黒子と、半オリキャラのロリ黒子がメインヒロインです。
初春と佐天がサブヒロインで、美琴は上条さんと仲良くやってます。
萌えと燃えの割合はアニメくらいです。
それと「Ⅱ」の最初の方は、ラノベ意識し過ぎて、文体の方が多少変になっています。が、手直しする時間が取れないのでこのままの予定です>< ごめんなさい。
あと、もっと質の良い物をお届けしたいので、ダメ出し大歓迎です。
それと一応、前作知らなくても分かるように書いているつもり……。
でも、前作読んでからの方が楽しめると思います。
あともう一個。繰り返しになりますが、作者はこれより物語に関与できないので、後書き等は作者の活動報告にあります。
ではでは、長い前書きを読んで頂き、ありがとうございました。
これが最後のチャンスだ。これから先は引き返す事ができない。
戻るボタンを押すと、ここで終わる。アナタはネットの海に戻り、後は好きな小説を読めばいい。
本文ボタンを押せば、この混沌としたネットの世界が、どれだけ深いか見る事になる。
…………覚えておけ、私が見せるのは、アナタの現実だ
プロローグ 悔恨とロリコン
○月△日
はくいの人にノートやエンピツをもらった。
わたしのことを「とくべつなひけんしゃ」と言っていたけど、いみがわからなかった。
それより、これからは、ほしいものがあればもらえるみたい。
◎月×日
お兄さまが聞かせてくれたお話みたいな、アニメやマンガをたくさん見ましたのん。
ちょうど、お兄さまの好きだと言っていたお姉さまのような人がいましたので、その人のマネをしてみることにしましたのん。
それで、白衣の人がわたくしの言うことをきいてくれるみたいなので、お兄さまに会わしてくれと言いましたら、ムリだと言われてしまいましたのん……。
お兄さまは、もうここにはいないらしいですのん。
×月○日
どうやら、わたくしが頼んだコレクションを、白衣の人達も暇つぶしに見ている様ですのん。
最近はわたくしの能力開発がおなざりになってきていますけど……。
なんでも「会長が代替わりしたから、急ぐ必要がなくなった」らしいですのん。
まぁ、わたくしも能力開発なんてない方が嬉しいですし、あまり深くは聞かない事にしましたのん。
能力開発をあまりしませんので、やる事がないですのん。
代わりに、お勉強をする事にしていますのん。
△月×日
わたくしの部屋が、アニメやマンガで一杯になってしまいましたのん。
邪魔なので実験室に押し込むらしいですのん。
最近は簡単な能力開発しかしていないのですが、ここの人達は気にしている様子はありませのん。
とういか、「○ャナたん萌えー!」とか「ル○ズたん萌えー」とか、たまに奇声を発して、あまりお仕事をする気がないみたいですのん。
△月○日
今日から学校に通う事になりましたのん。
外に出ればお兄様の行方を探せると思い、学校まで送ってくれた黒服の人にお兄様の事を言ってみると「幸薄の美幼女萌えー!」とか言って、代わりに探してくれる事になりましたのん。
…………。
黒服の人もわたくしのコレクションを見ていましたのね。
△日×日
お兄様は未だ見つかりませんのん。
学園都市の外は個人情報の管理が甘いので、探すのが難しいみたいですのん。
それと、研究室の外の情報を知ってわかったのですが、この街は「お兄様が聞かせてくれたお話」とそっくりですのん。
しもべ一号にその事を言ってみると、予知能力か何かで知っていた可能性がある、という事らしいですのん。
□月○日
茶髪メガネの女性とお話ししてきましたのん。
お兄様が聞かせてくれたお話の事を色々と聞かれましたのん。
でも、あの女性、なにか嫌な感じがしましたのん。
○月×日
随分と久し振りに茶髪メガネの女性から連絡が入ったと思ったら、お兄様の居場所を教えてくれましたのん。
飛び跳ねて喜んでしましましたのん。
わたくしのお話が何かの役にたったという事で、お礼に駆動鎧を一台頂いてきましたのん。
あくまで、お礼、ですのん。
最初に渡されたお礼がぬいぐるみだったので子供扱いにムカついて難癖付けて奪ってきたのではありませんのん。
でも、金ぴかのロボットなんて悪趣味でしたのん。
それよりも、お兄様は風紀委員になってお姉様と仲良くしているみたいですのん。
…………。
お兄様は、わたくしの事など忘れてしまったのでしょうか?
