治安改善法〈その1〉
暗い道。ひたすらに歩き続ける僕。そんな僕に時空が言う。
「どうして止まらないの?」
この先にあるものが気になるから……。
「どうして光を求めるの?」
暗闇を一人で歩くのが怖いから……。
「どうせ辿り着きはしないのよ。そう、それでも歩き続けるの?」
どうして辿り着かないの?
「だってあなたには見えていないもの。そう、本当は目に映っているのに、見ようとしていないのね」
何が見えていないの?
「あなたの本当の姿。そう、それは真実ね」
本当の姿?
「あなたは本当に歩いているの? そう、本当は止まっているのよ」
…………。
「一度、立ち止ればいいわ。そう、そうすれば真実が見えてくるわ」
嫌だよ……。だって、怖いもの。
「怖がる必要はないのよ。だって、あなたは……」
起きあがる。頭が痛い。早朝から気分が最悪だ。最近、悪夢ばかり見るのだけど……。ストレスが原因だろうか? ため息をつきながら、横を見る。
隣には気持ちよさそうに眠るシナ……。なぜか大人の姿……。また夜中に僕の魔力を奪い取っていたらしい。しかも、最近は奪う魔力の量が増えている。だから、朝までに元の姿に戻らないことが多い。
しかも、服が乱れている。コロコロ転がりながら眠るから、服が乱れるのもわかるけど……。ちょっと、もう、はしたないなぁ~。シナの肩を揺らして、起こしに掛る。シナが気づき、起き上がる。寝ぼけがちに僕に抱きついてくる。
「ハルト~、ご飯じゃ~」
「僕はご飯じゃありません。それよりも、その……服を正して下さい。見ていられませんよ」
「ハルトがしてくれ。わらわは面倒じゃ」
「何を言っているのですか。今は大人なのですから、しっかりして下さい」
「ん~」
面倒くさそうにシナが寝転ぶ。しかも、ちょっと……胸が見えそうなんだけど……。流石に見ていられなくなって、シナに布団をかぶせる。五百年は生きているのだから、そろそろ羞恥心くらいは覚えてほしいな。まったくもう……。
ライさんの寝床に目を向けると、既に抜け殻だ。どこかに出かけたのかな? 時計に目を向ける。十二時……。最近は起きるのが遅い。早朝に起きたとしても、することがないので時間が余ってしまうのだ。日付を見ると……。
八月一日
もう八月か……。学校は夏休みに入ったかな。皆はどうしているのだろう? 元気にしているといいけど。といっても、僕のことを覚えている人なんて十人にも満たない。極く限られた人数だ。
本当はもう少しいたけれど……。ウェテオさんが記憶を消してしまった。それは両親や兄貴も同じこと。きっと道で会ったとしても素通りだろう。僕には気づかない。
確か……三月くらいにここに来て。五月くらいに神札を作り、左目が見えなくなったはずだ。そうか……結構、時間が経っているな。ドタバタと慣れない生活を送っていたから、そういうことを考える暇がなかった。
出かける準備をして、椅子に座っていると。ライさんが帰ってくる。ビニール袋にお昼ご飯。美味しそうな昼食の香りに釣られて、シナが起きてくる。ライさんが僕に言う。
「今日は外で買ってまいりました。たまにはこういうのも悪くないと思いますぞ」
「わー、牛丼ですね。美味しそうです」
喜びながら、暖かい袋を受け取る僕。中身を取り出していると、シナがベッドから転がり出てきた。僕の隣に座って、催促してくる。そんなシナに僕が言う。
「まずは服の乱れを正して下さい。それまでこれはお預けです」
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