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真・恋姫†無双-白龍翔天-  作者:
第一章
14/20

第11話 幽州防衛戦

 旧将たちとの親睦を深めつつ、動乱に気を配る毎日。

 北方に五胡、南方に曹操軍と気を抜けない日々が続く……。

 さて。

 俺は今、何をしているだろうか。

 わかったら金一封をあげよう。嘘ですごめんなさい。


 正解は……


 「たいちょ、おいてくで?」


 荷物持ち、である。

 虎牢関突破の立役者、真桜へのご褒美として買い物に付き合っていた。


 「ちょっ、ま、真桜」

 「これくらいでへばっとんの? なんやだらしないなぁ」

 「いや、この量はどうかと……」


 荷物を両腕に抱え、背中で背負い、頭に乗せ……そんな状況である。もっと褒めてくれてもいいんじゃないかな……。

 しかもその全てが。


 「プラモかよ……」

 「ぷらも、て何なん?」

 「模型のこと。俺のいた時代では木じゃなくプラスチックっていうやつとかだったけど」


 プラモはあんまり詳しくない。手先が不器用だったからね。


 「ほぉ……なんかええなぁそれ。いつかたいちょの故郷に行ってみたいわ」


 故郷、か。

 家族、及川、不動先輩に剣道部のみんな…元気にしてるかな。


 「……たいちょは帰りたいん? 自分の故郷……家に」

 「いや……元気でやっているから心配しないでくれとは伝えたい。けど、今の俺にとって家はここだよ。愛する人も愛してくれる人たちもいる、それにまだまだやりたいことは沢山あるんだ」

 「そか。……たいちょ、次行くで次っ!」

 「え゛、まだ行くのっ!?」

 「あったりまえやーん♪」


 ニヒヒ、と笑い再び歩き出す真桜についていく。気を使わせちゃったかな。


 「まったく……」


 はぁ、おいていかれないようにしないとな。




 一昨日はたっぷりと絞られ、昨日はプラモ以外のものを背負わされ、またたっぷりと絞られた。

 し、死ぬ……

 しかしそんな弱音を吐いている場合ではなかった。


 「『河北で動きあり』か」


 密偵によると袁紹軍では幽州への侵攻を狙っているらしい。


 「ふむ……おおかたは戦功を奪われた恨みか」

 「麗羽のやつ……」


 星の言葉は遠からずと言ったところ。白蓮は呆れ果てている


 「それにしても性急ですねー。理由は星ちゃんの言った通りでしょうねぇ」

 「はい、反董卓連合でほとんどの戦功をうちに奪われたというのが理由だと思いましゅ。……ます」


 最近雛里は噛むと言い直すようになった。これは成長といえるのだろうか。


 「あとはなにかしらの大義を見つけたのでしょうねー。雛里ちゃんはわかりますよね?」

 「はい」

 「大義とは何なんだ、雛里」


 最近あったことと言えば……おそらくあれか。

 でも白蓮、君は分かってくれないと。


 「主……これが白蓮殿なのですから、そんな可哀想なものを見る目を向けないでやってくれませぬか」


 星は相変わらず容赦ないなぁ。


 「な、なんだよみんなわかるのか!?」

 「はい」「はいー」「当然ですな」「うん」


 雛里・風・星・俺が皆一様に頷く。


 「ええっ!?」

 「……反董卓連合はなんのために組まれたんだっけ?」

 「ええと……洛陽で悪政を行っていたから? 結局は真実ではなかったわけだけど」

 「それで、董卓はどこへ?」

 「桃香たちのところだろ?」


 いや、そこで気付こうよ。


 「……で、最近うちにきたのは」

 「董白だなぁ。………………あぁ!」

 「「「はぁ……」」」

 「すみませんでした……」


 まだ公の場に姿を現していないのにどこから董白の情報が伝わったのかは知らないが、つまり董卓の一族がいることを理由に攻め入ると。

 洛陽の住民は月の無実を知っているが、他国の領民はそうとも限らない。

 反逆には一族根絶やしが妥当という判断、そして大義名分だろう。


 「うちは籠城戦は余裕でいけるし野戦でも騎馬無双。凪・真桜・沙和がいるから歩兵もよし。問題は弓なんだよなぁ……」


 弓の名手と言えば呂布・太史慈・沙摩柯・黄忠などがいいところか。黄蓋は呉の宿将だから既に所属しているだろうし、夏候淵は曹操のもとにいた。仲間にするなら後に加わった人が狙い目だろうか。

