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ドッジボール大会〈ラレス編〉
 ちびっ子と喧嘩をして、余計にイライラする中で。決勝戦が始まる。と言っても、あたしとは無関係よ。あたし達は準決勝で負けたんだから。これも全部、ハルトのせいね。
 始まる決勝戦は、黒コートのいるチームといないチーム。黒コートのいない方を応援したくなる。他の人には悪いけど、黒コートが勝つところなんて見たくない。

 ゲームスタート。序盤は黒コートのいないチームが優勢だったけど。中盤に差し掛かり、形勢が逆転する。黒コートの様子を見る限り、お互いの内野人数を常に均一に保とうとしているみたい。最後だから気取っているのかしら?

 徐々に人数が減ってきて、残りの内野は両チームとも一人ずつ。もちろん、一人は黒コート。もう一人は相手チームの女の子。不意に黒コートが逃げ腰になる。

 どうしたのかしら? あいつなら、一瞬にして相手をアウトにできるはずなのに……。まるで何かを待っているよう。試合をしながら上の空。数分経過して、黒コートが反応する。

 やっとのことで相手のボールをキャッチして、投げずにそのまま棒立ち。皆が首を傾げる中、突然にボールを投げつける。相手チームの女の子に向かって、恐ろしい程の豪速球を。

 皆が驚き仰天する。もちろん相手チームの女の子も。あんなのが当たったら、アザじゃすまないわよ。向こうの女の子はビビって、キャッチできそうにない。あたしが蒼白していると。相手チームのコート内に、突然に何かが降ってきた。

 ボールに直撃、地面をえぐる。一瞬だったから、初めは何なのかわからなかったけど……。よく見ると、槍みたい。多分、神力で作ったもの。その後、もう一つ何かが降ってくる。それが相手コートに着地して、口を開く。

「お久しぶりです。未来さん。いきなりこういうことを言うのもなんですが……。危険すぎますよ! 何を考えているのですか!? 下手したら、怪我人が出るじゃないですか! あんなに速い球を投げて。女の子に怪我なんてさせたら、あなた最低ですよ! わかっているんですか!?」

 ギャーギャー喚きだすのは、黒フードの男。黒コートと並んで、結構イケメン。誰だったっけ……? どこかで見たことがあるような気はするんだけど。黒コートが楽しげに、黒フードに言う。

「相変わらず元気だね。何だか説教じみてきてない? 先生をやり過ぎて、ジジ臭くなってきてるよ。もう歳だね、シバ君。そろそろ寿命かな?」
「うるさいですよ! あなたは毎度毎度、荒らし過ぎなんです! 大体、あなたが来たから、ややこしい話になって。こんなことになり、大変なことになっているんじゃないですか。少しは反省して下さい」
「初めにいらないことをしたのはどこのどいつだ?」

 二人が睨み合い。何なの? この展開は? っていうか、あいつ誰よ? あたしの心を呼んだのか、誰かが同じ質問をする。

「この人は誰? 未来の友達?」
「あ、申し遅れました。僕はシバルと言います」

 黒フード……シバルがお辞儀をしながら答える。シバル? シバルって、まさか……。質問をした子が続けてシバルに話しかける。

「シバルって……。死神賢者のシバル?」
「はい、超劣等生で有名でした。神光祭の事件が起きるまでは……。あの時の僕は何を考えていたのでしょうね? まさか虹色バリアーを突っ切るなんて。せっかく地味な生活を送っていたのに。あの事件以来、一変ですよ。どうして僕のグッズが販売されているのですか? 人権無視は酷いですよね。誰があんなことを始めたのか……」
「いやぁ~、いい商売だった。おかげで大儲けできたしね」と黒コート。
「犯人はあなたですか!?」

 シバルが黒コートの胸倉を掴んで振りまわす。じゃれ合う二人に別の子が問いかける。

「え? でも、シバルって子どもじゃないの? 店で売ってるグッズは子どもの姿だけど……」

 その子が携帯を取り出して、ストラップを見せる。子どもシバルのストラップ……。女の子の間で爆発的に売れている、人気商品の一つ。

 あたしはそういうものに興味ないから、持っていないけど……。十人に八人は最低一つシバルグッズを持っている。凄い子なんて、シバルグッズを全部集めているどころか。コスプレをしている子だって普通にいる。

 質問を聞いて、黒コートが話しだす。

「子どもだよ。子ども。神力を使って、無理やり大人になってるんだよ。こいつはこれでも神力が、大人神様の平均神力の八十七倍あるそうだから。劣等生のくせに生意気だよね」

 八十七倍? 何、その数字? しかも、神力を使って子どもが大人になるなんて。普通に考えたらあり得ないわよ……。どうにも信用に欠ける話ね。黒コートの話を聞いて、皆がうさんげにシバルを見る。本物なの? 疑心的な目つき。

 黒コートがシバルに向く。

「皆から一言『お前、本物か?』だって。凄く疑われているね」
「何ですか? あだ名で登場した方が良かったのですか? 僕的にはそれでもいいかなと思っていたのですけど、あだ名が思い付かなくて……。本名を名乗ってしまいました」
「子どもに戻ってみたら? すぐに信用されるよ」
「面倒ですよ。それなら一層の事、未来さんとバトルしましょう。最近、ストレスが溜まっていて。大暴れしたい気分なんです」
「いいよ。ドッジボールの続きだね。ボールに当たった方の負け。っていうか、シバ君が来るの遅かったから。ドッジボールも終わりそうだし。一対一の勝負になるよ」
「それ以前にボールが死んでますよ……」

 シバルが槍の刺さったボールに近づく。シバルが槍に触れると、槍が消滅する。残ったのは穴があき、空気が抜けたボール。シバルがそれを拾い上げ、黒コートに手渡す。

「どうしましょう?」
「それはシバ君が悪いよ。俺は知らないもん」
「何を言っているんですか? 半分は未来さんのせいです」
「じゃあ、他のボールを使おうか」
「直さないんですか?」
「面倒くさいもん」
「…………」