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第二話 プールとツンデレとスク水と
 
 
 
「不幸……、なのか?」
 俺の隣に居る上条さんが、いきなり原作レイプした。
「か、上条さん……これで不幸なんて言ったら、上条さん青髪ピアスの友達に殺されるんじゃない?」
「へ? ……。えーと、あ、ああ。そうだよな。こんな事言ったらあいつがブチ切れそうだよな」
 んん? 上条さん、まだ青髪ピアスと再会してないのか?
 魔術の原作はよく覚えてないから、詳しくは分からないけど。
 というか、科学の方もアニメ見てる最中に憑依しちゃったからな。原作知識が中途半端だ。
 魔術の方でなら、これから起こる事も多少は知ってるんだけど……酷い考え方かもしれないけど、木山ねぇの生徒の事以外はあまり原作介入しない方が良いよな。
 俺に出来る事なんて限られてるし、原作通りに進まないと助からない人も出てくるだろうし、考えだしたらキリがない。
 というか、ループモノだと原作から外れる場合は大体バッドエンドだ。できる範囲で助けつつ静観するのがベストだろう。
 俺はそんな風に自分の現状を再確認しつつ、上条さんにも現状の再確認を求める。
「そりゃあ、上条さんがいつも不幸なのは知ってるけどさ。こんな素敵イベントに不幸な部分なんてあるハズないじゃん」
「そうだよな、これで不幸なハズがねえよな?」
 どうやら上条さんも現状を正しく認識してくれたようだ。
 まぁそれで、なんで「禁書」の主人公が、俺の隣で原作とはちょっと違う感じの口癖を漏らしたのかというと、話せば長くなる……。
 昨日、クロコから快気祝いに打って付けの場所だと言われた俺は、高さが五階建てくらいのウォータースライダーなんかもある、ちょっとした遊園地並の室内プールに遊びに来た。
 室内プール、と言っても、ガラス張りで建てられている為、夏の日差しが水面を照らし、遥か上の方にある天井や、これまた遠くにある側面の壁なんかは強化ガラスみたいだ。
 まぁ、もし説明を端折るとしたらシー○イアみたいな所。
 んで快気祝いの当初のメンバーは、俺と黒子タソ、あとクロコと初春タソと佐天タソという、男女比率が完全にギャルゲー状態のものだった。
 もし仮にそんなメンバーで水場に遊びに行こうモノなら、周りから嫉妬混じりの殺人ビーム、もとい、うらやまけしからん視線を浴びて俺のチキンハートが持たないし(なぜかクロコがこのだった広いプールを貸し切りにしてしまったのでそんな心配は無用だったが)そんな男女比では俺が本当にギャルゲーの主人公みたいに思える。禁書のSSの主人公のつもりなのに、それではなんかダメダメな感じだ。今さらな気もするが。
 まぁんで、ちょっとした副次効果も狙い、俺は上条さんもプールに誘ってみる事にした。
 何が副次効果かと言うと。
 御坂美琴みさかみこと、という、常盤台中学の女の子がいるのだが。
 俺は、その子と上条さんが仲好くなるイベントの見せ場を、横からかっさらってしまった事がある。しかし美琴タソが上条さんと仲良くならないと、原作通りに話が進まず、色々と不都合が起こるかもしれない。
 という事で、俺はちょうど原作通りに記憶喪失になっていた上条さんを言いくるめ、快気祝いのメンバーに加えた。
 美琴タソの方は、黒子タソがルームメイトで仲良しだから誘っても不自然ではないし。
 で、結局、男2女5、というメンバーでプールに来た。
 そして、そんな夢空間(しかもプール)に招待された上条さんが、「不幸……、なのか?」とかいう、原作ではあまり聞かない呟きを漏らしたのだった。
 ちなみに、俺と上条さんは高校生だが、女の子はみんな中学生(クロコ除く)なので、基本ロリ属性の俺としてはなんとも嬉しい限りだったりする。
