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  酔狂学園伝 作者:留龍隆
(〜行事においては友との親睦の深まりも重要である〜)
 「・・・・・・着きましたよ」
 この上なく不機嫌な俊一郎。理由は簡単。自宅に人を呼びたくないらしい。
 高い高い高層マンションを見上げる四人は、ホテルのロビーのような玄関を抜け、エレベーターに乗り込んだ。
 「ふわー・・・俊ちゃんの家って、こんなとこだったんだ。ひろーい。たかーい」
 「一年前に引っ越してから、一度も来た事なかったからなあ。金持ちな」
 立夏と昌が思い思いに感想を述べるその横で、激しく落ち込む、というか嘆いている俊一郎がいた。低い背をさらにちぢこませて、そのまま消えてしまいそうだ。
 「・・あの、渡辺さん・・・?大丈夫で?」
 千代が話しかけると、はっとした様子で俊一郎が振り向く。
 「ああ、俊一郎、でいいから。・・・・・・ああ」
 またも落胆する俊一郎。
 「あ、わたしも立夏、でいいよ〜!勅使河原って、変だし」
 「俺はどっちでも構わない」
 「はあ・・・・・」
 
 
 「いいか。絶対に開けるな。僕が出てくるまで入るなよ・・・・入ったら末代まで恨む、祟る。いや、むしろもう君達の世代で家系を潰す」
 恐ろしいことを呟きながら、俊一郎は超高速でドアを閉めた。そして、待つこと十分。
 
 「・・・ぜー、はー、・・・・いいぞ・・・」
 「お邪魔しまーす」「どうも〜!」「上がらせてもらうんで」
 部屋は3LDK。そしてどの部屋にも昌たちを入れようとはせず、リビングに通して監視しながらお茶を汲む。
 「あ、ちょっとお手洗いかりていい?」
 立夏が立ち上がるとキッチンにいたはずの俊一郎は瞬間移動したんじゃないかというような速さでそれを阻んだ。
 「・・・・・ダメ、だ!!!!!」
 「どして?」
 「トイレは貸そう。但し、部屋の方を見るな・・・・・!!!」
 俊一郎は普段の温厚なしゃべり方もどこへやら、獣のような目つきで立夏を牽制しつつ、トイレの前に陣取った。昌や千代が指一本動かそうものなら、飛びかかってきそうな気迫であった。
 「なあ、部屋に何があるんだ?」
 昌が尋ねてもしらんぷり。ここまで隠すことに千代も興味が湧いたのか、テーブルについて大人しくお茶をすすっているフリをしながら、昌にぼそぼそと呟いた。
 「・・・・・わたしが、囮になって気を引きます。その隙に・・・・」
 「・・・オーケー」
 「何か仰いましたかね?隠し事はなしですよ?」
 俊一郎はそう言ってそこから動く気配がない。千代は立ち上がると、つかつかと俊一郎に近づいた。
 「・・・・なんですか、千代さん」
 「いきなり名前呼びですか。まあいいので。気づいてないなら・・・・」
 そう言ってちらりと後ろの部屋のドアを見やる。俊一郎は、まさか隠していたものが!?と思って振り向いた。しかしそこには何もなく・・・
 
 「うおりゃあああああ!!!!」
 
 突っ込んできた昌に跳ね飛ばされ、玄関まで廊下を滑る。
 「や、やめろーーーー!!!」
 昌はためらわず扉を開いた。パンドラの箱の向こう側には・・・・・・・
 
 
 
 [ジャーッ。キュッ。]
 立夏がトイレから出ると、そこには開け放された部屋の扉、その前に立ち尽くす昌。不思議に思って中を覗くと、
 「ああ、なるほどね」
 中にあったのは・・・・・・色々。本当に、色々。不気味に光るパソコンのディスプレイが、オタク、という言葉を立夏の頭にひらめかせた。
 「何があったんで、あ・・・・・・」
 千代は赤面して目を逸らす。立夏はふんふんとうなずいている。昌は扉をゆっくりと閉めた。ギギギギギ、バタン。俊一郎は、この世の終わり、といった表情で頭を抱え、呻いた。しかし現実というものは起こってしまったことを変えられない。三人の記憶には色々あった、本当に様々なものがこびりつき、これもまた変えられない。
 
 「・・・・・あれなんですよ。僕、今一人暮らしですから。・・・親とか来ないし、その辺に放置しといても問題なかったんです。ところがみんながうちに来るって言うから・・・掃除、片付けなんてやってたらあっという間に一日過ぎそうな量なんで、適当に部屋に放り込んで・・・・なんで開けたんです。このやろー。ちょっと察してくれてもいいじゃないですか、ちくしょー。・・・・・別に悪いことじゃないでしょ、健全なんですよ僕は・・・」
 俊一郎はうな垂れて、テーブルを挟んで三人と向き合った。心なしか三人は俊一郎から離れた位置に椅子を置いているように見える。そして、汲んだお茶に入っていた氷が動いて、カラン、と鳴り響いた。
 「・・・・・・・・いや、悪いだろ。おまえあと五年はしないとマズイだろう」
 「・・・・。いや、俊一郎さんは、オタクではないでしょう。そんな感じじゃ、ないので」
 「なんで二人共静かなの?わたしは普通だと思うけどな」
 立夏だけがこの状況に対して疑いの念を持っていないようだった。俊一郎は泣きそうな顔でうつむき、話題がそれるのをただただ待つばかりだった。
 
