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花鳥諷詠  作者: 橘 伊津姫
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龍の詩

【地底湖】


深い洞の奥底に眠る紺青の龍が

天空の日輪に恋焦がれた


輝かしい白日の空を

風を引き連れ 悠然と行く

そんな願いを夢に見た


だがその身は

光に触れれば死す運命

目にする事さえも叶わぬ想いに

紺青の龍は人知れず涙を流す


水晶の如くに煌めく雫は

地底に揺らめく湖となった


日輪に焦がれて流した涙は

洞の随所で光を放つ


やがて龍は頭をもたげ

瞳に強い光を宿す

日輪に恋した紺青の龍は

空を目指して飛び立った


命の果つるその時まで

夢にまで見た空を翔ける


風を巻き 雲を呼び

想いのままに空を翔ける


そしてその身は陽光に焼かれ

霧散霧消して大気に溶けた


残されたのは地底に揺らめく湖のみ

紺青の龍が日輪を想い流した涙

仄かな光を放って煌めく


悲恋の地底湖




天空あま翔ける】


低く垂れ込めた黒雲の切れ間

黄金色の粒子を纏い

光の龍が駆ける


轟々と渦巻く風雨を従がえ

天空の覇者が自在に駆け巡る


咆哮を上げ

その身をくねらせ

王者に相応しい壮麗な雄姿

見る者に畏怖を抱かせる


理の枠に従がわぬ者に

雷撃の鉄槌を下す


強大な身をしならせ

天空を縦横無尽に駆け巡る

雷光と言う名の金色の龍




【竜灯】


夜の海に漂う灯は

深海に棲む

竜の吐息


静かに音もなく降る雪が

竜の住処を覆っていく


ゆらり ゆらりと降る雪を見て

竜は口から泡を出す


かぷり かぷりと揺らめく泡は

波に守られ昇って行く

月の輝く夜気に触れ

ぱちんと弾けて 仄かに光る


波間に漂う灯は

不思議な光の 竜の灯




【蛟竜】


今はまだ

時運 巡り合わず

熱き願いを胸に秘め

ただ じっと待つのみ


やがて必ず 時が満ち

水中の蛟が 雷雨を得て飛び立ち

天を目指して 竜となる

それを心に刻み


ただ じっと待つのみ

己を竜と変じるための

約束の雷雨が

降り来たるのを




【龍王】


滄溟に潜む偉大なる龍王

紺碧の鱗をひらめかせ

大海にある

すべての生命あるものを支配する

その牙と爪は

海の命を守るため

その瞳は

生まれ来る命を見つめるため

深い叡智と慈悲を併せ持つ

滄溟の龍王




【龍神】


風を呼び 風に乗り

逆巻く颶風と共に竜の舞う


万籟ばんらいを従え 太虚たいきょを具現し

滄溟そうめいを目指して竜の翔る


陽光に輝くは 波頭の煌めき

金波銀波か 竜鱗のひらめきか

その身を飾るは 白雲のなびきか

天空を切り裂く 雷電の矢か


悠々と身をくねらせ

踊るように天を舞う

五行の理を身に宿すもの

天にあり 地にあり 海にあるもの

人知の及ばぬ 強大なる叡智

畏怖を込めて 神 と呼ばわれるもの


※万籟……天地万物が立てる物音

※太虚……人知をはるかに超えた宇宙の源

※滄溟……大海原


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