「……けど、みんな遅いね?」
 俺がグダグダ考えている間もなかなか更衣室から出てこない女子。上条さんに話を振ってみる。
「だな。たかが着替えで、なんでこんなに時間がかかるもんかねぇ?」
「そうだよね、それは男からしたら永遠の謎だよね」
 プールサイドのカフェにある、白いプラスチック製のイスに腰掛けている俺と上条さん。
 二人ともとっくに水着のトランクスに着替え、けっこうな間ここで待ち惚けしていた。
 ちなみに、俺は一週間程前に大ケガをしたのだが、一回死にかけて気が付くと、ケガも全て治っていた(正確には、クロコの能力で負傷した部分の時間も巻き戻されていた)ので、オールオッケーなのだった。
 
 
 ―第二話 プールとツンデレとスク水と―
 
 
 俺と上条さんがフリードリンク状態と化した売店から失敬してきたジュースを飲みながらそんな事を言っていると……噂をすれば影、俺の後ろからクロコの声が聞こえてきた。
「お~っ! にいさまっ!」
「ぐふっ」
 いきなり首筋に飛び付かれ、口から変な声が出た。
 クロコは後ろに張り付いたまま、素肌を俺の背中に擦りつけてくる。きっとマイクロビキニでも着ているんだろう、肌の感触がやけに多かった。
 が。
 そんな事だろうと思っていた俺は、平然とした態度でクロコに言う。
「クロコ、首に飛びつくのは止めなさいと言ってるだろう? 俺の口癖が「ぐふっ」に認定されたらどうするんだ?」
「あらお兄様。それならそれでキャラが立つのでよろしいんではなくて?」
 言いながらクロコは、素肌のスキンシップに満足したのか「ぴょん」という擬音が聞こえてきそうな仕草で俺の背中から離れた。
 そして、俺の前に回り込み、体をクネクネさせながら水着を披露してくる。
「おにいたま~ん。この程度では物足りないでしょうが、たっぷりとクロコの水着を堪能して下さいですのんっ」
 とても小学生が着る物とは思えない紫のマイクロビキニ。
 でも残念。俺は同じロリコンでも、小学生はギリギリストライクくらいだ。……いや、ボールね。ボール。だから別に、クロコの水着で鼻血吹いたりはしない。
 いくら胸の部分なんかは面積がトランプ一枚分もなくそのぺったんこな胸を半分も隠していなくて下もかなりのローレグになっている水着を着ていようと、クロコは妹みたいなもんだ。別に変な目で見たりはしないぞ?
 そんな事よりクロコの水着はどこかの市民団体から抗議の声が届きそうだから、そっちが問題だ。
「おいクロコ、上条さんも居るのにそんなの着て恥ずかしくないのか? というか、そんな恰好で市民プールとか絶対行くなよ? 間違いなく特殊な性癖のお兄さん方に連れ去られてしまう」
「いやですわ、お兄様ん。クロコがお兄様のそば以外でこんな水着を着るハズがありませんのん。それに、上条さんはもうすぐ退場するからいいのですわ」
「「え?」」
 クロコの言葉に俺だけではなく、マイクロビキニに驚いていて紙コップからジュースをボタボタ零している上条さんも、疑問の声を出す。
 そして、クロコの言う通り俺の視界の隅から上条さんを狙うビリビリマスターの声が聞こえてきた。
「あ、アンタは……、小学生相手になに真っ赤んなってるのよっ!」
 どっかーん、とギャグ漫画みたいな効果音と共に、上条さんに向かって放たれる電撃。だが、
「うおぉっ!?」
 上条さんは慌てて右手を振りかざし、電撃を打ち消した。
 説明しよう!
 彼の右手には、『幻想殺しイマジンブレイカー』とかいう、それが異能の力なら、魔術だろうが超能力だろうが、なんでも無効にしてしまう不思議パワーが宿っているのだ! そしてその右手でぶん殴り、相手に説教して八割方の敵を改心させるという、スーパー高校生。それがみんなのヒーロー上条当麻だ! 
