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欺王ジル・ブラインド

 広々とした宮殿内。

 僕は数名の兵士に囲まれ、王の間まで向かった。


 辺りを見回すと薄着の女性たちが目に止まる。

 皆派手な装飾を着こなし、僕を奇異の目で見ていた。


 宮殿の一番奥にさらに開けた場所が見えた。

 そこにふてぶてしい態度で肘をつきながら座っている一人の王を発見する。


「あー、頭いてぇ……。おい、ギジュライ。あいつか? お前が言っていた異世界人ってのは」


 機嫌悪そうに隣に立つギジュライに話しかける王。


「左様でございます、若。お話は直接、あの者からお聞きください」


 王とギジュライからかなり離れた場所で兵士は立ち止まる。

 僕もそのまま立ち止まり、王の言葉を待った。


「そこじゃ遠いだろ。もっと近くに寄れ」


「はい」


 後ろに立つ兵士が口を出そうとしたが、ギジュライの睨みにより押し黙った。

 部下としては王の近くに不審者を近づけたくないのは道理だろう。

 僕はゆっくりとした足取りで王の前へと向かう。


「……確かにこいつは《者の力パーソナル》を宿していないな。俺はこの国の王、ジル・ブラインドだ。お前、名は?」


日高焔ひだかほむらといいます。今日は王にお話があって、女神に召喚された宮廷からここまでやってきました」


 僕の口から『女神』という言葉がでると、また兵士らからざわめきの声があがった。

 僕は気にせずに先を続ける。


「まずは、これを」


 さきほどギジュライに見せたように、『曲者』の召喚石を王に見せる。

 一瞬、眉をひそめた王だったが、次の瞬間、急に高笑いを始めた。


「くく……くははは! なるほどな! ギジュライがお前をここに通すわけだ!」


 宮殿内に王の笑い声が木霊する。

 僕は無表情のまま、彼が笑い止むのを待った。


「……で? 褒美は何がいい? 紅玉か? それとも幹部の地位か? 望むものをなんでもやろう」


「若。まだ結論を出すのは早いと思いますが」


「はぁ? とうとうボケたかギジュライよ。異界の者がこうやって『曲者』の召喚石をわざわざ俺のところに持ってきたんだ。『欺王』である俺にとって、それがどういう意味か忘れたわけではあるまい」


 興奮気味にそう話した王は、そのまま玉座から立ち上がった。


「ホムラ、と言ったな。まず聞こう。お前はどうやって《者の力パーソナル》を宿した戦士を倒すことができた?」


 王の質問に、僕は一瞬躊躇する。

 僕の持つ『拒絶の力』のことを話すべきか。

 出来ればこの能力は秘密にしておきたい。


 しかし、相手は『欺きの王』だ。

 下手な返答をしてしまったら最後、この場で処刑されてしまう可能性もある。


「……これを」


 僕はポシェットからもうひとつの召喚石を取り出した。

 女神に与えられた、《者の力パーソナル》を宿していない、ただの石ころを――。


「ほう……? 貴様も女神から召喚された戦士のひとりというわけか。しかし、この召喚石には力が宿っていない。そもそも女神から召喚石を渡された時点で、戦士の身体と融合するはずだからな」


「はい。王の仰るとおり、僕には《者の力パーソナル》が開花しませんでした。それが理由で女神の宮廷から追放され、路頭に迷い、ここまでやってきたんです」


 正直に話すことに決めた僕は、王の目を見てそう話す。


「《者の力パーソナル》の宿らなかった者が、《者の力パーソナル》を宿した者を殺害した、と?」


 王の横に立つギジュライが続けて質問してきた。

 やはり隠しておくわけにはいかない、か――。


 僕はその場にかがみ込み、宮殿の床に掌を翳す。

 そして軽く殺意を込め、念じた。


「! これは……!」


 宮殿内にどよめきが走った。

 手を翳した床の周囲1メートルほどがドーム状に溶けていく。


「……若」


「くくく……くははは! こりゃとんだイレギュラー・・・・・・だな! 女神も馬鹿なやつだぜ! おもしれぇ! お前、おもしれぇな……!」


 急に腹を抱えて笑い出した王。

 なにが一体、そんなに可笑しいのか僕には理解が出来なかった。


「その顔はおぬしも気付いていないようじゃな。それは《者の力パーソナル》でも《王の力キングダム》でもない……《王者の力マスター》じゃよ」


「《王者の力マスター》……?」


「ああ、そうだ! お前もこの世界に20人の『王』がいることぐらいは知ってるんだろう? そして女神が異界から召喚する戦士も20人……! そのどちらかが勝利し、《王者の力マスター》を得た者が、この世界の『真の覇者』たる資格を得られるんだよ……くくく……!」


 涙を堪えて笑いながらギジュライに続く王。

 僕の『拒絶の力』が《王者の力マスター》――?


「まだ本来の力を覚醒してはおらぬようだが、おぬしはいずれその召喚石と融合し、強大な力を得ることになるじゃろう」


 笑い転げている王に視線を向け、溜息交じりにそう答えたギジュライ。


「……あー、久しぶりに笑わせてもらったぜ。女神の野郎、ざまぁみろってんだ。あの年増女はいつかぶっ殺してやろうと思っていたところだ。世界の政権を俺ら『王』に奪われてから、何百年もしつこく付きまとってきやがって」


 ようやく笑い止んだ王は玉座に座り、大きく息を吐いた。


「話を戻すぞ。お前が『曲者』の野郎を殺して、召喚石を奪ったのは分かった。で、俺に会いにきた目的はなんだ?」


 さきほどとは打って変わり、真剣な面持ちで僕に視線を向けた王。

 ひとつ大きく深呼吸をした僕は、用意していた回答を述べる。


「僕の目的は、残り19人の《者の力パーソナル》を宿した者を、全員殺すことです。そのために、力を貸してほしい」


 そこまで言い切り、王の回答を待つ。

 しかし、口を開けたまま王は何も発しない。


「……これはまた、予想外の答えですな」


 頭を抱えたギジュライはそう呟いた。

 そして僕を厄介者でも見るような目で見て、大きくため息を吐いた。


「……くくく……くははははは!! おい、聞いたか! やっぱおもしれぇぞこいつ!! 召喚された残りの戦士を全員殺す……? やべぇ、超おもしれぇ!」


「……若」


「いいぜ! 協力してやんよ! こんなおもしれぇこと、黙って見過ごすわけにはいかねぇだろう!」


「……はぁ」


 再び大きくため息を吐いたギジュライ。

 もはや諦めたような様子で、僕の前にゆっくりと近づいてくる。


「王がああ仰ったのだ。これによりホムラと『欺の国』は正式に契約を交わすことになる。当然、こちらも相応の見返りをおぬしに求めることになるが、よいかな?」


「はい。見返りとは、これのことですね?」


 『曲者』の召喚石を取り出し、ギジュライに渡す。

 僕にはもう必要のないただの石ころだが、きっと王には大切なものなのだろう。


「宜しい。皆の者! 宴の準備じゃ! 欺王ジル・ブラインド様の王者の儀と、同志となるホムラの祝典をあげるぞ!」


 ギジュライの言葉に沸き立つ兵士と女たち。

 


 こうして僕は、クラスメイトを確実に殺すため、『欺の国』と契約を結んだ――。



















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