読んでくださってる皆様ありがとうございます。
ただ今回のは少し表現的に狙いすぎだと思われる
方が多いかと思われますご注意を
(〜行事はなにかしら障害が多いものである〜)
「あー、全員欠席かあ・・・・・・あたし先生なのに」
「うう・・・・・・自主休校と言ってくれ」
「眠い」
「目の下のクマ、これは暫く寝ないといけなさそうで」
「あはは、じゃあ解散〜」
中途半端な時間帯になってしまい学校に行く気力が失せた昌達は、そのまま今日は休む事にした。そして麻衣子女医と別れ、千代と別れ、比較的家の近い昌と立夏は二人で家を目指して歩いていた。
「あー、俺これまでは理由なしに学校休んだりしなかったのに」
「貴重な体験だと思えばある意味楽しいよ?みんな今は学校で勉強中だと思えば、わたしたちはすっごく自由な状況にいる、ってことになるしね!」
常にプラス思考な立夏はそう言って昌に微笑みかける。しかし髪をおろして服もくしゃくしゃ、顔も眠たげでフラフラした立夏は、一晩適当に過ごすと人間はこうも変わるのだろうか、と昌に思わせる。
「しっかしなあ・・・・・・なんか嫌な予感がするんだよ」
「なんで?」
「さっきから景色とか台詞がデジャブってな。・・・・・・あれ?考えてみたら今の時間帯でも午後から学校に来る連中ってのはいるよなあ・・・・・・?」
昌はぼさぼさに広がった髪をがしがしと掻き、大きめだが眠そうな黒い目をこすった。
「それが何?」
「この台詞も夢で言ってた気がするんだが・・・・・・俊一郎の家って歓楽街に近いよなあ」
二人が歩いているのは今まさに歓楽街の中である。
「それが?」
「だから、」
昌が言葉を繋げようとした瞬間、曲がり角から見覚えのある少年が現れる。昌と立夏のクラスで隅の方を陣取っている少年だった。不良らしき少年はやはり行動もワルっぽいのか、午前の授業はさぼって午後から出てくる事にしていたらしい。そして昌と立夏に遭遇。歓楽街の真ん中で、だ。
「おいおいおいおいお二人さん、こんな朝早くになんですか?朝帰り?ホテルの帰りですか?お熱いことだな!オイ」
予期していた言葉を発して口笛を吹く少年。昌のこめかみに青筋が浮く。立夏はおろおろ。
「これは先生方に報告しないとな。先生方も驚くだろうなあ、まさか評議員二人がこういう事件を起こすなんてさ。いやあ、朝からビッグニュースだ」
実はこの少年、普段の素行が悪いので度々評議員から注意を受けていた。そのことを根に持っているのか、昌達評議員を攻撃する機会を狙っていたらしい。
「さーて、学校学校。け・ん・ぜ・ん・な高校生は学校で勉強しなくちゃ。保健体育の勉強ばっかしてるのは、極めて不健全な高校生だよなあ。全く、笑え」
「る、か?笑えるか?ああそうかおまえには俺らがそう見えたか。いいぜおまえ、仮にも俺は武道大会優勝者だ。おまえがそういう手に出るなら、こっちは手、を使っておまえを叩く」
怯む少年。怒りを露にする昌。所詮不良と粋がっても、毎日のように死線をくぐっている昌とは勝負にならない。特に、こういう不良は徒党を組んで相手を襲うのが常套手段。ゆえに、一対一での勝負には向いていない。
「お、おまえ、そんなことして退学になっても」
「どうせおまえが告げ口したら退学だろうからさ、おまえをボコッてからでも変わらないよなあ・・・・・・いや、ここで息の根を止めれば告げ口もされないか」
想像を絶する冷徹さで身も凍るような台詞を呟く昌。少年は既に逃げ腰。
「う、うそだ。殺すなんて、そんなの」
「さあーなー。でも俺、真剣使ってくる相手に木刀で勝ったし。実のところ殺しは慣れてた、という展開もあるかもしれないな・・・・・・まあなんにせよ、とりあえずしゃべれないよう、動けないようにするか?喉潰して、両手両足口鼻を封じる。まあ目は勘弁しといてやろう、どうせアイコンタクトなんて出来ないだろ」