「おっ、おまっ、いきなり何て事をしやがるんでしょうかこの子は!? 今の喰らってたら、確実に三途の河にご招待されてたぞ!?」
「ならもう一度その片道切符をくれてやるわよっ!」
 ビリビリー! って感じで電撃が飛び交っている。相変わらず、美琴タソのツンデレは一向に改心させられないヒーローだな。そのうち致死量の攻撃ホントに喰らうんじゃね?
 まぁついでに言っておくと、いま上条さんにピカチュウしてるのが常盤台中学の電撃姫。御坂美琴タソだ。彼女は能力者の頂点レベル5の第三位で、めっさ強かったりする
 ……いやしっかし、記憶喪失でも上条さんは上条さんだなぁ。
 んん? でも記憶失ってからの上条さんの方が良く知ってるし、俺からしたらこっちがよく目にしてた姿か?
 と、そんなどうでもいい事を考えている俺をよそに、上条さんと美琴タソが鬼ごっこを始めてしまう。
「こらー! 待ちなさいっつってんでしょうがっ!」
「待てと言われて待つ奴なんていねぇよ! っていうか、やっぱり不幸だー!」
 あー、なんか俺からしたら超なごむ光景が展開されている。
 広いプールなので、全力で鬼ごっこしても狭いという事はないだろうけど……というか、もたもたしてたら美琴タソが見えなくなってしまう。
 美琴タソの姿が消えてしまう前に、俺は一応注意しておく事にした。
「御坂さーんっ! プールで電撃使わないでよーっ!? みんなが感電しちゃうから!」
 俺の言葉に、既に数十メートルも離れてしまった美琴タソの足が一瞬止まる、が「わかってるわよ!」と大声で返事をして、すぐに上条さんとのラブラブ鬼ごっこ(上条さんにとってはリアル鬼ごっこ)を再開してしまった。
「おー、なんか原作以上に仲良くなってくれそうだなー」
 他人事なので超適当な俺。
 まぁ、必要以上に仲良くなっても、原作から話しがズレたりしないよな? フラグ乱発体質な上条さんへの嫉妬の炎は燃え上がるだろうけど……。
 なんて思っていると、俺の耳に、佐天タソ達の声が聞こえてくる。
「もー白井さん! いつまでそんな小学生みたいな事してるんですか?」
「そうですよ? 白井さん。もう観念してそれ取っちゃって下さい」
「ちょ、二人とも、やめて下さいですの。そんなに引っ張らないで下さいましっ」
 カフェの横辺りにあった通路から、残りのメンバーが出てきたようだ。
「お、きたきた……、て、黒子タソ、なんであんな格好してるんだ?」
 こちらに寄ってくる黒子タソの姿に、俺は疑問符を浮かべる。
 なぜなら黒子タソは、小学生の時に着替で使っていた様な頭の部分だけ出せるバスタオルを体に羽織り、ほとんど素肌が見えない状態だったからだ。なんか花柄のポンチョでも着てるみたいな格好だ。
「お兄様、それくらいで驚いていてはダメですのよ? 黒子お姉様ったら、お兄様に水着を見られるのが恥ずかしくて、あの下にはスク水なんて着ていますのん。しかも、何の冗談でそうなったのか、旧スクですわよ? まったく、あなどれないツンデレ具合ですのん。素肌を見せまいと着ている水着が、お兄様のハートをくすぐるチョイスなのですから」
 そうか……あの下には旧スクが……、ごくりっ。
 って、なんで黒子タソそんな物持ってるんだ? たしか黒子タソの学校って、厚ぼったい旧スクじゃなくて、競泳水着みたいなのじゃなかったか?
