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  酔狂学園伝 作者:留龍隆
(〜行事は不正を正しながら行うべきである〜)
 「じゃ、今日はこれで学校終わり〜俺帰る」
 「昌吉〜」
 帰る支度をしていた昌のところに立夏がやってくる。
 「?なんだ?」
 「今日、遊ぼう!」
 昌はやれやれと溜め息をついた。こいつは小学校の時からそうだった。あっけらかんとしてこういうことを平気で、しかも大声で言う奴だ。昌はそう思って諦め、クラス中から妙な目線を受けながら帰ることとなった。
 「昌吉さん。僕も行きますよ」
 俊一郎も後ろから追いつき、すたすたと歩く。
 「はあ・・・わかったよ」
 
 「おじゃましまーす!」
 「どうも」
 「ただいま」
 三人がそれぞれ思い思いの台詞を言いながら昌の家に上がりこむ。慣れっこになってしまっている昌の母・泉は、タバコをふかしながらあいよ、と言った。
 「おまえさ、男の家に上がるのに少しは抵抗とかないのか」
 昌が呆れ半分で制服を脱ぎながら尋ねると、
 「え?だって友達だから関係ないよ?」
 と切り返される。さっぱりしたこの性格こそが、昌が立夏を友と選んだ最大の要因だろう。ここまで打算も駆け引きもない人間は、他に見たことがない。
 「昌吉さん、僕のどが渇いたんで、お茶もらえませんかねえ」
 「知るか。下行って水飲んでこい」
 むしろこいつはその逆。俊一郎は、低い背の中にとんでもない力が眠っている。それは毒吐き、駆け引き。対極な位置に二人はいるが、どちらも昌の友達だった。
 「ホレ、お茶とラーメン。昼飯持ってきてやったぞ」
 昌の部屋に戸はない。よって母・泉は突然やってくる。
 「わー!また手打ち麺?すごーい!」
 「どうも。ナイスタイミング」
 二人は泉謹製のラーメン(手打ち)をつるつるとすすった。ラーメン屋で生まれ育った泉は定期的に麺を打たないと腕がなまる、という。だから土曜の昼はいつもラーメンだ。昌は「今日はとんこつか」と苦笑しながらラーメンをすすった。先週はしょうゆ、そのまえはミソ。一定のサイクルでスープが変わる。不味くはないが、それでも飽きる。
 「学校、どうだった?」
 泉が恐らく三人全員に向けた質問をする。昌は「まあまあ」と答え、立夏は「楽しかった!」と答え、俊一郎はラーメンを食べるのに忙しくて聞いていなかった。
 「じゃ、いいんだ。みんな楽しそうでいいな。あたしも学校に戻りたいよ」
 そんなおばさん臭いことをぼやきながら泉は姿を消した。残された三人はこれから先、学校生活をどうするか、について議論を開始した。
 「部活入る人ー」
 挙手した人、ゼロ。
 「部活めんどくさいと思う人ー」
 三人全員手を挙げた。
 「僕ら、やっぱり根暗なんですかねえ」
 俊一郎が寂しそうに言うと、三人全員が落ち込んだ。根暗とは言わないが、インドア派であることは間違いない。
 「そんなことは・・・ない!俺らはもっと有意義に時間を過ごそうじゃないか!」
 「有意義って、昌吉、たとえば?」
 「えーっと・・・・・あ、そうだ」

 「じゃあ、係とか委員会は決まったな。後は評議員だけだ。生徒会は二年生からしかなれないし、管理委員は教師からの指名制なんでな」
 入学式の翌日、昌たちは学校でよくある係決めの時間を過ごしていた。
 「・・・で、普通ならやれないことだから、評議員をやろう、と。そういうことですかー」
 俊一郎は下を向いてぶつぶつと文句を言っている。
 「俊一郎。嫌そうだな」
 「だってねえ。いろいろ大変でしょう」
 やる気のない俊一郎。すると立夏が手を叩き、俊一郎に向かってこう言った。
 「俊ちゃん!脇に虫が・・・・」
 『あああああ!!嘘でしょ!!!!!!』
 「はい、渡辺君」
 「はーい!」
 「勅使河原さん」
 「うい」
 「千種君、と。じゃ、あと二人〜」
 
