挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。

明るいね――彼と向かい合って、それから

作者:菜宮 雪
 プツッ、と音がして、あたしの部屋の蛍光灯が突然切れた。
「あっ」
 ソファに並んで座っていた彼と、天井を見上げる。丸い蛍光灯。そう言えば、この前から、円の一部が黒ずんでいたのを忘れていた。そろそろ切れる頃かとわかっていても、まだ使えると思い、ついそのままにして。
 暗くなった室内は、壁際で音を出しているテレビの明かりだけになった。
「蛍光灯の替え、ある?」
「たぶん」
 こういう時は、彼の背が高くて助かった。取り出してきた替えを渡すと、彼は手早く交換してくれた。
「スイッチ、入れてみて」
「うん」
 部屋に再び明るさが戻る。なんだか前よりも明るい。
「うわ~、明るいね」
 白い光が室内を満たす。想像以上の明るさに、まぶしさすら感じる。切れた蛍光灯は、かなり黒くなっていたから、やっぱりさっさと取り替えるべきだったのかもしれない。
 再びソファに彼と並んで座り、なんとなくクイズ番組を見る。ふと気がつくと、彼はテレビを見ずに、あたしの顔ばかりじっと見ていた。
「なに?」
 二人掛けソファ。すぐ横に彼。手を延ばせば届く。延ばさなくても、ちょっと体を傾ければ、肩が触れ合えるほど近くて。
 心臓が速くなり始める。まだキスすらしたことがない、付き合い始めのあたしたち。部屋に彼が上がってきたのも、今回でまだ二回目。
 そんなに見ないで。もしかして、こういう状況って、かなりやばいんじゃ……
 二人きりのあたしの部屋。
 今から、彼があたしを押し倒して、ああなって、こうなったら……どうしよう。
 彼は、黙ったままあたしの顎に手をかけた。
 ああっ、これって。これって!
 あたしの血液が急速に高温になっていく。
 きゃ~もうだめえ。あたし、このまま流されそう。
 彼が顔を近づけてくる。
 目を閉じなきゃ。こういう時って、目を閉じて待てばいいんだよね? キ……キスするんだよね? 今からあたしたち、初キス……

「……」

 目を閉じて彼の唇を待つ。

「……」

 あれ? 
 想像していた感触がいつまでも来ないので、薄く目を開く。すぐそこに彼の顔がある。彼は、軽く微笑んでいた。
 やだっ、恥ずかしい。
 彼はあたしの顔に見とれている。顔が熱くなり、耳たぶまで赤く染まってしまっていることは隠せない。彼は気が付いているに決まっている。気絶しそうなほど、あたしが緊張していること。
 彼は、あたしの顎に手をかけたまま、ははっ、と笑った。
「おまえさ」
「ん?」
「明るい光の下でよく見るとさ……」
 あたしは、うっとりと彼の顔を見つめ返した。かわいいじゃん……って言ってくれるのかな。
「俺たちって、今まで昼間から会ったことがなかったからさ、気がつかなかったけど」
 彼は、あふれてくる笑いをかみ殺すような声で言った。
「おまえの眉毛って、よく見るとつながってるんだな」


  即刻、彼を部屋から叩き出し、あたしの短い恋は終わった。
                                          (了)
お読みいただき、ありがとうございました。
お題「あかるいね」は、三里アキラさまのブログ「ノンタイトル」の中の、創作家さんに10個のお題よりお借りしました。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