 とか思っていると、美少女追い剥ぎから瞬間移動で逃げ出した黒子タソが、こちらに駆け寄ってくる。
 ちなみに、黒子タソの能力は、正確には『空間移動』と呼ばれているモノだ。
 触れた物や自分なんかを、瞬間移動させられる能力だったりする。
「ふぅ、危なかったですの。まったく、初春達の悪ふざけにも困ったものですわ」
「あら、黒子お姉様、そんな物を着たままではプールに入れませんわよ? 早くお脱ぎになって下さいですのん」
 同じ顔の姉妹が、なんかアンバランスな格好で会話を交わしていた。
 一見妹に見える方がエロい水着を着ていて、見た目姉の方が下にスク水(俺からは見えないけど)で頭だけ出してバスタオルを被っている。
 そんな不思議な二人を眺めていると、佐天タソ達もこちらにやって来た。
「白井さんっ? テレポートで逃げるなんてズルいですよー?」
「一人で先に行っちゃうなんて酷いです」
「あなた達がバスタオルを取ろうとするからではありませんか……」
 ふぅ、といった感じで呆れる黒子タソだが……佐天タソはその言葉も聞かず俺の方に向き直した。
 少し恥ずかしそうにしながらも腕を後ろに回し、佐天タソは上目づかいで俺に言葉を掛けてくる。
「翔さん翔さん、どうですか? この水着? あたしとしてはけっこう頑張ったつもりなんですけど……」
 佐天タソの水着は、上は白のビキニで腰には水色のパレオが巻かれた物だった。
 そして後ろに手を回しているので、予想よりも大きめの胸(と言ってもCくらい?)が惜しげもなく晒されている。それで恥ずかしそうに見つめてきたりするもんだから、俺の頬も熱くなってしまう。
「う、うん。似合ってると思うよ?」
 くっ、こんなに佐天タソが魅力的だったとは!
 水着から覗く谷間が、柔らかそうなおっぱいの感触を想像させてしまうではないかっ!
 しかも、俺の視線に気付いているのかいないのか頬をピンク色に染めてモジモジしてるしっ!
 だけど隠さないって事は、そのおっぱいを触っちゃってもいいんですかっ!?
「翔先輩……。目がいやらしいです」
「う……」
 俺が佐天タソに気を取られていると、その後ろからひょっこり顔出した初春タソに、軽蔑の眼差しを喰らってしまった……。
「あ。ほらほら~、初春も翔さんに見てもらいなよ?」
「ええっ!? ちょっとっ、佐天さんっ!?」
 俺が初春タソからの冷たい視線にショックを受けていると、佐天タソが俺の前に初春タソを差し出してくる。
 突然の出来事に、初春タソが俺を見つめて固まってしまった。
「――っ」
 初春タソは、腰の部分にスカートの様なフリフリが付いた、黄色のワンピースに身を包んでいる。そして、両手を胸の前で固く握り締め、顔なんか真っ赤っかにして、潤んだ瞳で俺の事を見つめていた。
 まるで、今から狼さんに食べられてしまうウサギさんの様だ。
 駄菓子菓子! またエロい目でみたらホントに軽蔑されてしまう。俺はなんとか内心の獣を抑え込み、引きつる笑顔で平静に言葉を掛けた。
「う、初春さんもよく似合ってるね? 花柄なんて初春さんらしくて可愛いんじゃない?」
「――っ!」
 俺の言葉に、初春タソの顔が完全に真っ赤になってしまう。
 頭のお花が茹で上がってしまいそうだった。
 そして初春タソは俺に目をやるのが恥ずかしいのか、下を向いて髪で視線を隠してしまう。
 それはそれで、赤い頬が強調されて余計に可愛いんですけど。
 ……あの、やっぱり食べちゃってもいいですか?