○月△日
部屋でいじけていると、しもべ七号から慌てて連絡が入りましたのん。
一号から六号が、いじけているわたくしの為にお兄様を連れてこようと独断で動いたらしいですのん。
今からお兄様を呼び出すとの事だったので、慌てて駆けつましたのん。
でも、お兄様は佐天さんとイチャついていましたのん……。
わたくしは……。
○月□日
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい―――。
○月◎日
部屋で塞ぎ込んでいると、しもべ七号からまた慌てて連絡が入りましたのん。
お兄様が病室から抜け出して、木山先生の所に向かっているらしいですのん。
ずっと部屋で泣いていたので、日付の感覚がありませんでしたのん。
お兄様のお話通りになれば、木山先生の生徒達を助けられなくなってしまいますのん。
わたくしも駆動鎧ですぐに後を追いましたのん。
○月×日
わたくしの能力で、なんとかお兄様を助ける事ができましたのん。
大好きな大好きなお兄様。
でも、お兄様ともう一度会うのは諦めようと思いますのん……。
もう、わたくしにその資格はありませんのん。
それに……。
―第零話 悔恨とロリコン―
「くそっ! いったいどこにっ!?」
とある研究所。
俺は、蛍光灯に照らされた白いリノリウムの廊下を走っていた。
目に付いた扉を片っ端から開けて部屋の中を見渡しては、すぐにまた次の部屋を目指す。
駆け抜ける研究所の廊下には窓が取り付けられておらず、外では夕日が沈む時間帯だという事を知らせてはくれなかった。
……まぁ、俺がなんでこんな所を駆けずり回っているかというと。
昔『「とある科学」の世界に憑依する』なんていう、大きなお友達が聞いたら、涙を流して悔しがるような体験をしたんだが。
その憑依先は、とてもじゃないが羨ましがられる様な環境じゃなかった。
発火能力などの超能力が一般的な世界なのだが、俺が手に入れた能力はかなりのレア物で、その能力の希少性から研究室に監禁されたのだ。
そこは子供達が実験動物扱いの酷いところだったんだけど、俺は、研究室に居る時に一人の女の子と仲良くなった。
特に娯楽もない研究室で、俺はその女の子に、憑依前の世界で見たアニメやマンガの話を聞かせてあげたりしていた。
だけど、ある日、突然女の子と会えなくなってしまった。
その子の事を心配もしたが、ただの子供にどうする事もできなくて……。
しばらくして研究室から逃げ出せるチャンスがあったんだけど、女の子を見捨てて逃げ出してしまったんだ。
その時は、仲良くなった女の子も、他の被験者と同様に実験で使い潰されたと思っていたから。
だけど……。
と、物思いに耽っていたら、目の前の十字路から白衣の男が出てきた。
「なっ、なんだお前っ!?」
「――くっ」
俺は即座に駆け寄り、男のみぞおちに拳を叩き込む。
「がはっ!」
研究所の入口に居た黒服とは違い、その軟弱そうな男は一撃で気を失ってしまった。
腹を抱え込んで、俺にもたれ掛かるように倒れてくる。
「ふぅ、あまり騒いで欲しくはないからね……」
のしかかる男を脇にどける。
まぁ、かなりカッコ良い感じで倒してしまったが、これは別に、俺が特別ケンカに強い、という訳じゃない。
時間制御。
時間を圧縮して、俺のスピードを上げられる、とかいう能力のおかげだ。
俺には周りの動きが遅くなって見えるし、相手のパンチなんかも軽々避けられる。
研究所に入る時にガチムチの黒服お兄さんとやりあった時も、この能力で倒してやったのだ。
まぁ『やりあった』と言っても、俺の心はいつでも黒子タソLOVEなので、変な意味ではないですよ?
