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  十六夜 作者:文月 優
第一章 「がらくたの街」 j


 その一部始終を、突っ立って呆然と眺めていたカーソンが、はっとしてウォルシュにかけより
「大丈夫ですかっ?」
「はい。それにしても、銃は本物なんですね」
 苦々しくウォルシュが傷を押さえる。
 カーソンは少し表情を変えただけで、すぐ毅然とした態度で
「いえ、銃も半映像です。でも、スアが使われている攻撃にはなっていますから」
「攻撃は本物になると、そういうことですか」
「・・・・・・よく最後のスイッチがあれだと分かりましたね」
「いえ、ただの勘です。それに、本来壊すとは、やっぱりこういうことだと思いますし」
 その言葉にカーソンはふっと笑った。
 




 メーベルがスアの力を使わずに二人のところに戻ってきて、壊した機械によりかかって座り込んでいるウォルシュに
「歩けます?」
「ま、何とか」
「じゃあ、すぐにでも手当て―」
 メーベルがそこまでいうと、いきなり地震が起きた。









 建物は激しく揺れ、メーベルはウォルシュの隣にしゃがみこみ様子を伺っている。
 一方、カーソンはバランスよく立ったまま、目を閉じていた。
「これで、よかったんですか?」
「僕らが死んでも、この世界も、ましてや向こうの世界も変わらない。誰が困り、悲しんでくれるわけでもない。何の意味も、価値もない。人生に終止符を打って欲しかったんです」
 ウォルシュが聞いて、カーソンが答える。事情が飲み込めていないメーベルはただ黙って聞いていた。
 揺れは一向に収まる気配はなく、むしろひどくなっていた。
「・・・・・・時間がありません。お二人の荷物は、本物の頑丈な箱にしまいました。明朝に本物のアラームがなるようセットしましたから、それを手がかりに探してください。・・・・・・今、屋上に空高くそびえる円柱の光がさしているはずです。それに入れば助かります。急いでっ!」
「分かりました」
 ウォルシュはそういってメーベルの右肩を借りて立ち上がる。
「カーソンさんも」
 メーベルが左手を差し伸べて
「・・・・・・いいんです」
 カーソンが差し出された左手に、自分の右手をそえた。そえられた右手は、メーベルに何の感触も残さず左手を通過した。
 メーベルは驚愕の表情でカーソンに顔を向ける。
「お二人とも、ありがとうございました。もう十分です。さぁ、はやく。じき、この町は崩れます。スアが元の配列に戻ろうと、暴走するかもしれませんし」
 さとすようにカーソンがいって
「・・・・・・お元気で」
 ウォルシュが別れを告げる。
 メーベルは沈痛な面持ちを浮かべ、ブーツにスアを取り入れ始めた。目にはうっすらと涙が浮かぶ。
 ウォルシュはベルに何かいおうとして口を開けて
「ベルさん、行って。・・・・・・僕らは、一足先にカオスへ戻ります。いえ、地球に行くだけです」
 カーソンがほほえんでいった。
 メーベルの目から雫が一滴落ちた。
「行って、らっしゃい」
 涙声でメーベルがいって、二人はその場から消える。













 カーソンはパラパラとコンクリートのくずが落ちてくる天井を見上げ
「行ってきます」






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