「きゃー、初春ってば、その反応超可愛いっ」
 初春タソの萌える仕草は女の子にも効果があったのか、佐天タソはそう叫ぶと初春タソに抱き付いてしまった。
「あ、ちょ、ちょっと佐天さん。ひゃっ、そんなところ触らないで下さいっ」
「ほれほれ~、お主もウブようのう」
 微妙に間違えた台詞せりふを吐きながら、佐天タソは初春タソのお腹や胸の辺りを撫で回し始めた。
「さ、佐天さんっ! 翔先輩の前でそんな事しないで下さいっ! ひゃあっ」
 いや初春タソ、それじゃあ俺の前以外なら良いと聞こえてしまうけど……。
 うむむ、佐天タソって初春タソのスカート捲るのを日課にしてるからな。ちょっと百合な会話に聞こえてしまう。
「あ、でも翔さん。初春には一言あったのに、あたしには「似合ってるね」だけですか? あたしの水着の感想も聞かせて下さいよー」
 きゃあきゃあ言ってる初春タソを撫で回しながら、佐天タソが聞いてくる。
「あー、そうだね……」
 だ、ダメだ。おっぱいに気を取られてました。なんて言えない……。
 いやー、でもこんな美少女達の水着姿を堪能できるなんて、俺は果報者だなぁ。
 なんて思いながら、佐天タソにどう返事をしようかと迷っていると……、さっきからジリジリと何かを燃やしている様な表情の黒子タソが、いきなり俺の足を踏み付けてきた。
「イッタぁっ!?」
「ちょっとアナタ、鼻の下が伸びていますわよ?」
 俺がいきなりの痛みに耐えながら「ギブギブ」と黒子タソの肩を叩くと、とりあえずそれで満足したのか、黒子タソは足を退けてくれた。
 そして、黒子タソは辺りを見回して、話題を変えてくる。
「それはそうと、お姉様の姿が見当たらないのですけど……。いったいどこに行ってしまわれたのですか?」
「え? 御坂さん?」
「ええ、わたくし達よりも先に出て行ったハズなのですけれど……」
 言いながら、黒子タソは美琴タソの姿をしてキョロキョロと辺りを見回す。
 すると、この広い敷地を一周してきたのか(まだやってたんだあの二人……)美琴タソと上条さんが消えて行った方向とは反対の方からやってきた。
「ちょっとアンタっ! 逃げてないで勝負しなさいよっ! って、こらっ、ちょっと待ちなさいってば!」
 いつのまに調達したのか、美琴タソは野球ボールくらいのビニールボールを数個抱えていた。
 それをバシバシと上条さんに投げつけている。
 …………。
 どうやら、俺の忠告通り電撃は使わない事にしているらしい。
 相変わらずだなぁ、なんて思っていると、美琴タソの投げたボールが上条さんの後頭部に命中した。
「イテっ……。人に向かってそんな行為をしてはいけません、って、学校で習わなかったか?」
 ボールをぶつけられ、上条さんが少し怒ったようだ。
 美琴タソの方に振り返り、お得意の説教を始めようとするが、
「お、やる気になったわねっ? それじゃあ勝負よっ!」
 美琴タソは上条さんの言葉を無視して、突撃を開始した。
 しかし上条さんんは、しゅたたたたー、と駆け寄る美琴タソを目にして呆れている。
「だから、勝負なんてしないって言ってるだろ?」
 怒っても上条さんは上条さんの様だ。しょうがないなぁ、といった感じで「はぁ」と溜息を吐いて下を向いた。
 しかし、美琴タソがその隙を見逃すハズもなく。
 上条さんに飛び掛かった。
「って、おいっ! 人の話は最後までうわっ!」
 完全に油断していた上条さんは、美琴タソの飛び付き攻撃に仰向けに倒れてしまう。
 下がスポンジ材でできたプールサイドだったので、ケガとかはないだろうけど……。
「もらったぁ!」
「げふっ」
 痛くなかったかなぁ? と心配する俺をよそに、美琴タソは仰向けに倒れた上条さんに馬乗りになった。
「さぁ、この状態ならプールに感電はしないし、アンタも電撃避けられないでしょ」
