治安改善法〈ニート編〉
う~ん、ハルトは真面目だなぁ~。前回主人公と比べたら、大幅にシリアスな展開が増えている。前回は主人公が不幸になれば成る程に、爆笑できる話だった。やっぱり主人公の性格特性が出るなぁ~。ストーリーってこういう物か?
俺が腕を組んでいると、懐かしい声が聞こえてくる。扉を開けて、入って来た奴が言う。
「すみません、お邪魔します。未来さんはいらっしゃいますでしょうか?」
「おーっと、役立たずの向こう『橋』じゃないか。何しに来たんだ、シバル?」
「役立たずは言い過ぎでしょ? 僕だって、仕事さえなければ他の事を色々とできるんですよ。でも、高校三年生を担任にもつ教師ですからね。皆の進路やら成績やら、色々と相談に乗って。夏期講習もありますし。真面目に時間がないんですよ。いつもお暇なニートさんが羨ましいです」
「お前、死んでこい」
笑顔でシバルに言ってやる。現在は大人の姿だが、元々は子ども姿の死神だ。こいつは神様の中では二番手に強いと思われる。要するに、ジジイの次に強い奴だ。未来とハルトは除外しているぞ。あれは神様っていうか……。まぁ、別ジャンルだろう。
ちなみに、神様は子どもから大人になるために、儀式が必要だそうだ。その儀式には個人の能力を認められる必要があるが、こいつの能力は人殺し。過去に何があったかは知らないが、こいつは能力を使わず、劣等生を千年程続けていたらしい。
そんな中、大昔に無茶苦茶な修業をして、神力を鍛え上げ。子どもながらに、大人以上の力を身に付けたという。儀式を使わずに大人になったり、壁抜けができたり、空を飛んだり。神様を超えた超人である。外は劣等生、中身は天才。そして、犬が苦手。
どこからともなくシバルが紙袋を取り出して、俺に手渡す。
「この間、未来さんにミカンを頂いたので。お返しにと思い、持ってきたのですが。とりあえず、ニートさんに渡しておきますね」
「おお、ありがとう」
中身はヨウカン、お茶をくれ。言わずとも、シバルが茶を入れ出す。流石、元主婦。悲しい程に身に付いた、茶を入れる習慣だ。お茶とヨウカンを並べて、シバルが席に着く。
「そういえば、未来さんはどこですか?」
「お前の所だ。ハルトとの援助に向かった」
「援助って……何か困ったことでも?」
「あぁ、ハルトの苛め対策だ」
「えぇ!? 何ですって!?」
あ、やっば……。変な事を言ってしまったみたいだ。未来はシバルにそういった話をしていなかったのか……。それなら、先に教えておいてくれよ。シバルから、目を逸らす俺。シバルが問いかけてくる。
「ちょっとどういうことですか!? 詳しく説明して下さい!」
「いやぁ~、何て言うかなぁ~。ちょっと……なぁ~」
「具体的に何が起きているんですか!? ニートさんは全部知っているんでしょ? 僕にも教えて下さい! 嫌なら、その本を奪い取りますよ!」
シバルが俺の本に手を伸ばす。もちろん、避ける俺。これを取られたら、俺が本の神様から離脱しなくてはいけない。嫌だ、そんなの。俺は本の神様になるんだ。シバルの手を避けながら、言ってやる。
「まぁ、待て。最強未来様が手を貸してくれているから、問題はない。今はやっと落ち着いたところだ。お前が手を出すまでもないと思う。というか、お前は忙しいんだろ? お前は他の奴らの勉強を見てやれ。後は未来様がどうにかしてくれるだろう」
「ちょっと! 僕は向こうの『橋』ですよ! 異界の力に取りつかれたハルトさんを守る義務があります! だから、教えて下さい!」
「あまりうるさいとワンワン持ってくるぞ」
「犬なんていりませんよ! 怖いじゃないですか!」
「じゃあ、大人しくしろ」
「…………」
不満そうなシバル。俺を睨みつけてくる。しかし、ここでこいつを送り込んだら。ゴタゴタになってしまう。何せこいつは有名人だ。前回に、ちょっとバカな事をしでかして、劣等生でありながら超人であることがバレてしまった。今や神様業界では、こいつのグッズを販売している程だ。女性に大人気商品である。
シバルが膨れながら言う。
「別にいいですよ。また個人的にウェウェじいの居場所を調べますから」
「止めておけって。お前が乱入すると、ややこしいだろ。ハルトとお前が知り合いだということが皆に知られ、そこに未来が乱入しているんだから、ごちゃごちゃになる。ハルトのストレスが最高潮まで向上するぞ」
「そんなことありませんよ。逆に、苛めがなくなるかもしれません。今や僕は人気者ですからね。僕とハルトさんが知り合いだとなると、僕目当てでハルトさんに手を出せなくなるかもしれません」
「しかしな……。あまり目立つと軍事関係者に存在がバレるぞ……。それでなくても、能力が特別なんだから……」
「軍事関係者って何ですか!?」
ヤバい展開だな……。話せば話す程に、シバルに情報が漏れてしまう。もう、お口チャックだ。これ以上は喋らない。ヨウカンを食べながら、テレビを付ける俺。シバルが隣で喚いている。テレビの音が全く聞こえない。相変わらず、うるさい奴だな……。
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