「だけどこの研究所。なんか、警備が薄いというか……。ほとんどの部屋はもう使われてないみたいだけど」
黒服を倒した時にIDカードなんかをいただいたのだが、鍵が必要だったのは入口だけで、中はほとんど鍵が開けっぱなしだったのだ。
というか、さっき覗いた部屋なんかはただの物置になっていた。
しかも……、なんていうか……。
「やっぱり、この部屋にもあるし……」
近くの扉を開けてみると、中にはオタグッズが所狭しと積まれている。
研究所の実験室に、山程のアニメやマンガ、中には限定版付属品なんかもあって、ハッキリ言って意味不明だ。
「…………。ほんとに、こんな所にあの子が居るのか?」
そう、俺がここに来た理由は、むかし生き別れ? になった女の子の居場所が分かり、その研究所に特攻をかけたのだが。
なんか、俺の予想とはだいぶ違う展開になってきている。
昔の研究室の雰囲気から考えると、もっと殺伐とした感じで、対能力者用の警備なんかもあったりして、レベル3程度の能力者ならなんとか倒せるかな? くらいの俺では、もっと苦戦したり熱い戦いが待っているのかと思っていたんだけど……。
あ、ちなみに、レベルとは能力の強さの事だ。レベル5だと軍隊相手に引けを取らないらしい。
それで、レベル3だと一般人よりは強い程度だ。
まぁそんな感じなので、俺の能力レベルでは、警備が厳し過ぎる場所だとさすがに特攻はかけられないのだが。
「この研究所、もう一部門しか残っていないらしいし。統括理事会が関わってないとこんなもんなのか?」
今、俺が居る研究所は『学園都市』と呼ばれる巨大な街の中にある。学園都市とは、総人口230万人にも及ぶ、東京都の三分の一ほどもある特区の様な場所だ。
そのマンモス都市をまとめ上げるのが、統括理事会と呼ばれる組織。理事会の息がかかった研究所は、武装集団が攻めてきても守れる程の警備をしている所もあるのだが……。
「まぁ、時間制御の研究は統括理事会が関わっていないらしいし。警備が厳しいよりは楽で良いんだけど……。なんか拍子抜けだなぁ」
思ったよりも簡単に侵入できた事に、思わず俺の気が緩む。
気を削がれた俺は、早足程度の速さで研究所の中を探す事にした。
「お兄様……。やっぱり寂しいですのん……」
幼い少女が、ベットの上で枕に顔を埋めながら呟いた。
年は、十と幾つか。ちょうど中学校に上がる前くらいだろうか?
肩ほどまでしかない短めのツインテールが、枕の上に広げられている。
水色のワンピースを着た少女は、ベットに投げ出した足をバタつかせ、内に宿るもやもやを表していた。
「あ゛~、お兄様お兄様お兄様……。このままクロコは、海の泡となって消えてしまうのでしょうか?」
クロコと名乗る少女は、くるり、と上を向き、可愛らしい瞳に恋い慕う少年の幻影を映して、届かない言葉を投げ掛ける。
そこまで焦がれるのなら、さっさとその「お兄様」とやらに会いにいけばいいのだが……。
「でも、わたくしに、お兄様と会う資格なんてありませんのん……」
そう呟き、少女は自分の言葉の意味を思い出す。
嫉妬と拒絶、まだ幼かった少女は、自分の感情を上手くコントロールできなかった。
幼い頃からずっと慕い続けていたお兄様。
何年経っても色あせる事無く大切に育んできた思いは、その大きさゆえに少年に牙を向けたのだ。
「お兄様、あの時はごめんなさいですのん……」
焦がれに焦がれていたお兄様の消息が分かったと思ったら、話に聞いていたお姉様と仲良くやっている。
自分の事など、とっくに忘れていたみたいだった。
