ドッジボール大会〈エア編〉
切りのいいところまでレポートを終えて、ドッジボール大会の観戦に向かう。ハルトが一生懸命に頑張る姿を見てみたい。まぁ、勝ち残っていたらの話だが。あいつは鈍そうだからな。少し心配だ。
講堂に入り、色々な所に違和感。目の前で繰り広げられている戦闘と、床下に配置されているカメラ。あれ? ドッジボールは? いくら知恵の神様の僕でも理解できない状況だ。ふとユムアを見つける。ハルトがユムアの膝を枕にして眠っている。……何だかやるせない気分になる。
床下のカメラを避けながら、ユムア達に近づく。ユムアに向いて声を掛ける。
「ドッジボール大会はどうなったんダ?」
「えっと……。未来さんとシバルさんの戦いで決着がつくみたい」
「はぁ?」
ユムアから詳しく事情を伺う。成る程、あいつがシバルか。子どもが儀式を使用せずに、神力だけで大人になるなんて話は聞いたことがないが……。不可能ではないのかもしれないな。ただ多量の神力が必要になるだろう。普通の者では到底無理だ。
未来とシバルの戦闘は凄い。周りに被害が及ばないよう結界を貼ってはいるが。もしも、結界がなかったら、かなりの被害が出ているだろう。世の中には、こんなにも強い奴らが存在していたのか……。本当に神外だな。
いくら結界を貼っているとはいえ、地響きは絶えない。ズンズンと鳴り響いている。そこに観客の騒ぐ声。もの凄く空気が白熱している。魔王やラレス、ワイバーンまで応援に必死だ。どちらを応援しているのだろう? ラレスはきっとシバルだろうな。あいつは未来の事が嫌いだから。
それにしてもこいつら、試合内容を誤解していないか? 本来は、相手にボールを当てた方の勝ちだったよな? よく見ると、ボールだった物は、今や朽ち果て黒い炭になって地面にしぼんでいる。もはや使い用途がわからない。
シバルは赤い槍を、未来は緑の剣を。手に持ち、相手に振りつける。二人を見る限り、かなり本気だ。手を抜ける相手ではないらしい。と言っても、別に殺意を抱いた殺し合いではない。あくまで腕比べ、相手を負かすことを目的とした試合だ。
未来が剣を振りおろし、シバルが槍で防ぐ。未来が引き下がった所で、シバルが槍先をぶっ放す。シバルの槍は神力で作ったものなので自由自在。槍先が飛んで行ったところで、すぐに再生。槍が消失したところで、すぐに再生。神力が尽きるまで、いくらでも作り出せる。
未来の剣は……どうなのだろう? まず、未来が神であるのかどうか。その辺りから疑わしい。ハルトが言うには、未来はハルトの師匠であり、ハルトと同様の能力を持つ。それ以外の詳しい説明は本人から聞いてくれということだ。未来に聞いたとしても素直に答えてはくれないだろう。だから、僕も無駄な質問はしていない。
シバルが未来に槍を投げつける。そのまま後ろに下がり、両手の指先を合わせて呪文を唱える。すると、シバルの周りにいくつもの赤い球体が現れる。数が急増する赤い球体。あれはもしや……爆弾か? 未来が騒ぎ出す。
「こんな狭い所で爆弾テロは止めてよね!」
「いいじゃないですか。どうせ被害にあうのは未来さんだけですし」
「『紅の流星群』の名残かな? 酷い戦闘方法だね」
「あ、そのあだ名は使わないで下さい。色々と誤解されますから」
「何言ってるの? ある闘技場で……」
「スイッチオンです!」
激しい爆発音と共に、結界の中が土煙で舞う。あの二人は大丈夫なのか? いや、大丈夫だな。シバルは無論のこと。未来は狭間という場所に飛んでいるのだろう。僕が考える中で、一番効率のいい回避方法だ。
それにしても、『紅の流星群』って……。確か、闘技場の伝説を作った人物じゃなかったか? たった一人で百人もの神を滅多打ちにしたという話……。まさか、死神賢者のシバルが? まぁ、こいつらの戦いを見る限り、そうであったとしても不思議ではないな。
案の定、土煙が治まり、未来の姿がなくなっている。それに気づいて、シバルが首を傾げる。
「あれ? 未来さん、逃げちゃいましたか?」
「誰が逃げるか!」
シバルの背後に、未来が出現だ。剣を横に薙ぎ払い、シバルに直撃する。にもかかわらず、シバルは吹っ飛ぶどころか。平然とその位置をキープしている。剣はシバルを突き抜けて、空気を切るように宙を舞う。シバルが笑顔で一言。
「通り抜けです」
「ズルイし! その技を使われたら、俺に勝ち目ないじゃん!」
「未来さんだって、狭間を利用しているじゃないですか! 大体、通り抜けにだって時間制限があるんですよ。狭間移動なんて、いつでも利用可能じゃないですか!」
「調子が悪かったら、できないし。そっちなんて、神力がある限り、何でもありじゃん!」
子どものような喧嘩。そんな中、目覚めるのはハルト。不満そうに口を開く。
「さっきからうるさいですよ。せっかく気持ちよく寝ていたのに……」
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