 「畜生・・・僕を騙したな・・・」
 虫嫌いの俊一郎が評議会場へと向かう道すがら、立夏と昌に恨み言を言った。
 「俺らは運命共同体。一人だけ抜けるのはルール違反だ。というか、よくあれで騙されるな。ま、いーだろ。おまえなら上手くやってけるさ」
 「そうそう!俊ちゃんは評議員似合ってるって!!」
 立夏が根拠のないことを言って俊一郎を困惑させる。しかし最後には溜め息をつき、結局加わることになる。昔から続いてきた、立夏お得意の丸め込みに翻弄された俊一郎は、とほほ顔で首を振った。そして、五人いる評議員の内、見知った二人以外に目を向ける。
 「じゃ、え〜と・・・向井さんと大和田さん、でしたか?よろしく」
 色々考えた挙句、俊一郎は残りの評議員二人に挨拶をした。向井緑という名の少女は少し太めな体型でメガネをかけており、髪を三つ編にして不機嫌な顔をしていた。いや、眉が寄っているだけで不機嫌と判断するのは失礼か。そう思いながら俊一郎は、もう一人の少女に目を移す。もう一人の少女の名は、大和田千代。向井とは対照的に美人で、整った目鼻立ちで背筋を伸ばし、(俊一郎より五センチは高い)頭の後ろで髪を一括りにしていた。見惚れている俊一郎は、「対照的」という言葉が一番失礼だと気づいてはいない。
 「よろしく。大和田、千代です。足を引っ張らないよう気をつけるので」
 おまけに謙虚だねえ、と俊一郎は昌に同意を求めた。
 「早く行くわよ」
 向井は素っ気無い態度で先頭を歩く。俊一郎は、「やっぱ見た目どおりかー」と言って、また昌に同意を求めた。立夏はそんな二人を眺めながら、千代に追いつき話しかけた。
 「どうも〜!勅使河原、立夏。お互いの名前を漢字で書けるくらい仲良くなろ〜!!」
 昌は未だ「勅使河原」を上手く書けない。俊一郎は小六でマスターした。昌は「俺は?」と言いたそうな顔をして、その昌の肩を俊一郎がポンポンと叩いた。
 千代はというと、フレンドリーな立夏に千代は多少驚いた様子だったが(ここで俊一郎が「お嬢様的な感じか」と言った)、別にそれを嫌がるでもなく、笑顔で「こちらこそ」と返した。向井はそんな二人の様子を見てふん、と鼻を鳴らした。明らかに、馴れ馴れしい態度の立夏を見下している。しかし立夏はそんな視線に気づくこともなく、楽しげに千代と会話を交わす。他人の目は気にしない性格なのだ。
 「評議会って、具体的に何をするんだろ?」
 立夏が問うと、千代は後ろで縛った髪を指に巻きつけながら答えた。
 「一番の仕事はこの学校特有の大量にある行事、それにおいて不正が無い様に監視したりすることです。もっとも、監視の後の事後処理は管理委員の仕事なので」
 「で」と最後につけるのが千代の口癖らしい。そして立夏はふんふんとうなずき、千代の説明に聞き入っている。
 「管理委員ってさ、なにを管理してるんだ?」
 昌が会話に割り込むと、千代はうーん、と考えて説明を始めた。
 「評議員-つまりわたしたちは表立った動きをする、軽度の行事妨害者、もしくは行事に際して不正を働く人間を摘発、指導を行うことが出来ます。しかし、管理委員はさらにディープな部分で活動をすることが出来ます。一生徒の枠を超えた行動も許されてしまうので。例えば、千種さんが行事で一緒に作業をするメンバー、これをくじなどの公正な方法以外で勝手に決めたりする。これは評議員の取り締まり範囲内です」
 「つまり、俺がそういうことをすれば・・・・停学とか?」
 千代はうなずき、話を続けた。
 「そういう状況に追いやることも出来ます。故に、評議員は嫌われることが多いんで。でも、管理委員はもっとひどい。そのときの行動にもよりますが、・・・・その生徒を『凡倉高校』に転校させたり、もう高校がどこも受け付けてくれないように手回しをしたり。そういったことが出来るんで」
 恐ろしい制度だ。そう感じながらふと昌が横を見ると、俊一郎が生徒手帳を開いて熱心に読んでいる。どうやら、細かい校則などのルールが記載されている部分を読んでいるらしい。
 「ねえ大和田ちゃん。その『凡倉高校』って、あれ?」
 立夏が窓の外を指差すと、その方角三百メートルほどのところに、廃墟としか思えない高校が建っていた。
 「そうです。あれが、『学問の墓場』との呼び声も高い凡倉高校。私立梅沢学園の最下級の分校で。ちなみに偏差値は0・3」
 猿でも入れるな、と昌が肩をすくめる。と、そこで俊一郎が目を上げて、凡倉、と呟いた。 「凡・・・倉・・・?そんな高校、入学案内にも乗ってなかったねえ・・」
 俊一郎が頭の中で今まで見た入学案内書を思い描き、ページをぱらぱらとめくった。しかし、「凡倉」などと云う高校はない。記憶力はいいので、一度見たなら覚えている筈だが。
 「・・・・それはそうでしょう。凡倉高校は、梅沢学園のおちこぼれを押し込むため、そのためのみを目的とした学校なのです。教師もいません。転校、と銘打っているだけで、事実上の退学なので。・・・・それと、わたしたち評議員は生徒の模範を示すべき人間。わたしたちの生活の素行に問題ありと見られれば、即、凡倉行きです」
 ・・・・・・・・はい?昌たち三人は我が耳を疑った。この三人は、本当に、ただの一度も、生徒手帳を読んでいないらしい。
 「う、そー・・・」
 「本当です。じゃ、そろそろ着いたようですよ。評議会場」
 「あたしの足引っ張るようなカッコ悪い真似すんじゃないわよ」
 向井がここに来て初めて口を開いた。なにが待つのかさっぱりわからない評議会場へ、三人は第一歩を踏み出した。
 
 

 
  
どうも。稚拙な文面ですがよろしくお願いします。適当で行き当たりばったりなストーリーですが、見捨てないでくださいまし。


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