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真・恋姫†無双-白龍翔天-  作者:
第一章
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第2話 新たな出会い

 『天の御遣い』北郷一刀。

 彼は約1800年前の中国にやって来て、2人の人物、公孫賛と趙雲に出会うのだが…なんと2人とも女性であったのだ。

 内心驚愕しつつも自らの使命を感じ、公孫賛陣営に参加することを決めた一刀。

 これから彼の人生はどうなっていくのだろうか……

 『天の御遣い』北郷一刀を拾ってから早1週間。

 読み書きを教えている侍女曰く、飲み込みがとても早いとのこと。

 そろそろ簡単な政務くらいは任せていい頃合いだろう。

 さて、どこにいるのやら……?

 おっ、あれは……


 「星、一刀を見掛けなかったか?」

 「おや白蓮殿。主なら先程から訓練用の剣で素振りをしていましたぞ」

 「素振り? なんでまた」

 「なんでも自分の身くらいは自分で守れるようになりたいと」


 う〜ん……確かにいつも本陣が安全だとは限らないし、陣頭で指揮する方が兵士たちにも良いだろうけど。

 というかそもそもあいつが戦場に行く可能性は……いや、あるな。何せこの人手不足だ。


 「某に余計な心配をさせずに、思う存分力を発揮してほしいとの意味合いも含まれているようですな」


 星は貴重な戦力だ、前線で戦ってもらわなくてはならない。

 そして『天の御遣い』としての責任感と言ったところだろうか。


 「わかった、ありがとう」




 「ふぅ……」


 素振りを終えて一息つく。時々星に相手して貰うのだが、全く歯が立たない。というか軽くあしらわれ続ける。

 名だたる武将に勝てるとは思わないものの、それでも一撃くらい与えたいというのは剣に心得のある者としての性だろうか。

 女性が強い世界だから、恐らく男性一般兵に勝てればかなり良いところ。実戦経験のないオレにはそれすらも厳しい。あ、目からも汗が……クスン。


 「一刀」

 「おぁっ……白蓮か。どうしたの?」

 「ん? 変なやつだな……今に始まったことじゃないけど」


 それ、地味に傷つくよ?