 弓の扱いに長けた将が欲しい。


 「無い物ねだりしても仕方ないですぞ」


 まぁ、星の言う通りだ、現状の戦力で考えよう。


 「守るか攻めるか。どうする?」

 「だいぶ幽州も落ち着きましたし、攻めるのがよろしいかとー」

 「賛成です。騎兵たちも暇をもてあましていますから」

 「だってさ。最終決定権は大将だよ、白蓮」

 「……よし、出よう。私自身麗羽にはいろいろとあるからな」


 若干黒いオーラを放つ白蓮によって、野戦を行うことに決定したのだった。




 総大将 公孫賛


 総参謀 程旻


 前軍  董白・北郷


 中軍  公孫賛


 左翼  楽進


 右翼  于禁


 後軍  李典


 遊軍  趙雲




 「そろそろだな」

 「そうね」


 新参として実力を示すために董白は前軍に配置されていた。


 「それにしてもいいわねここの騎兵。涼州のにも劣らないし」


 なんたって長所だからな。


 「鐙があるからうちは騎兵の数・質ともに上げる時間がたっぷりあるんだよ」

 「鐙もあんたが作ったんでしょ?

 「俺自身乗馬は苦手というか……そもそも俺のいた時代じゃ乗るときは鐙がないと。だから乗ってから違和感に気付いたんだよ。あれ? 何かが足りないって」

 「ふーん。一回その頭をかちわって中を見てみたいわね」

 「……冗談に聞こえない」


 笑顔で得物に手をかけるなっ!

