お買い物〈その3〉
そういうわけで、戸惑うエアさんを引っ張って、洋服店に向かう僕達。ユムアさんと未来さんは用事があるため同行できないらしい。僕にシナ、ライさん、エアさんのメンバーで歩いている。
洋服店に到着して、中に入ってみる。ぐるりと一周してみて、目ぼしい物を覚えておく。エアさんに似合いそうな服は……。落ち着いているけど、華やかな感じの……。何て言うか少し遊び心があるような。
あれもいいな、これもいいな。あ、こんなのも似合いそう。眺めていたら、どんどん入り込んでいく僕。こういう何か物を選ぶのとか大好きだ。どれが最適か思考しながら調べていく。
ついでにシナの服も探してみる。シナの場合は、そうだな……。幼稚すぎず、派手すぎず。子どもでも大人でも違和感がないような……。そんな服がいい。探してみると、なかなか良いのが見つかる。これは後でもう一度確認しよう。
不意に目に留まるのは可愛いスカート。ちょっと地味だけど、エアさんに似合いそう。これと、これと、これで組み合わせたら、カッコイイだろうな。想像してみる。う~ん、でも女の子なのだし。もう少し華が欲しいところ? 使い勝手は良さそうだけど……。
やっぱり本人に着てもらってから考えよう。路頭に迷うエアさんを呼び止め、試着してもらう。試着を終えたエアさんが登場。気恥ずかしそうなエアさんを見ながら、僕とライさんが感想を述べる。
「思った以上に、似合いましたね。凄くカッコイイです」
「ご主人、服選びのセンスがありますな。これは本当に似合っていまする。故に、一着は決まりましたな」
「そ、そんなに似合っているのカ? 僕にはよくわからないガ……」
自分の格好を鏡で見ながら、首を傾げるエアさん。普段からこういう服選びをしないためか。何が自分に似合う服かをよくわかっていないらしい。何度も鏡を見ながら、自分の姿を確認している。
次はもう少し明るめの服を揃える。これも良い物が見つかり、晴れやかな気分になる。二着決まり、三着決まり、四着、五着……。エアさんが不安そうに僕を見ている。心の中は聞かずともわかる。お金は大丈夫? その心配だろう。
大丈夫、問題ない。僕はバグっているのだ。やろうと思えば、どこからでも掻き集めることができる金の山。しかも、未来さんは大手会社の社長だし、ニートさんは何だかんだ言ってお金持ち。あの辺りから、むしり取ればいいと思っている。
エアさんの服を揃えて、次はシナの服選びだ。これもなかなか良い物が手に入る。五着程買ってみた。シナも大満足で、今日の買い物は大成功だ。
満足げな僕が会計を済ませていると、どこからともなく奴が現れる。予想はしていたものの。まさか、本当に……。奴の名……それはマティー。マティーが僕に飛びついてくる。
「ハルト様~! お洋服をお選びなのですか? マティーもお手伝いさせていただきますのです~!」
「いえ、もう決まりましたから」
「ハルト様にお似合いのお洋服は。これとか、これとか、これも素敵なのでありますです!」
どこから取り出したのか? 男用のファンタジック洋服。ファンタジックっていうか……。もう何か世界観間違えてない? あなたはどこの住人ですか? きっと別世界の住人でしょ? 質問したって、口では答えてくれないだろう。マティーは常に行動派だ。行動で答える。要するに……。あー! 止めてー!
マティーが僕を抑えつけ、服を脱がそうとする。叫びまわる僕。ライさんが乱入して、マティーの暴走を制御する。乱れた服を直しながら、シナの後ろに隠れる僕。マティーに向いて、口を開く。
「相変わらず、ハチャメチャですね。一体、あなたは何なのですか? まずは口で説明して下さい。行動に出るのは最後でお願いします」
「マティーは可愛いハルト様を一目見たくて。ハルト様のために、たくさんお洋服をご用意させていただきましたのですよ。ですから、お着替えを~」
駄目だ、逃げ切れない。マティーの目を見れば一瞬にして理解できる。今日のマティーは超暴走型だ。目が異常なまでに輝いている。こういう時は逃げられない。付き合ってやる他に解決法が見当たらない。僕が諦め、マティーに言う。
「わかりました。お付き合いしますよ。ただ……無理やり着替えさせようとするのは止めて下さい。一人で着替えられますから……」
「今日のハルト様はいつに増してもお優しいですね。マティーの愛が伝わりましたのですか?」
「愛も優しさも在庫不足です。今は諦めしか販売していませんよ」
「それでは、まずこのお洋服から……。あ、やっぱりこれから……。それとも、こっちから?」
僕の話を無視して、マティーが服を取り出していく。大量の服を僕に手渡し、満面の笑みだ。え? これ全部着るの? 気分降下中の僕が更衣室へと足を向ける。
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