表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/405

第16話:村を出るぞ!

「ステラさん、今言った事は全て本当なんですね」


「本当よ……私はユウに恨まれこそすれ、感謝される人間じゃないわ……

 ニーナちゃんユウを守って……ううん都市カマーまででもいいから連れて行ってあげて……」


 ステラの言葉に力はない。すでにいつ限界がきてもおかしくない状態だ。


「ステラさん安心して下さい! ユウは私が守ります。お願いされなくても私はユウの友達ですから」


「ありがとう……ニーナちゃん…………ユウ……あなたとの生活は……私の人生で……1番……せ……な……時……った……わ……」


 そのままステラは息を引き取った。その表情はとても幸せそうであったが、ニーナは涙を堪えきれなかった。


「う……う……ズデラざ……ん……が…………死ん……じゃ…………っだ……」




 ステラが息を引き取って8時間後に、ユウは戻ってきた。部屋で泣きじゃくる

ニーナと、微動だにしないステラを見ると膝から崩れ落ちた。


「間に合わなかったのか……まだ…………間に合うはずだ」


 ステラの死を信じられないとユウは、戻ってくるまでに創ったポーションを飲ませようとするが口から垂れてくる。


「ばあちゃん……飲んでよ……頼むから……」


 ステラから返事はない。


「くっ……」


 ヒールを掛ける。通常のヒールではありえない量の魔力を込めてヒールを掛け続けるが効果はない。ヒールは肉体の損傷を回復させる魔法であり、死者(・・)を蘇生させる魔法ではない。

 MPがなくなり、ユウはそのまま座り込む。


「ユウ……ズデラざん…………が……うぅ…………」


 こんな状況でも涙が出ない自分に、ユウはやっぱり心が壊れているんだと自覚する。しばらくしてニーナも落ち着き、今後どうするかを話し合った。


「グスっ……ステラさんのお墓を作ろう」


 まだ目が真っ赤なニーナが、座り込んだまま反応しないユウに話しかける。


「ステラさんは、ユウと一緒に居て幸せだったって最後まで言ってたよ」


「そっか……ばあちゃんそう言ってくれたのか…………苦しんでなかったか?」


「ううん、最後まで笑顔でユウのことをお願いねって言ってた」


「わかった。いつまでもばあちゃんをこのままにするわけにはいかないからな、ただ明日まで寝かせてあげたいんだ……」


「うん」


「これからどうすればいいんだろうな」


「都市カマーに行こうよ! あそこなら亜人も多いし、ユウだって冒険者になれるよ。それにステラさんからも頼まれてるし」


「そうだな……ばあちゃんの居ないこの村に居る意味もないしな……ニーナも行くのか?」


「当たり前じゃない。私はユウの友達だよ?」



 その日は寝ずに旅の準備をした。朝になり墓を造り、ステラとの別れを済ませる。


「ばあちゃん行ってくるよ。たまには墓参りで戻ってくるから、土産話でも楽しみにしててよ」


「ステラさん、ユウのことは任せて下さい。どこに出しても心配ない冒険者にしてみせます!」


「……俺に鍛えてもらってるやつが言うセリフか?」


「私はユウより年上!」


 また意味のわからないことを言いながら、ドヤ顔をしてくるニーナを見ながら

、内心お礼を言う。ニーナが居なければもっと取り乱していたし、こんなに早く

立ち直ることもできなかったと思うユウであった。


 歩き始めると、村の方からギルド長と数人の村人がこちらに向かってくる。


「お前達、その格好と荷物はなんだ。まさか村を出るつもりじゃないだろうな?」


 村から叩きだしておいて、こいつらは何を言ってるんだと思ったが、何かいつもと様子が違う。それにニーナが今まで見たこともない位、表情が険しい。


「ばあちゃんが死んだから、もうここに用はないからな、あんたらも俺を追い出したがっていたし、よかったな」


「勝手に村を出て行くなんて誰が許した! 今、この村では冒険者が不足しているんだ。

 昨日、調査に出したサーマットも戻って来ない。お前が出て行くのは勝手だが、ニーナ、お前は残るんだ」


 ニーナは返事もせずにギルド長達を睨んでいる。


「それにばあちゃんとは誰だ?」


 最近、ばあちゃんがずっと体調が悪いことを知っていて、こいつらはわざと(・・・)こんな嫌味を言っていると思うと、今まで嫌がらせに慣れていた俺も怒りを抑えられなくなってきた。


「ステラばあちゃんだよ! いい加減にしろよ!!」


「ステラ?」


 ギルド長達の様子が変だまるで……


「ユウ! 行こう」


 やっと喋ったと思ったら、ニーナが俺の手を引っ張って連れて行く。表情は相変わらず険しい。ここからすぐに離れたいようだ。


「ま……待て!」


 俺達は無視してレッセル村から出て行った。


「あいつら勝手なことをしおって。恩知らずが! それにしても……お前達ステラとは誰だ?」


「さぁ、初めて(・・・)聞く名前です」




「ニーナ、もういいだろう手を放せよ」


「ユウ、あいつらの言うことなんて気にしちゃダメだからね」


「さっきはムキになったけど、もういちいちあんなの気にしてられるか」


「そう……ならいいんだけど」


「ニーナ、冒険者になるからには最高ランク目指すからな」


「私とユウの力をもってすれば簡単ね♪」


「どっからその自信はくる!?」


 地球からレッセル村に来て約1年、俺は冒険者になる為に村を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i901892
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