不良少年は走り出した。しかしそれは敗走。脱兎のごとく。
「あー、ったく、デジャブすると思ったらコレかよ。もう嫌になるな」
「あはは、昌吉怖いね」
「当たり前だ。おまえと一緒に寝るなんて考えられないし」
昌の台詞にふっと影をたたえた表情をする立夏。しかしその変化は一瞬で、昌が捉えることはなかった。
「さ、早く帰って寝よう。一人でな」
ジョークをとばしながら歩き出す昌。しかし立夏は立ち止まったまま。
「?どうした、早く帰ろう」
「昌は」
呟き、昌を見据える立夏。その只ならない様子に昌も立ち止まる。
「わたしのこと、そんな風に見てないよね?」
「当然だろ」
これまたジョークのつもりで素早く返す。が、立夏は笑顔を崩して表情を曇らせる。しかしすぐに顔は笑顔で。いつもと変わらない表情で。
「だよねー。わたしも昌吉はちょっとアレかな」
「んなこと言える美貌の持ち主か、おまえは」
笑いあい、歩き出す二人。しかし本人達も気づかないほどに小さくだが、二人の後ろを付いて回る影は、ほんの少しいつもより離れて見えた。影と影の間に空いた空間は、心の距離感を示すように。
次の日、立夏は学校を休んだ。昌にはいつぞやのこともあったが、それは先日借りを返していたので今回は看病には行かない。学校で俊一郎、千代と連れ立って立夏の体調を気にしていた。
「立夏さん、今日も休むんで?」
「みたいですねえ。今日は評議会ですから、理由無く休むのもヘンなことだし」
「まあ、明日にはけろっとして出てくるだろ」
三人は最終的に昌の結論に納得し、いつも通り無駄に広い評議会場に着いた。
「校長先生、入場」
スピーカーから校長の声が響く。自分で「先生」と付けるか普通、という生徒達の視線をよそに、校長はミッション・○ンポッシブルの音楽と共に奈落の底から登場した。
「起立。礼、着席」
号令が終わると、校長はごほん、と咳を一つしてマイクの前に立った。
「えー、皆さん久々。元気そうで何より。さて、期末試験が近づいているのでみんな時間がないだろう。というわけで今日はプリントを配布して次の行事の内容について理解しておいて貰おうと思っている。プリントを」
校長が呼びかけると生徒の数人が昌達にプリントを配る。そこにはでかでかと次の行事について書いてあった。
『今月の行事は ナシ』
「はい、皆さんわかりましたか。今月は行事ナシです。期末試験の点数がそのままクラスでの行事ポイントに加算される・・・・・・おい!今シャーペン投げたの誰だ!!!校長だぞ校長!!!退学にするぞ今のヤツ!!!・・・・・・えー、というわけで今月は行事ナシ、なんですが。君達評議員には別に仕事があります」
ざわつく生徒。どちらかといえば校長がキレたことに対してのざわめきだったが。
「君達には評議員の中に居るスパイ、これについて色々仕事をしてもらいたいと思っています。今このときにもこの台詞を聞いているスパイが、この中にいる。それを探し出すまではいかずとも出来る限り動きを縛ってもらいたい。我々はもう既に評議員という立場を利用して夜間に学校に出入りしている生徒の情報も聞きつけている。そうした危険な雰囲気をしている人間を一刻も早く捕らえ、学園に平穏を取り戻したいものだ。以上、あとは追って連絡する。解散」
校長が奈落の底に消えると、昌たちも帰り支度を始めた。
「スパイねえ。どうでもいいかな、そんなこと」
「考えてみればそんな程度、いくらでもいることは想像がつく。一斉排除でもしない限り、意味は無いだろ」
「そんなことより、立夏さんの御見舞にでも行きませんか」
「「賛成」」
三人は勅使河原家へ向かった。