 それが狙いだったのか。
 でも、美琴タソ……。その体制……。
「あああああああああ゛。お゛お姉様っ!? 殿方に馬乗りなんてっ! な、ななななんて破廉恥な格好をしていますのっ!?」
 黒子タソがもの凄い顔で、俺の代わりにツッコミを入れてくれた。
 うむ、黒子タソの言う様に、美琴タソが水着姿で馬乗りなんかになっているもんだから、上条さんのお腹の上はきっと素敵ワールドになっている事だろう。
 当の上条さんも、目に映る光景や、肌に触れる感触やらで完全に固まっているようだった。
 美琴タソは全然気付いてないけど……。
 しかし、そんな天然お姉様の姿を目にして、黒子タソの理性が吹っ飛ぶ。
「こんのぉおおおおおおおお! クソガキがぁぁあああああ! そんな羨ましい体制っ! わたくしと変わりやがれですのっ!!」
 俺も黒子タソとあんな体制になりたいなぁ、なんて思っていると、黒子タソも同じような事を考えていたようだ。
 黒子タソは、二人の方へ転移してしまった。
 あーぁ、美琴タソのエッチな姿に、完全に我を失った様だな……。
「あらあら、黒子お姉様のご病気は、まだ治っていないんですのね?」
 美琴タソに飛びつく黒子タソを目にして、俺の隣でクロコがそう呟いた。
 まぁね、なんたって黒子タソだし。
 それに、美琴タソのあんな姿を目にしたのなら当然の反応だろう。
 はぁ……、ほんとに、いつになったら黒子タソは俺の方に振り向いてくれるんだろうか?
 なんて、ちょっと感傷に浸ってみるのだった。
 
 
 
 まぁそれで、なんやかんやとイベントは進み、お昼の時間になった。
 俺達は、プールサイドのカフェコーナーでお弁当を広げている。
 大きめのパラソルに、これまた大きめのテーブル、六人で掛けても窮屈な感じはしなかった。
 …………。
 なんで席が‘六人分’なのかは、言うまでもないだろう。クロコが俺の膝の上に乗っかっているからだ。
 まぁ、今のクロコの姿で俺に密着すると、かなりエッチな感じになってしまうのだが……。
 美琴タソが黒子タソのバスタオルをぎ取って、クロコに被せてしまった。
 なので、そんなに危険な感じではない(なんでか知らんが、黒子タソは究極の二托を迫られたような顔をして、しぶしぶバスタオルを諦めていたようだが)。
 ちなみに、頬を染めてモジモジしている黒子タソのスク水姿を堪能していると(特に水抜きの辺り)、初春タソに太ももをつねられた。
 なので、黒子タソの濡れた水着が貼り付く平らな胸や、スラッと伸びた潤いのある生足やらを眺めるのはよしてある。
 と、そんな事を考えながら、俺がとうできたバスケットの蓋を開けると、両隣にいる佐天タソと初春タソから、嬉しそうな声が上がった。
「おお~、これ全部、翔さんが作ってくれたんですか?」
「すごいですっ。高級ホテルのサンドイッチみたいですねっ?」
 二人とも、随分と喜んでくれているみたいだった。
 佐天タソはビックリして口を大きく開けてて、オモシロ可愛い表情になっている。
 初春タソは、なんかはキラキラ目線でサンドイッチを凝視していた。
 うむうむ、そこまでビックリしてくれるとは、わざわざ早起きして作った甲斐があったというものだ。
 少し前に佐天タソに料理をご馳走する約束もしていたし、初春タソと佐天タソのお弁当は、俺が作ってきたのだ(黒子タソの分も、と思ったけど断られた)。
 せっかくだからとつい頑張ってしまったけど……、クラブハウスサンドの様な、豪華なサンドイッチ、我ながら会心の出来だ。
「たくさん作ってきたからね? 遠慮せずにどんどん食べちゃって?」
「はーいっ。それじゃ、いただきまぁすっ!」
「翔先輩、いただきますね?」
 二人はそう言って、サンドイッチに手をつけ始める。
 美味しそうに食べる二人を眺めながら、俺もサンドイッチを二つ手に取った。
