診療所
食事を終えた後。しばらくの間、中庭にて三人で駄弁る。中庭にある時計が九時を打ち、そろそろ移動だ。今日は健康診断の結果を聞きに行かなくちゃいけない。
僕達は立ち上がり、診療所へと向かう。たくさんの人々が集まる公の場なので、この城の中にはそういった施設がいくつも存在する。他にも訓練施設や図書室、サロンやインターネットカフェなど色々ある。有料から無料まで、値段も均一していない。
だから、常に財布は所持。中身も確認しておかないと、後でえらい目に遭う。神様だからって、お金に寛容なわけではないらしい。案外にケチな人が多い。まぁ、別にお金には困っていないのでいいのだけど……。
診療所の前に行き、中に入る。カウンターで受け付けを済ませ、順番を待つ。僕達の順番が来て、奥へと進む。奥の扉を開けると、そこにはクールに見える女性。
この人はカルナさん。医者の神様で、冷たそうに見える割には案外に優しい。初めは怖い人かと思っていたけど。シナが病気になり、お世話になって以来。よく話をするようになった。
親身になって相談に乗ってくれるし。ちょっと変わり者の僕達に対して、色々と配慮してくれる。ただ、説教が長いのが難点だ。カルナさんが僕達に向く。
「あぁ、お前達か。診断結果は出ているぞ。ちびっ子とワイバーンは問題ない。これが結果だ。問題なのはハルトだな。色々と聞きたいことがある。それと、お前……視力検査はまだだったな?」
「あぁ、はい、そういえば……まだですね」
「よし。じゃあ、ちびっ子とワイバーンはもういいぞ。外で待っていてくれ」
ライさんが診断書を受け取り、シナを連れて部屋から出ていく。それにしても、健康だけが取り柄な僕なのに、何の問題があるのだろう? 二人が出て行くのを見届けてから、カルナさんが僕に言う。
「おい、ハルト。診断の結果を見る限り……お前は死人になっているぞ」
「成る程。通りで最近、調子が悪いわけです」
「ふざけるのは止めろ。ほら、ここを見てみろ」
カルナさんが僕の診断書を指差す。
「神力がゼロだなんて神はまずいない。神力がゼロになると、神は死んでしまうからな。それなのに、お前の診断書はゼロを指しているぞ。どういう意味だ?」
あぁ、成る程。僕が神様ではないということを、この人は知らないのか。というか、ここへ来て以来、そういう話はしていない。だって、誰も聞いてくれないから、言う必要がないんだ。別に言いたくないわけではない。僕がカルナさんに言う。
「僕が神様ではないとうことでしょうね」
「初耳だが」
「聞かれなかったので、言わなかったのですよ」
「そうか……。神でないのなら、お前は何なんだ?」
「う~ん……とりあえず、生き物でしょう」
人間でもないし……。しいていうなら、化け物か? まぁ、生き物ではあると信じたい。カルナさんが眉をしかめる。
「とりあえず、生き物では何なのかわからない。もっと具体的な答えはないのか?」
「魔物? 化け物? 人間ではありませんね。元は人間でしたけど……」
正直に答える。僕の説明に、無理解を示すカルナさん。じれったいので、話を進めよう。僕がカルナさんに問いかける。
「神力以外は問題ありませんか?」
「あぁ……いや、もう一つ。特殊力と魔力が異常なまでに高いのだが……」
「それはいつものことだそうです。僕の師匠が言っていました」
「…………」
考え込むカルナさん。よし、このまま視力検査をスルーして出て行こう。視力検査なんてしたら、左目が見えないことがバレてしまう。これ以上、カルナさんには心配を掛けられない。適当に話を流しながら、診断書を貰って、部屋を出る。
カウンターにてお金を払い。シナとライさんを連れて、外に出る。カルナさんは無料でいいと言ってくれるけれど、流石にそういうわけにもいかない。気持ちだけありがたく頂いておく。
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