「立夏なら居ないぞ」
亮韻はそう言って坊主頭を掻いた。亮韻が言うには、立夏は朝になると体調が悪いといって部屋に閉じこもり、ついさっき具合を尋ねに行ったらいなかったそうなのだ。
「パジャマ姿で歩いてるなら目に付くはずだから、捜索願を出したからすぐだと思うが・・・・・・あの年頃の娘が考える事は親父の私にはわからん。君達は何か聞いていないか?」
三人は手分けして立夏を探す事に決めた。
「じゃあ見つけたら携帯に連絡する事。とっとと見つけないといけないですねえ」
「わたしはこちらを探してみるんで」
俊一郎はたたっと走り出し、千代も違う方向へ駆け出そうとした。しかしそれを呼び止める昌。
「ちょっと、待て。俺、どこへ行ったかわかるかもしれない」
「「どこで(すか)?」」
昌はくいっと後ろをゆびさす。その方向にあったのは――――――
「やっぱ居たな」
昌の声にびくっとして転げ落ちそうになる立夏。肩をつかんでそれを押さえる。
「もう少し、思い出の場所にいるとかそういう展開はないのか」
「そんなところないんだもん・・・・・・」
立夏はパジャマ姿で昌の家の屋根に座っていた。パジャマ姿でバレない、ということは、中々人目に付かない場所。しかも目撃証言すらほぼないということは、必然的に近いところとなる。立夏の家周辺は開けた土地で隠れる所はない、そして自宅は平屋なので屋根にいたらバレる。つまり、知り合いの家であり二階建て、見つかりにくいのは昌の家の屋根の上だった。
「おーい、俊一郎も大和田も帰って大丈夫だぞー。ここに居た」
下で見守っていた俊一郎と千代は、それを聞くと了解して去っていった。昌はそれを見届けると立夏に向き直る。すると立夏はパジャマ姿を見られたことへの羞恥心からか、頬を染めてうつむいた。
「ほれ、帰るぞ」
手を差し出すが立夏は首を横に振る。昌は差し出した手を頭にやり、がしがしと掻き毟った。
「亮韻さんも心配してたし、帰ったほうがいいぞ」
「いい。別に。帰りたくない」
わけがわからず為すこともなく、昌は立夏の隣に座りこむ。しかし、立夏は空間をあけようと座ったままでじりじりと離れる。
「なんだ?俺が横にいると不満か?」
「別に。でもなんか嫌なの」
溜め息をついて寝転がる昌。屋根の上から見る空は、普段と違って澄んでいるように感じられた。
「空、綺麗に見えるな。普段とは違う感じ」
「・・・・・・下向いてたからわかんないよ」
立夏はうつむいたまま。空を見ることも無く。
「普段とは違う、っていえばおまえだ。でも良い意味での違う、じゃない」
黙ったまま。答えを返す事も無く。
「なんか俺がしたのか?俺から距離おいてるけど」
離れたまま。触れ合うことも無く。
「だったら・・・・・・謝るよ。ごめん。でも、そんなふて腐れた態度はやめてくれよ」
「昌が悪いんじゃないよ」
ようやく口を開いた立夏。にじり寄りながら、ゆっくりと顔を上げて昌を見つめる。
「ただ・・・・・・わたしの捉え方が悪かった、っていうのかな」
「何が」
「昌の態度について」
そのままの体勢で、昌にさらに顔を近づける。
「昌は、なんとも思わない?」
「・・・・・・何が」
「今の状況」
顔が触れんばかりの距離で、立夏は話しかける。言葉一つ一つが紡がれるたび、昌の顔に吐息がかかる。昌はなんと返せばいいかわからず、とりあえず思いついたことを言う。
「早く家に帰ったほうがいい、と思ってるけど」
「もういいよ」
立夏は溜め息をつくと顔を離す。赤ん坊がハイハイをしているような体勢でしばらく昌を見つめる。
「今の状況、って言われても、俺には何がなんだか」
「だから、いいっていってるでしょ」
喧嘩腰で返す立夏。しかしそこで、昌がふっと視線を泳がせた。一点を凝視。そしてすぐ目を泳がせる状態に戻る。