 「わ、悪かった、だから地面に『の』を書き始めるなっ!?」


 まぁいいや。


 「で、何?」

 「変わり身はやっ! いや、今後は少しずつ政務をやってもらおうと思ってな」

 「うーん、いいけど……教えてくれよ?」

 「ああ大丈夫だ。文官を1人つけるから、覚えながらで構わない」


 文官は皆おカタい……と思うのは偏見だろうか。


 「いつからやればいいの?」

 「明日からだ。頼んだぞ? あ、あと何かしら要望とかがあったらどんどん伝えてくれ。天の知識を生かした政策とかな」

 「わかった。白蓮もあんまり根を詰めすぎるなよ?」

 「そうできるといいんだがな……じゃ、また」


 白蓮と星に出会った時は名前に驚いて声も出なかったが……また有名な人なら今度は奇声を発するかもしれない。

 心構えだけはしておこう。




 翌日。

 奇声は出なかった。けど……また女性なのか、やっぱり。


 「そんなに見つめられて……私がどうかしましたか? ま、まさか二人きりだからといってそんな……いやん」


 両頬に手をあて、ふるふると首を横に動かす。


 「やるならそれらしく照れてください、お願いします」


 基本的に無表情で、さっきのセリフも抑揚のない平坦な声だった。

教えてくれるのは田豫[でんよ]さん。確か劉備に仕えた人じゃなかったかな。肉親の病とか何とかで去ったと記憶している。


 「そうじゃなくてですね、え〜と……政務って肩が凝るなぁと思いまして」

 「慣れればそうでもないと思いますが……そのうち慣れますよ」


 そんなものか。ま、これで白蓮の仕事が減るならと思って頑張ろう。

 さてさて、残り少しスパートをかけようか。




 政務が終わり息抜きの散歩……ではなく、見回りの仕事つまり視察。

 警邏はオレ提案の警備隊が行っているので、実際は街の市場で活気を見たり、民の声を聞いたり。そこから見えてくる政策もある。

 最初は護衛のせいで怖がられていたが、今ではすっかり打ち解けている。


 「あーみつかいさまだー!」

 「こら、他人を指差しちゃいけませんっ。こんにちは御遣い様。毎日お疲れ様です」

 「こんにちは。お元気そうで何よりです。何かお困りになっていることがありましたらいつでも言って下さいね。お力添えいたしますわ」

 「はい、見回り頑張って下さいね。失礼します」

 「ありがとうございます。お気をつけて」


 綺麗な人だな……笑顔にドキッとしてしまった。


 5歳くらいの子どもを連れているにしては若すぎる。いや、でも昔の日本って15歳で元服だったし……20歳ちょうどとかあり得るな。

 いかんいかん呆けてる場合じゃない。続き続きっと。




 見回りを終えて城へ戻ったオレに伝えられたのは危急の報。


 「……黄巾賊が?」

 「ああ、西の外れの邑が襲われているらしい。数は約二百。五百もいれば大丈夫だろうから、早馬で討伐に向かってくれるか?」


 くそっ。死人が出ていなければいいが……

 それが希望的観測であることがわかっていても、そう思わずにはいられない。


 「……わかった。星と行けばいいんだな?」

 「ああ。あいつから臨機応変な対応を学ぶいい機会だろう」

 「了解。よし、すぐに向かうよ」




 「酷いな……」


 立ち上る黒煙と激しく燃え盛る炎。

 血が染み込んだ地面、無造作に転がる死体、鼻をつく異臭。

 1つ1つが賊の襲撃を如実に物語っている。


 「これが現実でしょうな。王朝の力は衰退し、州牧や県令たちが私腹を肥やすためだけに課した苛税に苦しむ民が、黄巾となって他の邑を襲う……そして襲われた邑の人々は困窮し、他の邑を襲う……この悪循環を解決するのが我々上に立つものの使命です」


 白蓮殿は良い人物ですな、と星は洩らす。


 「斥候を出して賊の居所を特定する。残りは生存者を探して介抱を頼む」

 「……ふむ、悪くない対応だ」


 星に褒められることは素直に嬉しい。けど今はそれどころじゃなかった。

 許せない。賊も、自分の無力さも……。

 確かに星の言う通り黄巾賊は困窮した農民が主体だろう、しかしだからといって人々を殺して―――殺さずとも略奪を働くのを許されるわけではない。


 「隊長!」

 「どうした、賊の住処が見つかったのか!」

 「いえ、それはまだです! が……生存者を発見し、隊長にお会いしたいと! こちらです!」


 生存者がいたようだ。


 「星、ここは頼んだぞ」

 「いえ、某も行きましょう。貴方の身に何かがあってからでは遅いですから」




 いたのは3人の女の子。3人とも満身創痍であるが、命に関わる傷はなさそうだ。

 1人が歩み出てくる。


 「貴方がこの隊の長でしょうか」

 「ああ、オレが隊長の……」


 名を言おうとしたところを、彼女の後ろの2人によって遮られた。


 「ちょっ、真桜ちゃんやめるのー!」

 「放さんかい沙和! これだけは言わんと気がすまんのやっ! ……ホンマにあんたが隊長なんやな?」


 鋭い眼差しで睨まれる。咄嗟に目を逸らしたくなる。だけど、逃げるわけにはいかない。


 「……ああ、そうだ」

 「遅いんや……来るのが遅いんやアンタらっ。ここの人たちはええ人やった……余所者のウチらでもあたたかく迎え入れてくれた……笑顔で世話をしてくれた……そんな人たちが目の前で死んでいく姿を見た、ウチらの気持ちがわかるかぁっ!!」


 真情の吐露。それに対してオレは反論する術を持たない。例え持っていたとしても、言い返すことは無かっただろう。彼女の大きく見開かれた眼の端に光るものを、見てしまったから。


 「お、おい真……いや曼成っ!」

 「キサマっ……!」

 「まぁまぁ」


 激昂する兵士を抑え、前に進み出る。


 「他に、言いたいことは」

 「まだまだあるけど……いつまた賊が来るかもわからない状況や、今はこれでええわ」

 「そうか。……救援が遅れたこと、その結果民の命を散らしてしまったこと。許してくれとは言わない……本当に済まなかった」


 本心からの言葉だ。

 手が回らない、なんて言い訳にすらならない。

 自分たちの領地を管理することが管理者の使命であり、そしてそれを出来るための力をも持っていなければならない。

 力を持っていなく、それが出来ていないのはこちらに責任がある。


 ただ。


 簡単に頭を下げることはしない。

 プライドなんてちっぽけなものはいらない、けど上に立つものが簡単に頭を下げることはあってはならないというジレンマがある。

 だからこそ、たとえ睨まれても、憎まれても、恨まれても相手の目を見続ける。視線をそらさない。

 