もう、自分が入っていく隙間などないのだろう。
行方不明だと知って、いつもお兄様の事を心配していたというのに……。
そして、まだ幼い少女は、内に宿る感情も理解できぬまま、お兄様と再会を果たしてしまう。
目に映るのは、他の女性と仲睦まじく話しているお兄様。
感情のままに一発殴ってやると、今度は自分に向かって攻撃してきた。
咄嗟に能力を使って身を守れたが、もし喰らっていたら大ケガどころでは済まなかったかもしれない。
少女は、産まれて初めて感じた程の抑えきれない激情にかられ、お兄様に刃を向けてしまう。
かろうじて急所は外したが、それでも、自分の事など忘れ、あまつさえ自分を攻撃してきたお兄様に、そんな手加減をしてしまった自分が許せなかった。
引き抜く刃を捻り上げ、お兄様を蹴り飛ばし、やっと頭に上った血が引いてきたと思ったら、今度はお姉様に攻撃された。
鋭い痛みに、冷静になった頭で自分のした事の愚かさに気付いても、もうその場には居られない。
少女は泣きながら自分の研究室に逃げ帰ってしまう。
普段、家来の様に扱っている職員達が心配してきたが、私室に鍵をかけて何日も塞ぎ込んでいた。
冷静になってみれば、お兄様が自分を攻撃してきた事は、至極当たり前だと思った。
何しろ、自分は駆動鎧を着てお兄様と再会したのだ。
お兄様からしたら、中の人物など分からなかっただろう。
しかし、どんなに後悔しても、お兄様を刺し殺そうとした罪が消える訳ではない。
たとえ、一度死んでしまったお兄様を、自分の能力で助けたとしても。
少女は、もうお兄様と、言葉を交わすことはできないと思っていた。
「はぁ……、なんでこんなにオタグッズだらけなんだ? その辺の専門店より品揃え豊富じゃないのか?」
俺は数回目の部屋を目にして、呆れた声を出す。
たまに通りかかる白衣を気絶させながら、俺は研究所の中を彷徨っていた。
何しろ、元は幾つもの研究室が入っていた施設だ。
その中からあの女の子が居るであろう部屋を探り当てるのは、中々に骨が折れた。
まるでホラーゲームの様に、広い研究所の中を捜し回っているのだが……。
アタリハズレみたいに、たまにあるオタグッズだらけの部屋がなんとも間の抜けた空気をかもし出していた。
「なんか、ほんとにここに居るのか不安になってきたな……」
俺がそんな事を考えながら次の扉を開けてみると、中から目を疑う様な光景が飛び込んできた。
まるでマンションの一室みたいな内装の部屋だ。
しかし、部屋の中がもの凄かったのだ。
なんか、いかにもアニメオタクですよー、って感じのポスターが貼り付けられた壁に、ところどころにあるアニメキャラのグッズ。そして、完全にそのグッズ達とマッチしていない、少女趣味丸出しの部屋の装飾品。
ベットや、机と椅子、下に引いてある絨毯なんかは、常盤台中学とかいうお嬢様学校の生徒達が好んで使いそうな、見るからに高そうな品で、ソファには愛くるしいヌイグルミがたくさん置いてある。
その横には、これまた一目で高級品と分かる、光沢を放つ豪奢な机が置いてあり、その上に可愛らしい日記帳が置いてあった。
「うむむ……、バ○オハザードとかだと、こういう時に見つける日記っていうのは、研究者の怖い体験談だったりするけど……」
どこをどう見てもそんな風には見えないし、こんな可愛らしい日記帳を持っている研究者なんていないだろう。
もしかしたら、あの女の子の私物かもしれない。
それだと、この部屋もあの女の子の部屋って事になるけど……。
なんか研究所の雰囲気もおかしいし、被験者の待遇も変わったんだろうか?