 なんて雑談を交わしていると。


 「あら……来たわよ」


 袁紹軍との戦いが始まった。




 「な、なんなんですのこの有り様は!?」

 「北郷のアニキたちつえーなー」

 「感心してる場合じゃないでしょー!」


 開戦から半日も経たず、戦況は幽州軍の優位が確定。

 というか袁紹軍は指揮系統が分断され、騎兵で追い回され、回り込まれ……10万と号した兵は散り散りになり、囲まれて殲滅される。

 袁紹軍にも騎兵はいたのだが兵の練度は足下にも及ばず、乗り手を失った馬たちは幽州軍にまんまと確保されていく。


 「姫、退かないと不味いですよぉ〜!」

 「……し、仕方ありませんわね、今日のところはこれで勘弁してあげますわ。オーッホッ『失礼します!』……ってなんですのいいところで!」

 「あ、いえその……と、とりあえず報告いたします! 曹操軍が留守を狙い冀州へ攻めいったとのこと! 至急援軍を送られたし、とのことです!」

 「な、なんですって!? あの金髪クルクル小娘……斗詩さん、殿[しんがり]は頼みましたわ!」


 お前も金髪クルクルだろ、と伝令の兵士が思ったかは定かではない。


 「え? ちょっと姫!?」

 「斗詩、頑張ってな!」

 「文ちゃんまで……」


 苦労人たる顔良はもう慣れたのか、諦めて準備へと行くしかなかった。




 「大勝だな」


 こちらの損害は軽微。あちらの被害は甚大。

 文句無しの勝利である。


 「……」

 「お~い董白?」


 呼びかけにも応えず、彼女は戦場を睨みつけていた。


 「……いた、袁紹! あいつのせいで姉さまが……ッ!!」

 「お、おい!? くそっ」


 撤退していく袁紹軍を見下ろしていたが、突然彼女が馬を駆けさせて行く。

 日が浅いとはいえ彼女は大事な仲間。

 見捨てるわけにはいかない。




 「くっ……!」


 ―――囲まれた。


 彼女は窮地に陥っていた。

 弓兵に囲まれ、馬を全速力で駆けさせるもその身体には数本矢が刺さり、数多の矢傷を負っている。


 「まずったわね……」


 馬を射られ、何とか転倒に巻き込まれて足を挟まれるという事態は避けることができていた。今は森の中に身を隠しているが、すぐには動けないというのが現状である。


 「勝手に先走った挙げ句にこのザマか……ま、もともと厄介者みたいなもんだったし」


 ―――死んでも文句は言えないわね。


 独りごちる。


 と。


 「董白ッ! 何処だ!」

 「えっ……」


 ―――何やってんのあいつ……


 しかしこれは好機。


 「っ……ここ!」

 「そこか! 今行く!」


 力を振り絞り立ち上がる。


 「捕まれ!」


 敗戦ながら一矢報いようと敵も怪我を負った将、董白を追撃してきているため、立ち止まって乗馬するなど出来ようもない。

 一刀は限界まで身体を倒し、董白を包むように掴む。


 「「ぐっ……」」


 一刀は右腕のみで人を支え、董白は右腕との衝突による衝撃を必然的に受ける。

 だが、一刀は決して離さない。


 「早く、上がって、こいっ! 右腕だけじゃっ……」

 「失礼、ね、そん……なに重く……ない、わよ」

 「喋らないでじっとしてろ。今、馬にくくりつけるから……」


 手綱は放すことになる。乗馬の経験が浅い一刀なら落馬していたかも知れないが、鐙のため何とか身体のバランスを保てていた。


 だが。


 「よし……ぐぁっ!?」


 周囲への警戒を疎かにした報いか、弓兵に射掛けられていた。

 さらに手綱を握っていなかったこともあり、落馬は免れなかった。


 「ちょっ……!」


 董白は引き返すために無理矢理身体を起こそうとし、


 「ぐっ……止まるな、振り向くな! 俺に構わず先に行け!」


 一刀は起き上がりながら強く叫ぶ。

 この状況を引き起こした元凶たる彼女にそんなことが出来るはずもない。必死に止まろうとする。

しかし。


 「このっ、止まりなさいよっ!」


 一刀の馬は主の意志を受け取ったかのように彼女の言うことを聞こうとはしなかった。


 (それでいい)


 すでにかなりの距離が開いていたが、董白にはそう、聞こえた気がした。


 「……っ!!」


 袁紹軍の兵士は董白の追撃より一刀を優先し、彼女は徐々に戦場から離脱していく。

袁紹軍撤退から数日後、彼女は幽州への帰還を果たす。

一刀を代償として……




 一方、一刀はと言うと。

 追っ手を避け林の中へ。木が弓を遮蔽するため、弓兵の力は大幅に削られる。


 「おいおい……」


 行き着いた先は崖の上。対岸は遠く、その間を流れる川までは10メートルほどの高さであろうか。

 後ろからは追っ手。やるしか、なかった。


 「……南無三っ!」


 川へと跳躍する一刀を追わず、手柄は逃したが十分に任務を果たしたとして、追っ手は本隊の後を追って去っていった。


 「ゲホッ……はぁっ、はぁっ、はぁ」


 ―――随分と流されたか……けど、まだやることは沢山ある、んだ……

 流れの緩いところで何とか岸に上半身を乗せる。


 「帰らなくちゃ……みんなのもとにっ……」


 体力の消耗、矢傷に加えて体温を奪われた一刀に、既に余力は無い。


 「あ、れ……」


 全身を川から這い出して、その意識を失った。




 「む……あれは」


 ―――あの服には見覚えがあるな。

 近寄り、よく見てみると、矢が刺さり水で濡れた服で体温が奪われているようだ。


 「ふむ、幽州まで連れて行ってやって恩を売るのもいいが……その場合ここにいる理由を問われてしまうか」


 (まぁいい、一度連れ帰ってしまえば後で何とでも言い訳できるだろう。それにわが軍にも天の知識が入れば、力を増すことが可能かもしれん。……しかし偵察の帰り道で思いがけないものを拾ったな)


 幽州の治政を見に、かつ戦力の調査、戦局の確認を行うために幽州へと足を運んでいた彼女はそんなことを考えながら応急処置を始める。


 「……よし」


 濡れた服を脱がせ―――優男のわりには引き締まった身体を見て感心しつつ―――、怪我した部分に愛用の褌を包帯代わりに巻いてやった彼女。

 その名を、鈴の甘寧こと甘興覇と言った―――

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