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第68話:マリファ 初迷宮②

「ギャンッ!」


 ハイコボルトがニーナのダマスカスダガーで首を切り裂かれる。ハイコボルトの後方で魔法の詠唱をしていたハイコボルトウィザードに、レナが準備していた黒魔法第2位階『サンダーボルト』が炸裂する。

 ハイコボルトウィザードは叫び声を上げることもできずに絶命する。


「ハァハァ……」


 マリファは激しく息づきながら、自分と二人との実力差に焦っていた。

 現在ゴルゴの迷宮地下11F、ここまでにオーガ、サラマンダー、ゴーレムなどと戦闘を繰り広げたが、マリファは全く役に立たなかった。

 特にゴーレムのような硬い魔物には矢が刺さらない為、精霊魔法で攻撃しようとするが、レナの魔法の方が早く完成し発動する。また二人の魔物を殲滅する速度に付いていくのがやっとだった。 


「マリちゃん、一回休憩する?」


「ハァハァ、私の事は……気にせず進んで下さい」


「……無理は良くない」


 レナがマリファにヒールを掛ける。ヒールは傷を癒やすだけではなく体力を回復させる効果もある。

 ユウは付与魔法の更新はするものの、後はポーションを創るだけで手助けはしていなかった。実質、ニーナとレナの二人だけで進んでいるが、通常D~Eランクのパーティーであれば5~7人で探索をすることを考えれば、既に二人の実力はDランクの冒険者の中でも上位に居るといえた。


「10Fにボスが居なかったのは残念だったが、ここまでで手に入れたアイテムはそこまで悪くない。このまま最下層目指して進むぞ。

 マリファは無理して前に出る必要はない。初めての迷宮だ。弓矢で牽制、援護に務めろ」


 ユウ達はここまでで宝箱を3個発見しており、内1個に掛かっていた罠もニーナが解除して手に入れていた。

 宝箱の内訳はハイポーションが3個、銀の短剣1本、クリスタル2個。


「か、かしこまりました」


 ここで一旦休憩を入れることにしたユウ達はアイテムポーチから出した水筒で喉を潤し、レナはマナポーションでMPを回復させる。

 ポーションを創っているユウの後ろにニーナは回り込み抱きつくと、飛行帽子を脱がし髪の毛を弄って遊ぶ。


「ニーナ、邪魔するな」


「えへへ~ユウの髪の毛はサラサラだね~」


 レナは胡座をかいているユウの太股を枕にして、仰向けに寝る。


「……迷宮での休憩は重要」


「俺が休憩できないんだが……」


「ニーナさん、レナ……ご主人様の邪魔をしないで下さい」


 回復に務めていたマリファだったが、さすがにユウに手を出されて黙っているわけにはいかなかった。


「マリちゃん、これは私の回復には必要なことなんだよ」


「……すぴーすぴー」


 レナは普通に寝ていた……。


「い、いい加減に!」


 耳をビンビンに尖らせたマリファが立ち上がろうとした瞬間に、ニーナがダガーを握りしめて立ち上がる。


「5……9……15、う~ん、いっぱい来てる」


 ハッとしたマリファが耳を澄ますと、確かに大勢の走る音が聞こえてくる。

 しばらくすると通路の前方から1組のパーティーが、こちらに何やら叫びながら走ってくる。


「――っ! ……げろっ! ――失敗した……お前等――危なっ」


 先頭を走る男が口から唾を飛ばしながら叫ぶ。

 パーティーの後方からは10を超える人影が見えるが、その姿は人の何倍もあり肌の色は緑色、頭には角が生えていることからオーガだとわかる。

 

「ユウ~どうする?」


「休憩してろ」


 ユウはそう言うとレナを太股からどかして立ち上がると、迫ってくるパーティーに向かって歩いて行く。


「馬鹿っ! 早く逃げろ! 罠の解除に失敗して魔物が湧いたって言ってんだろうがっ!」


「ブリット! もう間に合わねぇっ俺達だけでも逃げるんだ!」


 オーガの集団は獲物が増えたと喜んでいるのか、雄叫びを上げながら速度を上げる。


「ばっきゃろ! こんな若い奴等、見捨てて逃げれるか」


 先頭を走っていた男はユウの横で立ち止まると、剣を握り締めて迎え撃つ態勢に入る。


「無理無理っ絶対犬死にだって! 逃げようぜっ」


 他のパーティーメンバーはブリットを置いてニーナ達の横を走り去っていく。

 マリファはユウの元へ行こうとするが、ニーナが手を掴んで止める。


「ユウなら大丈夫だよ~」


「ニーナさん、手を離して下さい! あんなに沢山のオーガがっ」






「へへっ坊主、悪いな俺達のミスに巻き込んじまって……せめて1匹でも多く道連れにしてやる」  

 

「気にするな。大した問題じゃない」


 ユウが魔法を発動させオーガに向かって放つ。


「無詠唱か!? しかし黒魔法第1位階のストーンブレットじゃ足止めにも……」


 ユウが使ったストーンブレットは小さな石礫を放つ初歩の魔法だったが、先頭を走るオーガの胸に当たった瞬間――爆ぜる。

 オーガの胸には、小さな石礫が当たったとは思えない大きな穴が開いていた。

 ユウの放ったストーンブレットは確かに小さな石礫だが、先端が花の蕾のようになっており、対象に当たった瞬間に体内で花が咲くかの如く広がり、広範囲に破壊のエネルギーが拡散し人体に多大なダメージを与えた。


「どどっどどど、どうなってんだっ。たった1発のストーンブレットで……っ!?」


 オーガの胸に風穴が空き倒れる。他のオーガ達も一瞬立ち止まるが次の瞬間には激高し迫り来る。

 ブリットが怒り狂ったオーガに気圧され、ユウの方へ顔を向けると更に驚愕する。ユウの周りには先程のストーンブレットが数十発展開されていた。次の瞬間、ストーンブレットはオーガ達に向かって放たれる。


「ゴガガガガアッツアアアアアアア゛ア゛」


 オーガ達の断末魔の叫び声が迷宮に響き渡る。

 強靭な肉体を持ち、ゴルゴの迷宮でも上位の存在だったオーガ達が、僅か数分でミンチとなった。


「おっさん、俺が倒したんだからあのオーガの魔玉は貰っても問題ないよな?」


「あ、あが……ど、どうぞ」


 ブリットは鼻水を垂らしながら、そう答えるので精一杯だった。

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