あまりに不思議な事だらけで、いまいち理解が追い付かなかった。
なので、俺はとりあえず、セオリー通りに日記を読んでみる事にした。
「そっか……。あの子だったんだ……」
日記を読み終え、俺はだいたいの状況を把握できた。
どうやら、俺を刺した駆動鎧には、あの女の子が乗っていたらしい。
しかも、怪物と戦って脳死状態になった俺を助けてくれたのも、その女の子みたいだった。
「寂しかったんだろうな……」
日記から伝わってくる思いは俺の心を締め付けて、自分が刺された事なんかは、もうどうでもいいと思った。
それに、命の恩人みたいだし、感謝はしても恨む事などできないだろう。
「でも、いったいどこに?」
日記を読んで分かった情報からすると、少しでも早く助けないと、って感じではないけど。
それでも、どこかで泣いているかもしれない。
きっと、全て自分のせいだと思い込んで……。
「早く見つけて、励ましてあげないと」
俺が女の子の事を心配していると、部屋の奥。
研究所には不釣り合いな、しかし、この部屋にはマッチしている、高そうな木材で作られている扉が開いて、可愛らしい声が聞こえてきた。
「はぁ……、マンガみたいにお風呂でブクブクやっても、ちっとも気持は晴れませんのん……。あぁ、お兄様。クロコは……、ふぇ?」
バスタオルを体に巻き付け、セミロングより少し長めくらいの髪の毛をフェイスタオルで拭きながら、一人の女の子が部屋に入ってきた。
少女は、お兄様ともう会えないと思った。
それは別に、死んだから会えないとか、行方が分からないから会えないとか、そんな理由ではなかった。
大好きなハズの少年に刃を向け、そのせいで、彼の計画を台無しにしてしまったからだ。
大切な彼を、研究所から救いだしてくれた木山春生という女性。
彼女の計画が失敗に終わるのは知っていたが、‘お話’を知っていた少年なら、なにか打開策を用意していたに違いない。
だがそれも、自分がお兄様を刺した事によって、全て台無しにしたのだろう。
そう、少女は思った。
自分の犯した過ちが、自分と同じ境遇だった子供達を助ける計画を、破綻させてしまったのだ、と。
客観的に見れば、それら全てが少女の責任ではない。
少年の計画が潰れた事自体は、様々な不幸が重なった結果だろう。
少年の行方がわかったタイミング、少女の家来が独断で動いた事、少女が駆動鎧に乗って現場に駆け付けてしまった事、少年が意識不明だった期間、少年とある女性の気持ちがすれ違ったしまった事、なにか一つでも優しい奇跡が起きていたら、結果は違っていたのかもしれない。
全てが自分の責任だと思う事は、『if』を言い出せば切りがない、果てのない哲学となってしまう。
もし少女に罪があるとするならば、少年を刺した、その一点のみだろう。
しかし、少女は、その純粋さ故に、そんな事には気付かない。
少年が一度死んでしまった事も、少年の恩人の計画を潰してしまった事も、自分と同じ子供達を救えなかった事も、全て、自分の責任だと思い込んで。
「な、なんでお兄様がここに……」
だから、少女は、目の前の光景が信じられなかった。
たとえ、少女の罪が、少年の命を救う事で許されていたとしても――。
俺の前に、ずっと気に病んでいた少女が居た。
その子は、俺が逃げ出した後も俺の事を思っていてくれて、俺の事を助けてくれた。
そんな子に、恨みの言葉を吐けるだろうか?
そんな子に、俺を傷つけた事を、責められるだろうか?
俺は、ただ茫然と見つめてくる少女に歩み寄り、頼りなく震える、小さな体を優しく抱き締めた。
「よかった……。ここに居てくれて」
「お、お兄様……」
今の状況がいまいちよく理解できないのか、濡れた髪を頬に張り付けて、愛くるしい大きな瞳で俺の事を見上げてくる。
しばらくそうして見つめ合っていると、女の子は俺のお腹を押して、体を引き離そうとしてきた。
「だ、ダメですのん。わたくしは……」
日記を読んでいた俺は、少女の思っている事にだいたい察しがついていた。
きっと、自分には俺と会う資格がない、とか思っているのだろう。
だから俺は、その小さな体を離さない様に、しっかりと抱き締める。
「大丈夫、なにも気にする事ないから……、誰も責めたりしないから……、俺も、ずっと心配してたんだから。だから、会う資格がないなんて、そんな事ないから」
俺の言葉を聞いてくれたのか、それとも、抱き締められた温もりに感情が溢れてしまったのか。
女の子は勢いよく抱き返してきた。
その勢いにバランスを崩し、俺は床に押し倒されてしまう。
打ち付けられた背中がちょっと痛かったが、俺は、胸にすり寄ってくる女の子の頭を撫でて上げた。
「お、お兄様ぁあっ! わたくし、ずっと、ずっと探していましたのよ? それなのに、お兄様ったら、わたくしの事なんて……、だから……、なのに……」
気持ちを上手く表現できないのか、女の子はやがて言葉が続かなくなり、俺の上でわんわん泣き始めてしまった。
女の子の瞳と同じ様にいろやかに濡れる髪を、ゆっくりと撫でて上げる。
どれだけそうしていただろうか?
