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食堂
 着替えを済ませて、食堂へと向かう。廊下を歩きながら、朝から元気な二人の話を聞く。それにしても、どうしてこんなに広いのか。
 正直に言って、無駄だと思う。移動に時間が掛る上に、掃除が大変だ。一度きりの観光旅行とかならいいかもしれないけれど、毎日がこれだと妙に疲れる。

 食堂前へと到着する。今日はご飯を貰えるかな? 期待しないで中に入る。朝の食堂はセルフサービスだ。美味しそうな料理が順番に並べられている。早朝だからか、そんなに人はいない。何人かの女の子が料理を前にして駄弁っている。不意に声が聞こえてくる。

「またあんたなの? あんたに作る料理はないわよ。さっさと出て行きなさい」

 横を向くと、ツインテールの女の子。案の定、ツンデレだ。今の所、ツンの部分しか見ていない。これもよくある設定だ。
 漫画とかなら可愛いと思うかもしれないが、現実で会うとマジでムカつく。一度くらい怒鳴り返してやりたいけれど。僕の性格上、それはできそうにない。

 名前はラレスさん。料理の神様で、この食堂の料理長。なぜか僕を毛嫌いしている。理由は思い当たらない。僕は何もしていないつもりだけど……。仕方がないから、シナを抱き上げ、ラレスさんに向ける。

「シナはいいでしょ? いつも通りお願いします」
「ダメよ」
「どうしてですか?」

 流石にムッとする。シナには美味しい料理を食べさせてやりたい。いつもなら仕方ないって言うのに、どうして今日に限って……。ラレスさんがシナを睨みつける。

「そいつがあたしの料理をマズイって言うからよ」

 え……。シナに目を向ける。ラレスさんを見ながら、膨れている。本当なのだろうか? 僕がシナに問いかける。

「本当ですか?」
「そんな奴の料理など食えんわ! マズイわ! へどが出るのじゃ!」

 シナの言葉を聞いて、ラレスさんの目の色が変わる。手を振り上げ、シナを叩こうとする。反射的にシナをかばう僕。すぐにラレスさんと目が合い、代わりに僕が叩かれる。大きな音が鳴って、ラレスさんが怒鳴り散らす。

「あっち行ってよ! あんた達の顔なんて見たくないわ!」



 そんなこんなで追い出された僕達。とりあえず、食堂から離れる。叩かれた頬をさする僕の隣で、ライさんが怒っている。

「あやつは何なのか!? ご主人に暴行を加えるとは。吾輩が元の姿にさえ戻れたら、一発で伸してやるのだが……」
「あいつは嫌いじゃ! もうここには居とうない!」

 シナが泣きそうな顔をしている。すぐに僕に目を向ける。

「ハルト、前の家に戻りたいのじゃ。狭くても構わん。こんな地獄のような所にいるよりも、よっぽどマシじゃ」
「そう言われましてもね……」

 前の家。それは僕が人間だった頃に住んでいた家だ。こんなお城ではなくて、小さな家。狭い部屋。住んでいるのは僕達と両親と兄貴くらい。そんなこぢんまりとした生活。懐かしい、遠い記憶だ。今では手を伸ばしても届かない。シナの意見に同意だけど、僕の力ではどうしようもない。

 不意にライさんが僕に言う。

「そういえば、ご主人。朝食はどうなされる? いつものように吾輩が買い出しに行きますかな?」
「お願いしてもよろしいですか? 僕は何でもいいので、シナはどうしますか?」
「わらわは野菜以外がよいのじゃ」

 シナが笑顔で答える。僕はそれを打ち砕くように、ライさんに口を開く。

「サラダがあれば買ってきてください。お願いします」
「嫌じゃ~! サラダは嫌いじゃ!」

 喚くシナを無視して、ライさんが去っていく。財布は預けてあるから、大丈夫だろう。後はライさんの直感に任せよう。今日の朝食は何だろうか? 少しワクワクする僕がいる。

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