表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/405

第15話:山間の洞窟③

「ついてるぜ!」


 1人、山間の洞窟までの道程で、サーマット・ポは興奮を隠せず声に出す。

 この男はハーゲの取り巻き、最後の一人である。ハーゲ達が行方を眩ませ、かといってソロで山間の洞窟に行けるほどの実力はなかったが、山の異変に村人からの調査依頼がギルドに入った。

 レッセル村の冒険者で依頼を受けられるのは、現在2名だけである。

 1人がニーナ、そして最後の1人がサーマットであった。

 本来であれば断っていたが、今までハーゲ達とクエスト受注をこなしていたので、ソロの現在は収入が激減しており、生活の為にギルドからの依頼を受注したのである。


「おっここにも魔玉とボブゴブリンの死体が放置されてるぜ!」


 興奮しながらボブゴブリンの耳を剥ぎ取る。この死体ですでに17体目だった。


「あそこにもあるじゃねぇかっ……やっと俺にもツキ回ってきたぜ! ……はは……おかしい……だろ……?」


 さすがにこの光景が異常なことに、サーマットも気付き始めた。

 山間の洞窟に近付けば近付くほど、死体が増えている。他の冒険者なら魔玉や素材を放置したりはしないであろう。また魔物同士の争いなら、死体が手付かずなのもおかしい。

 サーマットの中で危険信号が鳴り響いていたが、魔玉・素材の回収と好奇心が打ち消していた。そのままサーマットは山間の洞窟へと進んで行く。





 山間の洞窟では、更にありえない光景が広がっていた。1F~地下2Fまでの、全ての魔物が消えていた。実際には死体だけが残っており、虐殺行為は全ての部屋でしらみつぶしに行われており、魔物の虐殺が目的のようだった。


 シュパッ!!


 まるで紙でも切るように軽い音で鳴り響き、オークソルジャーの分厚い首が斬り裂かれた。


「どけ! ……お前等に用はな……ぃ…………白魔法を……よこせ!!」


 強奪の多用による頭痛を意に介さず、ユウが叫ぶ。


 ユウを囲んでいた魔物達は、その異様な雰囲気に怯え後退していく。

 ユウは山間の洞窟に入ってから、魔物を地下で追い込むような形で倒し、戦わずに逃げ出した魔物はどんどん下へ(・・)逃げていった。

 ニーナの訓練の為、最近はユウ自身は狩りをあまりしていなかったが、今日だけで数百の魔物を倒していた。

 常時、『異界の魔眼』を使用し、『強奪』でスキルを奪いながらである。その結果、異界の魔眼・強奪のスキルレベルが上がりその他のスキル・ステータス・レベルも急激に上がり、現在のステータスは――



名前 :ユウ・サトウ

種族 :人間

ジョブ:なし

LV :17

HP :136

MP :216

力  :51

敏捷 :49

体力 :47

知力 :61

魔力 :46

運  :1


パッシブスキル

剣術LV5

腕力上昇LV5

索敵LV5

短剣術LV2


アクティブスキル

剣技LV3

闘技LV3

白魔法LV3

黒魔法LV2

鍛冶屋LV2

錬金術LV2

盗むLV1

隠密LV1

鑑定LV1

短剣技LV2


固有スキル

異界の魔眼LV3

強奪LV2




 地下3F最奥の部屋には、普段なら考えられない数の魔物が居た。オーガ(亜種)が従えるゴブリン・ゴブリンソルジャー・ゴブリンナイト・ボブゴブリン・ゴブリンプリースト・ゴブリンメイジだけではなく、コボルト・コボルトシャーマン・オーク・オークソルジャー・ウォーバット・クレイジーウルフなど。

 普段であれば敵対しており、目が合った瞬間に戦闘になっていたが、今は目の前の脅威に争うよりも共闘に近い形で陣取っていた。


「逃がさない……時間が…………」


 部屋の唯一の入口にはユウが立っていた。その姿は全身魔物の返り血で真っ赤だ。レザーアーマーもボロボロの状態だが、ユウ自身に傷は1つもなかった。


 ユウの周りにはファイアーボールが、十数個浮いた状態で維持されていたが、ファイアーボールが1つ1つ引っ付き大きくなっていく。全てのファイアーボールが合体し、巨大なファイアーボールが完成する。 ユウは入口の地面にそのファイアーボールを叩きつけると、火の柱となって入口が炎で塞がれる。

