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花鳥諷詠  作者: 橘 伊津姫
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比翼の歌

【鴛鴦の契り】


雪の舞い散る冬の池に

仲睦まじく翼を休める

鴛鴦の夫婦


優しく寄り添い

厳しい寒さから互いを守る


その姿に そっと貴方の手を握る


決してこの手を離さないで

決してこの手を離さないわ


共に命の果てるまで

貴方に寄り添い歩みましょう


あの仲睦まじい

鴛鴦のように




【双鶴】


真白き雪原に

雌雄の鶴が舞い踊る


広き翼を打ち振り

力強く大地を蹴る


身内に燃える想いのままに


こうこうと啼き交わす

その姿は 優美にして端麗


首をめぐらし 蒼穹に飛び立つは

いとめでたき瑞祥の兆しかな




【鯨の唄】


星の瞬く夜


寄せては返す波打ち際に

不思議な音色が聞こえてくる


風に乗り 波に乗り

私の心を誘う音色


おいで… おいで… ここへおいで…


温かく全身を包む


おいで… おいで… 帰っておいで…


優しく私に呼びかける声


それはきっと

極寒の北の海


オーロラの下で歌う

鯨達の声


私の魂の奥底にある

太古の海を呼び醒ます


鯨の歌声




【不如帰】


哀しい声で啼く


己の過ちから

幼い弟の命を奪ってしまった兄が

その魂を求めて啼いている


弟の名を呼ばわりながら

喉が裂け 血を吐き

日に百度も千度も名を叫ぶ


故にこの鳥の胸は

自らの血で黒く斑に染まると言う


「弟よ 弟よ どこにいるのだ弟よ

許しておくれ 許しておくれ

お前を疑ってしまった この愚かな兄を」


繰り返し 繰り返し

不如帰は哀しい声で啼く


そして 応えは決して返っては来ない




【鴉】


鴉は己の翼の黒きを嘆くだろうか

翡翠かわせみは己の羽根の美しきを驕るだろうか

雀は己の小さきを怒るだろうか

雄鶏は己の飛べぬを悔やむだろうか


己の持てる以上のものを欲しても

それは決して相応しくはない


雀に鳩の体を与えても

翡翠に鶯の色を与えても

雄鶏に鷹の翼を与えても

鴉に白鳥の白きを与えても


それは決して相応しくはない




【金糸雀】


金色に輝く体を震わせ

瑠璃を転がすかのような声


人々はただ目を閉じ

静かに耳を澄ます


喨喨りょうりょうと響く金玉の声は

まさに天上の音曲


迦陵頻伽かりょうびんがの囀りの如し



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