 「で、どう思う。あれはアリか?」
 昌はこの話題について食いついて離す気はなさそうだった。ボサっとした髪を掻きながら、俊一郎の趣味について話を展開しようとする。
 「わたしは普通だと思うよ〜。男の人は、大体ああなんでしょ?」
 立夏はあっけらかんとしてあまり否定的な意見は言わなかった。
 「・・・・・・・何も言えません、で」
 千代は発言を拒否。
 「・・・だーーーーーっ!!もう!!!別にいいでしょー!!!僕はあれが趣味ですよそうですよ別にいいだろなんで色々言われなきゃならないのかわからないねえ!!!!!」
 俊一郎は・・・開き直った。別にいいけど、昌はなんか、うわー、と言いたくなった。
 「・・・そうだな。じゃ、移動〜」
 
 
 「はいよ。で、うちなわけか」
 立夏の家。神社。神主の勅使河原亮韻、つまり立夏の父、は快く昌たちを受け入れた。ツルツルに剃った頭で常にしゃくを持ち歩く変わった人だが、昌には好ましい人物だった。ここまで来ても俊一郎はショックから立ち直っていなかったが、そのまま引っ張ってきた。そこで昌はふと思ったのだが、こんな引っ張ってくることも容易な軽い、背の低い童顔で、どうして店員は「売ってもよし」と判断したのか・・・・考えないことにしよう。
 「あら、昌君。お久しぶり。もう一人の子はお友達?俊ちゃんも・・・どしたの?」
 立夏の母美津子は頭にバンダナをつけて料理をしていたので、早々に昌たちは立ち去った。いや、俊一郎を気遣ったのではなく。
 「「・・・・・・・・・・。」」
 しゃべらない双子の兄弟、和樹と和夫。言いたいことは寸劇で表現する。・・・・・この家、居心地がわりーー!!昌は結局、自宅に戻って三人を相手にすることとなった。
 
 「おう、おかえり・・・なんだ、一人多いな」
 母・泉がトトトトト、と包丁で肉を捌いている。ショートロングの髪を束ねもせずに調理するのは、まあ許せる。しかし、調理中もタバコを吸っていることが多いので、ぼろぼろ灰が料理に混入しそうになっている。
 「おい、母さん。タバコやめろ」
 「あと一本ね」
 そんな会話をしている昌と泉に、千代が尋ねた。
 「おかあ・・・さん?」
 「あいにくと女の子を産んだ覚えはないよ」
 千代の台詞に泉が答える。
 「いや、そうではなくて。・・・昌さんの、お母さんですか・・・?」
 「まだお義母さんなんて呼ぶ人はいないはずだけどね。なに、あんたうちの子の嫁志望?」
 泉の切りかえしは常にそこにつながる。
 「いやいや、そうじゃなくて。え?若すぎないので?」
 千代が指差す泉。街に出しても「え、三十いってないんじゃないすか」という回答が帰ってきそうな泉。ああ、と立夏と俊一郎が理解する。二人は顔を見合わせ、「ま、訊きたくなるか、フツー」という表情になった。
 「若すぎとはありがとう。ちょっと前に丁度三十路になっちまった」

 「え、ええええええええ!!!??」

 泉、三十歳。昌、十五歳。30−15=・・・・・・15!!!??
 「そんな驚くことでもなかろうに。ねえ、昌」
 「いや、うちは特殊でしょ」
 立夏と俊一郎は事情を知っているのか澄ました顔である。千代はなぜそんなことになったのか、いや訊くのは失礼か、と色々葛藤することとなった。
 「いやー、十四の時に生徒会になったんだけどね、そこで会長やってた旦那とできちゃって。実家飛び出して職業を転々としながら暮らしてね。そうそう、ホームレスの時もあった。で、今は旦那は海外で仕事。ここで二人暮しさ」
 泉は明るくケラケラ笑っているが、笑い話ではない気がする。
 「さて、夕食の仕込みは出来た、と・・・なに、まだタバコのこと?勘弁してよ昌〜この一本!これでさっぱりするから!」
 「じゃ、今日は昌吉の家でご飯にしよ〜っと」
 「あ、僕も。あと昌吉さん、上の部屋にあがって探し物していいですか」
 「言っとくけど二階にはないよ」
 そんなやり取りを繰り広げる昌、立夏、俊一郎、泉。とてもじゃないけどハイスペックで付いていけない、そう思いながら千代も食事に参加することとなった。
はい、というわけで一人、変な趣味が発覚したと。一人、親の年齢がおかしいと。でも話は続きます。張ったのかそうでないかわからん伏線を抱えて。深夜にばかり投稿する不健康な日々も続きそうです。私はそれでもみなさんにお願いします。「見捨てないで」


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