですよ、ランド様! 前回まで無かったのに、今回から追加になったんですね!」
「父上にまで何やらせてんのあいつら!? と言うか『前回まで』って、このパレード前にやった事あったの!?」
『さぁ、皆で踊る時間ですわ。せいぜい私のために盛大に踊りなさいな』
「あ! ゲスト参加のダンスタイムですよ! 私たちも参加しましょう!」
「いやいやいや、私まで踊ったら王家全員婚約破棄に浮かれて踊る馬鹿な王家扱いされるだろ!? 絶対踊らん!」
『ぐわっはっはっは! 悪役令嬢マーズよ! このパレードは私が乗っ取った! このパレードはもはや我々の物、これからは婚約破棄の時ではなく国の祝い事の日だけパレードを開催してやる!』
『うぅっ! 本性を現しましたわね魔王! さぁ、皆さんのダンスパワーで魔王を倒しましょう!』
「ほらほら、踊らなきゃ魔王にパレードが乗っ取られちゃいますよ。早く早く!」
「変なストーリー挟まないでくれない!? というか魔王基準の開催日の方がマトモだと思うんですけど!」
『ははは、その程度か悪役令嬢! ランド王子が踊らない限り、私は倒せないぞ!』
『くっ、押されてますわね。でも見てなさい、ランド王子が踊れば貴方なんか一捻りですわ!』
「さりげなく外堀埋めんなお前ら!? 踊らせたいなら素直に『踊れ』って言えよ!?」
「さ、早く踊ってください。でないとパレードは一生終わりませんよ?」
「うがあああああああああっ」

 ◆

『ぐはー、やーらーれーたー! おのれ、覚えておれー!』
 魔王は自分のフロート上でオーバーなリアクションで倒れる。が、数秒で何もなかったかのように玉座に再び座り直す。
『これで世界に平和がもたらされましたわ。では皆様、御機嫌よう。またいつかどこかで会いましょう!』
 マーズがそう言うと、再びBGMが元の音楽に戻り、数多のフロートたちは道に沿って遠くへと移動していった。

 その過ぎ去りゆくフロート達を、ランドは死んだ魚の目をしながら見つめていた。
「いやー、楽しかったですね。特にランド様が踊ってくれた時は最高の盛り上がりでした!」
 ランドとは対照的に、ニニーは嬉しそうに、そして名残惜しそうにフロートを見つめてそう言った。
「……今までの嫌な思い出を通り越して、トラウマになったよ。もう二度とあんなダンスはしたくない」
「えー、もったいない。あんな笑える踊りを披露できるだなんて、ランド様も凄いですよ?」
「うるさい! とにかく帰るぞ、今日は気分が悪いっ!」

「あ、だめですよ。お見送りはこれからが本番なんですから」
「は?」
「夜には光と聖魔法のパレード、悪役令嬢スターダストパレードがありますし、その後は盛大な花火を打ち上げるロストラブファイアワークスがありますから。それが終わるまでは一緒に付き合ってくださいね♪」
「死にたい」
この小説は歌詞(※自作です)を無視して好きなパレードBGMを流しながら読むとより一層楽しめます。
某夢と魔法の王国の何周年目かの曲を流してお祝い気分を高めるもよし。
イースターの曲を流してピョンピョン踊るゴブリンたちを想像するもよし。
大竹氏39歳の誕生日の曲を流してさらし者にされるランド王子を想像するもよしです。

……英語力は死んでます!ご了承ください!

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