 発動方法は違うが、これは黒魔法第2位階の魔法ファイアーウォールであった。


「オオオガガガガガガアアアアアァァ!!!」


 オーガ(亜種)が吠えると同時に、周りの魔物が一斉にユウ目掛けて襲いかかってきた。

 ユウは再度ファイアボールを発動し、周りに纏わせて魔物の群れ目掛けて突っ込んで行く。




 コボルトシャーマンやゴブリンプリーストは、動揺していた。傷ついた仲間を回復させようにも、一撃(・・)で仲間が倒されていく。

 敵は恐るべき剣の腕を持っていた。

 距離が空いた瞬間に、ゴブリンメイジ達がファイアーボールを放つが、ユウが纏っているファイアーボールが相殺するばかりか、その後に複数のファイアーボールが叩き込まれて、返り討ちにあうのだからたまったものじゃない。

 迂闊に魔法を放つことのできなくなった魔物達に、ユウが『強奪』を発動しようと迫るが、オーガ(亜種)が間に立ち塞がる。


「邪魔だっ!!!」


 ユウが振るった剣撃は、オーガ(亜種)の腕に3分の1ほどめり込んで止まる。


 こいつ元から硬い上に、闘技を使いやがる。


 ロングソードを引き抜こうとしたその瞬間を、オーガ(亜種)は見逃さず、こんぼうを横薙ぎに振るう。


 グシャッと鈍い音がなる。咄嗟にユウは両腕で防いだが、元からの力が違い過ぎたので、10数メートル吹っ飛んでいく。


 倒れているユウに、魔物達が止めを刺そうと迫ってくるが、ユウのファイアーボールで倒されていく。

 

 その光景を部屋の入口から観ていたサーマットは、息をするのも忘れるほど見入っていた。


(あのガキは、レッセル村の忌み子じゃねぇか……信じられねぇ強さだ……すげぇ! すげぇ!!)


 純粋にユウの強さに惹かれて、興奮しっぱなしのサーマット。サーマットがここまで無事来れたのは、地下3Fまでの全ての魔物が居なかったので、サーマットでも最奥の部屋まで来ることができた。

 いざ部屋に入ろうとしたところ、火の壁が入口を塞いでおり、隙間からなんとか中を覗くと、数十の魔物と人間の子供が戦っていたのである。




 ユウはグシャグシャに折れた両腕にヒールを掛けながら、ファイアーボールの数を増やしていく。

 『異界の魔眼』のレベルが上がり、相手の弱点も見えるようになっていた。オーガ亜種は氷属性の攻撃に弱いか……残念ながら弱点をつこうにも、手段を持っていなかった。


 ファイアーボールを掻い潜ってくる、ゴブリンナイト・ゴブリンソルジャーから、『強奪』で剣術スキルを奪う。途端に剣の速度が遅くなり余裕を持って躱し、ファイアーボールを放つ。


 再度、オーガ(亜種)に向かって走って行き、こんぼうを避け左手に食い込んでいるロングソードを取り返す。


「オオオオオオオッ!!」


 オーガがスキル『咆哮』を放つ。周りの魔物が萎縮し動きが止まった。

 ユウは耐えて、ロングソードを振り下ろす。オーガ(亜種)が先程と同じように腕で受け、今度は頭を潰そうとニヤリと哂っていたが、今回は先程と違う点があった。

 ユウはオーガ(亜種)の『闘技』『身体能力上昇』を強奪しており、ロングソードはオーガ(亜種)の腕で止まることはなく。振り切られてオーガ(亜種)の腕が宙に舞っていた。


 自分の腕が斬り裂かれたことに、信じられないといった表情のオーガ(亜種)の顔に剣を振り下ろし、呆気なくオーガ(亜種)は死んだ。


 オーガ(亜種)が死んだ瞬間に、この戦いの決着は付いていた。あとの魔物達に待っていたのは、一方的な蹂躙であった。魔物達は1匹残らず、スキルを奪われた後に殺された。





 この出来事で、レッセル村ではしばらくの間、魔物達による被害が激減した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i901892
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