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第34話:ランクアップ

目が覚めると、ニーナが横で寝ていたので顔にチョップする。

「ふぎゃっ」と叫びニーナが涙目で起き上がる。レナはまだ寝ている、よっぽど疲れているんだろう。


 顔を洗って服を着替えているとレナも目を覚ましたので、昨日迷宮で手に入れた『生命の指輪』を渡す。


「おい、これ装備しとけ」


「……おいではないレナだ。……これは?」


「固定でHPが50増える効果がある」


「……HPの少ない後衛職には喉から手が出るほど欲しい装備の1つ」

 

 レナの頭にはアホ毛があることに気付いた。普段は隠れているが、感情によって飛び出してくるようだ。今は左右にブンブン動いているから嬉しいみたいだ。


「ニーナはこれを持っとけ」


 そう言って、昨日手に入れた『鋼鉄のダガー』と『アイテムポーチ』を渡す。


「アイテムポーチと鋼鉄のダガーなら持ってるよ?」


「昨日迷宮に潜ってわかったんだが、サラマンダーが居る。火属性の武器じゃダメージを与えにくいから、相手によって使い分けてくれ。アイテムポーチは素材用と回復POT用にでも使い分けるといい。どっちも迷宮で死んでた冒険者達の遺品だ」


 遺品と言った瞬間、ニーナがうっと怯んでいたが、遺品だろうがなんだろうが効果に変わりはない。


 今日の朝食は、パンにビーフシチュー? とサラダが付いている。中に入っている肉は唇で噛み切れるほど柔らかく、食事が進む進む。


 食事が終わったあとはギルドに向かう。迷宮で手に入れた素材の売却と、迷宮内で受けれるクエストがないかの確認だ。ギルドに着くと、冒険者達でごった返している。

 カウンターの受付嬢達も忙しそうに対応に追われているので、その間にクエストの確認をするが、迷宮関連のクエストは見付からなかった。


 カウンターが空いてきたのでコレットさんの所へ並ぶ。しばらくすると順番が回ってきたので挨拶をする。


「コレットさん、おはようございます」


「コレットさん、おはよ~」


「おはようございます!」


 朝からコレットさんは元気一杯だ。レナは朝は弱いのか反応が鈍い。


「素材の買取をお願いしたいんですが、後にした方が宜しいですか?」


「いえ、落ち着いてきたので大丈夫ですよ」


 素材をアイテムポーチから出していく。ポイズングリズリーの毛皮、魔猿・大魔猿の爪、牙、しっぽ・サラマンダーの皮。


「昨日は迷宮に行っていたんですね」


 出した素材から、どこに行っていたかをコレットさんは気付いたみたいだ。


「これは……大魔猿の素材! 3人で倒されたんですか?」


「ううん、それはユウ一人でだよ~」


「ひ、1人ですか!? わ……わかりました、それでは皆さんのギルドカードをお預かりしますね」


 今回で俺とレナがEランクにアップした。ニーナもこのままいけばDランクになる日も近い。


「それではこちらが買取値段になります」


 素材の売却した値段は合計で金貨4枚、銀貨7枚、半銀貨8枚だった。ボスの素材でも高いというわけではないらしい。


「コレットさん、迷宮に関連するクエストは普段から少ないんですか?」


 迷宮に関連するクエストが見付からなかったので、コレットさんに直接聞いてみる。

 横でニーナがレナの髪を弄って遊んでいる。レナはまだ眠いようで抵抗もせずに弄られっぱなしだ。


「迷宮関連のクエストですか。迷宮には結界が張っているので、魔物が出てくることはほとんどないんですよ。ですから討伐クエストはまずありませんね。

 次に素材がメインになってくるんですが、ゴルゴの迷宮であれば地下21Fから出現するベナントスの胃袋が、錬金術ギルドが買い取ってくれますね。でも何故かクエストでは依頼してこないんですよね。Cランク以上の迷宮であれば、素材買取クエストがありますよ」


 現状、Dランク迷宮ではクエストはないみたいだ。それにしてもベナントスの胃袋? どこかで見た気がするな……あっ! アイテムポーチの材料にベナントスの胃袋があったはずだ。これは良い情報を教えてくれた。


