ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
玉座の間大扉の戦い
作者:坂本伊能
王城と呼ばれる城。その玄関が、開け放たれた。
雪崩れ込んでくる兵士達。いずれも軽装で、正規兵ではなく武装した民間人だった。
対し、玄関から伸びる廊下の各所には、全身を甲冑で包んだ騎士が待ちかまえていた。

騎士に向かい、兵士の1人が剣を振り下ろす。
ベコォッ、と金属音。しかし甲冑は貫かれる事が無く、代わりに騎士が振るった剣は、兵士の首を飛ばした。
そういう光景が、玄関から伸びる廊下の各所で見られた。

「オラァ、気張れェ!」

質によって押される兵士達を、男が鼓舞する。
両手にダガーを持った男だ。男は軽やかな身のこなしで騎士の死角に回り込み、ダガーで思い切り甲冑を突き刺した。
刀身の短いダガーは、それだけに強靱だ。折れる事無く、甲冑を貫き、騎士の喉笛を突き破る。

「この国が終わる瞬間なんだ!
 終わりを見ずに死ぬなんて無粋な事、するんじゃねェ!!」

男の活躍と、物量による差が、騎士達を押していった。
特にグイグイと押されているのが玉座の間へと繋がる正面廊下だ。数十人の騎士に、数百人の兵士が襲いかかってくる。
押し倒され、甲冑を脱がされる者。甲冑の隙間から滅多刺しになる者。甲冑がとうとう突き破られた者。
そういった者が多く出始めていて、防衛線は崩壊していた。

男が兵士の間を駆け抜け、いち早く正面廊下を抜ける。
玉座の間へと通じる、大扉がそこにあった。
高さ5mはある巨大な扉。その向こうに皇帝はいる筈だ。そういう時間を、狙っていたのだ。
だが扉は厚い。扉の前にいる老将軍が、扉を数倍厚くしている様な感覚を与えていた。

「盗賊、ヴァン・ゴールド。
 まさか貴様の様な男が、革命軍の陣頭指揮を執っているとは」

「傭兵だ、爺」

男、ヴァンに老将軍が呟く。
訂正しながらも、ヴァンはダガーを構えた。
後ろに兵士達が到達していたが、門の前に老将軍が立っていると知るや、途端に足を止めていた。
別の指揮官がその兵士達を別の廊下に回し、制圧していく。

大扉は、ヴァンに任された恰好になっていた。
浮ついていた足並みを、ヴァンは整え、老将軍に向き直る。

「”武器負い”の爺将軍殿。
 てっきりアンタは、オレ達の味方だと思ってたんだが」

武器負い。老将軍の異名であった。
名に違わず、老将軍は異様な出で立ちをしていた。
背中に大きな斧を背負い、更に槍を2本交叉する様に掛けている。
腰には4本の剣、刀。合計で7振りの武器を持つその姿は、歩く武器庫と言っても過言では無かった。

「儂としても、本当は貴様等に与したかったんだがのう。
 しかしそうしては、折角皇帝が下ろされても何も変わるまい。
 抵抗する人間がいて、斬る必要が生じて、そうして古いモノをドンドンと斬り捨てていかねばならぬ。
 革命とはそういうモノだ、ヴァン・ゴールド」

「老兵は死なずただ去るのみ、って言葉を知らねぇのか?」

「知っておるとも。
 しかし去るより死ぬ方が良い、と軍人である儂が判断したまでだ」

「アンタの娘はどうなる?
 彼女は、アンタに死んで欲しくない筈だ」

「娘は娘だ。儂が居らずとも、好きに生きるじゃろう。
 じゃが国には儂の死が必要じゃ」

「食えない爺だ」

ヴァンはダガーの1振りを鞘に直し、別の短剣を取り出した。
十手型の短剣。それを握り、ヴァンは地を蹴る。

武器負いが剣を抜いた。振り下ろす。
速度も威力も並だが、避けられそうにない剣閃だった。まるでヴァンがどこに来るか、わかっているかの様な剣閃。
ヴァンはそれを十手型の短剣で受け止めた。絡め取り、地面に向け、切っ先を下に向けさせる。

――バキィッ――

その剣を、思い切り踏み抜いた。
刃は折れる。だが片手で振るっていた武器負いは、もう片方の手で、刀を抜き取った。
首を狙った一撃。これは避けられた。屈んで避けて、ヴァンは武器負いの腹に蹴りを入れる。
しかし、服の下に胴当てを着ていたらしく、蹴りはガンッ、という音の前に無力化された。