 「っ……」




 私たちは目の前に立つ男性を絶句して見つめるしかなかった。

 


 民のために兵を向けた、それは当然正しい事であり義務も果たした。本来ならばこれ以上望むべくもない。

 それでも暴言として斬り捨てて構わないような八つ当たりに近い真桜の言葉を受け入れ、認め、謝罪の言葉を口にする。私も一回の武人だからわかる、目の前の男は大して武に長けているとは感じない。

 真桜だって武人の端くれであり、その殺気を浴びた一般人は委縮してしまうだろう。

 それでも彼は彼女から目を逸らすことはなかった。


 (信じられない……)


 この気持ちはきっと、真桜や沙和も同じだったはずだ。

 それと同時に希望を得た。

 ふと、思い出す。幽州に“天の御遣い”が舞い降り、その地の民たちは希望に満ち溢れていると。太陽の光を浴びて白く光り輝く服を纏ったこの人のことなのだろう。

 この方のような……いや、この方こそがこれからの世には必要であると確信めいたものを感じる。

 そして、我々が自らの力を捧げるべき人物である、と。


 「真桜」

 「……ああ、わかっとる。すまんかった、兄さん。このとおりや」

 「いや、そっちが頭を下げる必要はないよ。悪いのはこちらなんだ」

 「そんなことないの。助けに来てもらえること自体がありがたいの……」

 「その通りです。あなたたちは我々を助けに来て下さいました。……これから黄巾賊の討伐に行くのでしたら、是非同行させていただけませんか」




 「……君たちは満身創痍だろう」


 返り血と出血、どっちがどっちかわからない程彼女らの服は朱に染められていた。

 しかし、この悲惨な光景を生み出した黄巾賊に一矢を報いたいと思うのは当然であり、その権利がある。

 だからこそ。


 「命を大切にしてくれ。人数では勝っているけど、無理をしないでくれ。その条件が呑めるならば連れていく」

 「っ、呑めます」

 「ならいいだろう。賊の居所が発見されしだい出陣する。それまでは手当てを受けて休んでいてくれ」

 「はい、ありがとうございます……と、話の途中でお名前を聞き損ねていましたね」

 「幽州の北郷一刀。太守の公孫白珪に仕えてるよ。よろしくね」

 「やはり貴方があの……私は楽文謙と申します」「李曼成や」「于文則なの」


 魏を支えた武将たちか。女性でもいい加減驚かなくなってきた。

 彼女らの力はこれからきっと民の助けになるだろう。

 出来ることなら幽州に引き留めたいね。




 数的有利に加え、星や楽進、李典、于禁と言った力の前に黄巾賊はなすすべもなく、の殲滅は終わった。

 そして民を埋め、賊を埋め、今はその墓の前にいる。


 「心優しき民たち。あなたたちのあたたかさは、彼女らが受け継いでくれるよ」


 村人たちの墓穴を作る際、彼女らが流した涙が何よりの証拠だ。


 「この犠牲は絶対に無駄にしない。あなたたちの死は、この大陸に平和をもたらすための礎となろう」


 剣先で手をなぞり、血が墓へと垂れ落ちる。


 「血は万物の“生”の連なり。今生で死別しようとも、貴方たちは我々の心の中で永遠に生き続ける。……安らかに眠ってくれ」




 簡単な葬儀を終え、帰り支度も終わったころ。


 「北郷様! 我々を連れていって下さいませんか」

 「……星、彼女らの力量はどうだったかな」

 「申し分無し、とはまだ言えませんが磨けばまだまだ光るものがありますな」


 ニヤリとする星の表情はまさにドSで、これから待つのは茨の道か……大変だなぁと他人事のように思った。

 そしてその評価について、オレも―――他人を評価するような力量はオレにはまだ無いが―――同意見だった。


 「そっか。だそうだよ。うちの筆頭武将のお墨付きだ」

 「と言うことは……」

 「これからよろしくね」

 「はいっ! 今後は凪と及び下さい、隊長!」

 「ウチの真名は真桜や。よろしゅうな、たいちょ」

 「沙和は沙和なの。よろしくお願いしますなの!」

 「うん……凪、真桜、沙和。改めてよろしく」


 こうしてつらい経験と共に新たな仲間を加え、一路帰途へついた。

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