女の子は、別れてからずっと我慢していた感情を吐き出すように、涙声で俺の事を呼び続けていた。
俺の胸に溢れるほどの涙を流して、少女の吐息がやっと落ち着いてくる。
「ぐすっ……。お兄様……、お兄様……、会いたかったですのん」
「うん、俺も会いたかったよ? だからもう泣かないで? これからはいつでも会えるんだから」
「お兄様……」
女の子はそう呟いて、俺の体をギュッと抱き締めてくる。
それに答える様に、女の子の奇麗な背中を撫でて上げていると……。
俺が入ってきた部屋の扉。
その扉が突然開き、俺的レベル5第一位の女の子の声が聞こえてきた。
「まったく! あの変態は! 一人で先走って独断先行するなんて、人には注意しておいて自分はおかまいなしなのですね! って……」
ツインテールをなびかせながら入ってきた彼女は、常盤台中学一年生、白井黒子タソだ。
ちなみに、タソ付けなのは、俺の溢れる萌え魂がそう呼んでしまうのだから仕方ない。
俺は倒れれた低姿勢から、黒子タソが着ているサマーセーター、その下に見える丈の短い灰色のプリーツスカート、さらにその中、彼女のパンツを眺めながら声を出した。
「あ、黒子タソ……。なんでここに?」
って、そういえば、初春タソがこの場所を見つけてくれたんだったな。
初春タソから、俺が支部を飛び出していったと聞いて、心配して後を追ってきてくれたんだろうか?
だけど黒子タソは、部屋に入ってきた途端固まって、何やらプルプル震えている。
「こ、こ、こ、この変態は……、人が心配して後を追ってきてみれば……、裸の女の子と抱き合って、い、いったい何をしているんですの?」
うっわ、なぜかもの凄く怒っているんですけど……。
額に青筋を浮かべ、溢れる怒りで言葉が出せないとばかりに声が震えている。
いやしかし、裸の女の子って……、うん、目の前の女の子のバスタオルは、倒れた時に見事にはだけ、今は足の部分に少しかかっているだけだな。
これではどこをどう見ても、俺が裸の女の子と抱き合っているようにしか見えないだろう。
いつも黒子タソになんやかんやと勘違いされて攻撃される俺は、今の状況をけっこう冷静に分析できる様になったみたいだ。やったね俺。スキル欄に「分析能力」か何か付加されただろう。
「あ、あなたの様な変態は、冥土に送って差し上げますわ!」
黒子タソはそう言って、俺の真上に空間移動してくる。
俺は、そのローアングルから覗く黒子タソのパンツ(今日は紫のレースだった)を目にしながら、顔面にプレスキックを喰らわせられるのであった。
「ぐはっ!」
「ふぅ……思わず踏みつけてしまいましたの。って、この変態は、なんでそれで満面の笑みで気絶していますのかしら?」
「ちょ、黒子お姉様! いきなりお兄様になんて事しますのんっ!?」
「はい? あら、あなたは――」
俺の上で何やら、同じ声優さんが話している様な二人のそっくりな声が聞こえてくるが、黒子タソの容赦ない一撃に俺の意識は刈り取られ、そこで記憶は途切れてしまうのであった。
―とある科学の超電磁砲 外伝―
―とある憑依の加速装置 Ⅱ―
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