「ほらクロコ。黒子タソのバスタオル汚すんじゃないぞ?」
「もうっ、お兄様? クロコはそんなに子供ではないですのん」
 クロコは俺の方を見上げて文句を言いつつも、小さな両手でサンドイッチを受け取る。
 俺は、そんなクロコの頭を片手でポンポンしながら、サンドイッチに口を付けた。
 ……うん、自分で言うのもなんだが、かなり美味しい。
 できれば、黒子タソにも食べて貰いたかったけど……。
 と思い、俺が黒子タソの方に目をやると、彼女は美琴タソを見つめて、何やらブツブツ言っている。
「お姉様ったらあんなに殿方と密着してお弁当を分けてやるなんてわたくしが差し上げたジュースは一口も飲んで下さりませんのにいえでも今飲まれたら大変な事に」
 なんか、怒りや焦りやら、色々な感情が複雑に混じり合った顔で、自分のお弁当をつついている。
 ちなみに、美琴タソと黒子タソのお弁当も、けっこう手の込んだ物だった。
 ちょうど常盤台の女子寮に、知り合いのメイドさんが何かの下見に来ていたらしい。そして、そのメイドさんにお弁当を作って貰った、という事だ。
 メイドさんが顔を出すなんて、さすがはお嬢様学校ですなぁ。
 まぁそんで、上条さんのお弁当は、本来持ってくるハズだった物は某暴食シスターに全部食べられ、コンビニ弁当(しかも298円)になってしまったらしい。
 そして、さっきの黒子タソの呟きに繋がる訳だ。
「ほらアンタ、そんなしょっぼい弁当よりも、こっちの方がよっぽど遊びに来た気がするでしょ? この美琴さんに感謝しなさいよ?」
「ああ、ありがとうな。いきなり襲われた時はなんだコイツ? とか思ってたけど、オマエって結構いい奴なんだな。いや、ほんと、マジで感謝してます。不肖ふしょう上条当麻、このご恩は一生忘れません」
 と、上条さんが美琴タソに向けて大仰に礼を述べていた。
 きっと、記憶喪失なので美琴タソに対する警戒心がまだ育っていないのだろう(さっきの美琴タソのビリビリなんてまだまだ甘い方だからな)。
 そんな上条さんは美琴タソにお弁当を分けてもらって昼食も豪華になり、かなり本気で礼を述べているようだが。美琴タソはいつもとちょっと違う上条さんに戸惑っているようだ。
「う……、べ、別に、そこまで感謝しなくてもいいわよ」
 美琴タソの頬が少し赤くなった。
 …………。
 どうやら、上条さんのフラグメイカーが発動されたようだ。
 今からきっと美琴タソの好感度がポロンポロン上がるだろう。
 と、俺がその体質を少しでも分けて欲しいと切に願っている横で、黒子タソが、バキィッ、とお箸を折り、怨念を口に出す。
「こんのクソガキそれでお姉様を口説いてるつもりですのお姉様もお姉様ですわその程度で頬を赤らめてわたくしにはそんな表情を一回も見せてくれた事はありませんのに悔しいったらないですわ」
 ……なんか、黒子タソが今にもダークサイドに落っこちてしまいそうだった。
 そんな光景を目にして、クロコが指に付いていたソースを舐めながら言った。
「お兄様、ここに上条さんを連れてきた事は失敗だったのではないですのん? せっかくお兄様になびきかけていたのに、黒子お姉様ったら、美琴お姉様への気持ちが再燃していますわよ?」
「え? なびきかけてたって? 上条さんと御坂さんは仲良くなってるし、予定通りじゃないか? というかクロコお前はそんなエッチな感じで指をチュパチュパ舐めるのを止めなさい」
「……。そうですか、これが俗に言う鈍感主人公ですのね」
 んん? クロコの言ってる事の意味がよくわからないが……。
 なんて事を考えながら、お昼の時間は過ぎていくのであった。
 
 
 
 つづく……
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