一旦ヴァンが下がる。
それを見るや、武器負いは剣を直して、槍を両手持ちで構えた。

「行くぞォ小童ァッ!!」

回る様な槍さばきで、武器負いがヴァンに迫る。
旋風の様な薙ぎ払いの連続から、鋭い刺突。避けるので精一杯。
いや、受けようモノならばすぐさま弾き飛ばされるだろう。
目に見える程の強力さがその槍にはあった。

「ハァッ!」

ヴァンが隙を突いて、ダガーを投じた。
すぐさま先程鞘に入れたダガーを引き抜き、地を蹴る。
ダガーを投じられた武器負いは、反応して顔を動かす事でダガーを避けた。
槍では弾けなかったし、体さばきで躱す時間は無かったのだ。

その一瞬の隙が、ヴァンを懐まで入り込ませた。
槍の攻撃範囲の更に内。気付いた時には、ヴァンがダガーを突き出していた。

――ギィンッ――

ダガーを、どうにか武器負いは弾いた。槍の柄で弾いたのだ。
間を置かずに十手型の短剣が繰り出される。それも槍の柄で受け止める。
迫り合い。だがすぐに、武器負いがヴァンの腹を蹴飛ばし、距離は開いた。
まともな防具を身につけていなかったヴァンは、腹への攻撃に呻き、地に崩れる。

「そこじゃあァッ!!」

武器負いが、背中の斧を抜いた。
振り下ろす要領で、それをヴァンへと投げつけた。
ヒュンヒュン、と斧が凄まじい勢いで迫る音が、ヴァンの耳にも聞こえた。

「ガァッ!」

渾身の力で、ヴァンは跳ぶ。
どうにか、避けられた。
だが武器負いが迫ってきていた。
槍を振るい、叩き下ろす。

――ギィンッ――

「ぐあぁぁあッ……!」

ヴァンが呻いた。
どうにか、槍をダガーで防いだ。
だがそれでは槍の勢いを殺しきれず、足に食い込んだのだ。

すぐさま武器負いは槍を引き、更なる一撃を加えようとする。
そこへ、ヴァンはダガーを投げた。

――ジギンッ!――

「効くか!」

ダガーを、武器負いは槍で弾いた。
その隙をヴァンは見逃さなかった。

懐へ手を伸ばし、取り出すは小麦粉袋。
それを思い切り武器負いの足下へと投げつけたのだ。
小麦粉に、武器負いの視界が覆われる。だが些細な量。すぐに晴れるし、阻害される範囲もそれ程ではない。
だが、ヴァンではそれでも十分だったのだ。

閃く切っ先。
煙幕の向こうから現れたそれに、咄嗟に武器負いは喉を防御した。
だが切っ先は喉元ではなく、足を狙っていたモノだった。
全く予期していなかった場所を突かれ、反応できず、武器負いは足を刺された。
崩れ落ちる。両者共にだ。

「小童、貴様ァ……。
 最初から儂を殺すつもり等、無かったか」

「アンタの娘は、同志なんだよ。
 その父親のアンタには、恩赦をする必要があるんだ。
 アンタ、軍人だからつって政治わかんねぇフリすんなよ……?」

「傭兵風情が、政治を語るとは」

話す内、周囲を兵士達が取り囲み始めた。
武器負いは最後には恭順の意を示したので、ヴァンと一緒に担がれて連れ出される。
外で守っていた武器負いの娘が、父親の姿を見るなり駆け寄ってくる。

横目で見ながら、ヴァンは自分の方にやってくる人影に気付いたのだった。

やはりストーリーはありませんが、黒衣の男と繋がりがある様にも思えますね?
終わりにつきましては、好き勝手やる野郎2人にも結局待つ人はいましたよ、という落ちです。
評価
ポイントを選んで「評価する」ボタンを押してください。

▼この作品の書き方はどうでしたか?(文法・文章評価)
1pt 2pt 3pt 4pt 5pt
▼物語(ストーリー)はどうでしたか?満足しましたか?(ストーリー評価)
1pt 2pt 3pt 4pt 5pt
  ※評価するにはログインしてください。
ついったーで読了宣言!
ついったー
― 感想を書く ―
⇒感想一覧を見る
※感想を書く場合はログインしてください。
▼良い点
▼悪い点
▼一言

1項目の入力から送信できます。
感想を書く場合の注意事項を必ずお読みください。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。