「・・・・・・・・・・・・?」
不可解な行動に立夏の感情が不安定になる。なんで目を逸らしたのか。一瞬見たのは何か。「昌・・・・・・」
「へ?」
「なんで目を逸らすの」
立夏としてはただの疑問をぶつけただけなのだが、昌にはまだ残っていた喧嘩腰の余韻が聞こえたように感じられた。そのためしどろもどろになり、目を泳がせたまま声をうわずらせて返答する。
「え、・・・・・・と、そのだな。おまえも人の家の屋根に乗ってるんだから、悪いことしてるんだぞー・・・・・・って、先に言い訳してるんだけども、だな」
「は?」
これまたただの疑問である。しかし昌には詰問に聞こえる。
「えっとそのだな・・・・・・おまえが悪い。うん。大体だな、外に出るならせめてちゃんとした服着ろよ・・・・・・そのパジャマさ、前も思ったけど、アレなんだよな」
立夏が着ていたパジャマ。それは先日昌が看病しに行った時と同じ、薄地のピンクに赤い水玉模様のパジャマだった。
「はあ?」
「いやだからそのだなおまえ暑かったのかもしれんけどもはだけ過ぎだと俺は思・・・・・・げっ、しまっ・・・・・・」
立夏の現在の体勢は赤ん坊のハイハイした状態。いやらし〜く言えば雌豹というか、猫というか。這って歩く時の姿勢である。つまり、
重力が存在する以上立夏のパジャマはそれに逆らえず、必然的に胸の辺りが下に落ちる。しゃがみこんでいた昌の目線は丁度それを捉えてしまった、と。服と身体の間に空いた空間に知らず知らずに目が行った、と。
「昌・・・・・・・・・・・・?」
「ご、ごめ、ごめん立夏!!いやなにもそんな、俺はたまたま座ってただけで、おまえが座ってたから横に座ったんだし、ひいてはそんなの着てきたおまえが悪い座ってたおまえが悪い地球の重力が悪い俺は――――――悪くない、よな・・・・・・?」
「昌・・・・・・」
立夏が言葉のあとに入れた間、それは「なんだ、そっか」という言葉を省略したものだったのだが。昌にはその空白が「見てたんだね。ようし逝っとく?」と聞こえた。
「ゴメン立夏!!!いやその、すいません!!!調子乗ってました!今までの人生全部調子に乗りすぎでした!!!だからその許し」
謝りつつ立夏のリーチから後ずさりをしていた昌は、全部言い終えることなく屋根から落ちた。
「昌!!!!」
慌てた立夏が駆け寄ると、昌は松の木にひっかかって事なきを得ていた。鋭い葉が身体に食い込んで痛そうだったが、命に別状はなさそうだ。
「り、立夏。ホント、ゴメン・・・・・・見る気は無かったんです、本当に。ただ、」
「もういいよ」
今度は、優しく。突き放すような口調じゃなく、立夏は微笑んでそう言った。
「どれくらい見てたの?」
「いやその・・・・・・一秒いくかいかないか」
「でも欲求に勝てなかった、と」
「そうじゃなくて、たまたま視界に入ってすぐ目を逸らしたんだってば」
「そのたまたま、は本能の為せる業だね」
くすくすと笑う立夏。つられて笑う昌。ひとしきり笑うと、二人は屋根から下りた。屋根は二階の昌の部屋にある小さなベランダ、そこにある物干し台から上がる事ができる。昌は先に降りると、立夏が降りてくるのを待った。
「昌ー」
「なんだ?」
呼びかけられて上を向きそうになって―――――昌は騙されず、下を向いたままだった。
「ちっ。昌、ガードが固くなったね」
「・・・・・・おまえのせいだ」
↑微妙な表現だから許していただけると幸いです
さあ、期末試験そっちのけだ!行事もなく久々に評議会始動!!夏休みを書きたくてしょうがない!!!
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