「コレットさん、ありがとう!」


「いえっ! お役に立ててよかったです」


「わっユウの笑顔なんて珍しい」


 コレットさんは顔が真っ赤だし、ニーナは失礼なことを言ってくる。俺だって嬉しい時くらい笑う。




「次は、鍛冶屋のおっちゃんの所に行くから」


「ほいっ」


「……わかった」


 鍛冶屋のおっちゃんの所に向かうと相変わらず人通りはなく、店の方も開いてるのか閉まっているのかよくわからない状態だ。


「おっちゃん、居る?」


「おっ坊主どうした?」


 アイテムポーチからオーガの皮を出す、3体分なのでかなりの量だ。


「こりゃ……オーガの皮じゃないか、しかも亜種まで混ざってやがる」


「これでシャツとズボン造れる?」


「オーガの皮でシャツとズボン!? 贅沢な使い方だな。

 それより坊主のブーツボロボロじゃないか。装備もちょっと見してみろ」


 レザーブーツは魔拳を使用した時にボロボロになっていた。

 おっちゃんに装備を渡すと、たった2日でどんだけ使い込んでんだと驚かれた。

 おっちゃんの勧めで、俺はシャツ・ズボン・ブーツをニーナはシャツ・ホットパンツをレナはシャツ・靴を造って貰う事にした。


「おっちゃん、全部でいくらかな?」


「そうだな……余った皮はどうすんだ?」


「いらないから上げるよ」


「ほ、本当か! それなら金貨1枚でいいぞ」


 おっちゃんは大喜びで、早速作業に取り掛かると店の奥に行ってしまった。

 店を後にし迷宮に向かうと、入口には相変わらず付与士と商人が商売に励んでいる。


「坊主、付与魔法はいらねぇか?」


「新しいの覚えた?」


 付与士のおっさんは、くっくっくと笑うと腕を組み、仰け反る。


「そう言うと思ってたぜ! なんと新しい付与魔法を2個も覚えたんだぜ!」


(便利なおっさんだな……この調子でどんどん覚えてくれないかな)


「新しく覚えたのは攻撃力と防御力を上げる付与魔法だ」


「俺にその2個を掛けてくれ」


 付与士のおっさんに銀貨2枚を渡し、付与魔法を掛けて貰う。おっさんの説明によると攻撃力・防御力がそれぞれ5%ほど上昇するそうだ。


 入口から少し進んだところで、ニーナとレナに付与魔法を掛けていく。


「……また覚えた?」


「覚えたけど、人が居るところで言うなよ」


 誰も居ない宿屋の部屋ならともかく、ここは迷宮の中で冒険者達も居るので、どこで誰が聞いているかわからないので釘を刺しておく。

 レナは自分のステータスがどれだけ上がっているかを、ギルドカードで確認している。


「……うん、付与魔法も生命の指輪の効果も反映されている」


 レナのギルドカードを見ると、薄らだが魔力で覆われていた。

 俺の視線に気付いたレナが、ドヤ顔で説明してくる。


「……私の魔力で覆えば、ギルドに情報が漏れることはない」


「本当かよ」


「……天才の私が言うんだから間違いない」


 確かに魔力で覆ったギルドカードからは、魔力が漏れていない。それを聞いたニーナが早速真似をしている。いつの間にかニーナも魔力をコントロールしていやがる。


 ニーナとレナも迷宮に慣れてきたのか、サクサク魔物を倒していく。

 驚いたのがレナが攻撃が当たりそうになった時に、魔力の壁のような物で防いでいた。


「……フフ、前衛職に『闘技』があるように、後衛職には『結界』がある」


 またしてもドヤ顔でイラっとする。

 前衛職が『闘技』で身体能力を高めるのに対して、後衛職は『結界』で防御力を高める。高ランクの冒険者の中には、両方を使いこなす者もいるそうだ。レナが結界を覚えたので、1発で死ぬことはないだろう。


「レナ、すごいね~私も新しい技覚えたんだよ」


 ニーナはそう言うと、戦っていたサイクロプスの攻撃を躱す、次の瞬間にサイクロプスの首が切断されていた。


「エヘヘ~どう? すごいでしょ!」


「……魔力?」


 レナにはニーナの動きが見えなかったようだが、さすが魔力の扱いに長けているだけありわかったようだ。


「レナ見えたの? ラリットさんに教えて貰ったんだけどね。本当は鋼蜘蛛の糸とかを使うそうなんだけど、ほら私はあんまりMP使わないし、魔力で代用できないか試したら出来たんだよ~」


 ニーナは魔力を糸のように細く伸ばし、サイクロプスの首に巻きつけ切断したのだが、動きが早いし、あの細い糸状にした魔力でサイクロプスの首を切断するなど恐ろしい技だった。


 この日は危なげなく地下6Fまで潜って帰った。俺は付与魔法の更新と錬金術でひたすらポーションを製作しかしていない。

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