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治安問題〈その1〉
七月十二日

 起きる……と、もう昼。シナを見ると、子どもに戻っていた。戻っていないと非常に困る。ライさんに昼食を買ってきてもらい。その間に服を着替える。ライさんの帰りを待った後、三人で中庭へと足を向ける。

 足を引きずりながら歩く僕にライさんが言う。

「ご主人、大丈夫ですかな? 顔色が悪いですぞ」
「えぇ……。まさかの漫画設定に付いていけないだけです……」

 今にも眠りそうな頭を回転させながら返答だ。隣では、非常にご機嫌なシナがお弁当を抱えている。あなたが原因なのですよ。果たして、理解しているのだろうか? 

 中庭に到着すると、ユムアさんと目が合った。うろたえるユムアさん。僕達に近づかず、遠くの方へと去っていく。昨日の件が原因だろう。ユムアさんの様子を見て、ライさんが首を傾げる。

「えらくよそよそしいですな。いつもなら近づいてくるのだが……」
「おぬしが何かしでかしたのじゃろ? 飛行物体?」

 シナがライさんに言う。シナの言葉でライさんが怒りだし、二人の喧嘩が始まった。といっても、本気ではない。口喧嘩をしながらも、仲がいい二人だ。
 結局は、七夕祭り以前のメンバーで食事を始める。何ら進展していないな。僕がため息をついていたら、シナが僕にキスをしてくる。



 お昼を食べ終わり、ぼんやりする僕。今日は非常に眠い……。全てはシナが原因だ。僕の魔力を吸い取って大人になったシナが僕に抱きついてくる。

「ハルト! 今日もゲームセンターじゃ! 早く行くぞ!」

 無理……。凄く眠い。立ち上がれそうにない。僕がライさんに相談だ。

「ライさん……。ちょっとしばらくの間、シナと一緒に遊んでやってくれませんか? 僕は……少し……寝たいので」
「はい、かしこまりました。それでは、いつも通りの動きをしてまする。故に、何かあれば適当にお探し下され。すぐに見つかると思いまする」
「はい……ありがとうございます」

 つまらなそうなシナを連れて、ライさんが去っていく。少し……眠ろう。ベンチに横たわり、目を瞑る。心地いい日陰、風が吹き、眠気が増す。そのまま僕を夢の世界に連れて行って……。



「熟睡してるね」
「ねぇ、マジでするの? ヤバくない?」
「別にいいじゃん。お小遣い稼ぎにもってこいだし」

 ……誰?

「それで、魔力と神力、どっちにする?」
「魔力の方が高く売れるよね」
「じゃあ、そっちね」

 ……何の話?

「ねぇ、どれくらい取るの?」
「全部、全部。こんなの残しておいてもしかたないし」
「そしたら、死んじゃうね。まぁ、世界に平和が訪れるから別にいっか」

 ……どういうこと?

 突然、口にマスクをつけられる。そして、声が聞こえてくる。

「はい、スタート!」
「金額にしたら、いくらくらいだろうね?」
「大したことないでしょ? 十万円くらいじゃないの?」

 身体からエネルギーが抜けていく感じ。もしかして、起きなきゃマズイ? だけど、凄く眠くて起きれそうにない……。続く会話。

「十万突破したよ」
「結構あるね。残り残量は見られないの?」
「このボタンで……うっそー!? マジで!?」

 早く取って、このマスク……。誰か助けて、殺される……。途切れる事のない声。

「すっごい高いじゃん!?」
「何、こいつ? 化け物?」
「密度もめっちゃ高いね。ヤバいよ、こいつ。特殊部隊にでも入ってたのかな?」

 お願い助けて……。どうしてこんなことをするの? 盛り上がる会話。

「マジでこれっていいのかな?」
「もしかして、結構マズイ?」
「その辺りのチンピラじゃなさそうだね。でも、ここまで来ちゃったし……」
「じゃあ、魔力を取るのはこれくらいにして。換金したお金を全額、俺に寄付してよ」

 聞いたことのある声。未来さんっぽい……。突然の乱入者で、辺りが慌しくなる。ドタバタと暴れる音が聞こえてきて静まる。不意にマスクが外されて、未来さんの声が聞こえてくる。

「ヤバいね……。このままじゃあ、ハルトンが死んじゃうよ。仕方ない、俺がキスで魔力を……」

 死に物狂いで身体を動かし、起き上がろうとする僕。まるで金縛りを解くように、身体に力が戻ってくる。それにしても、もの凄くダルイ……。元気なく前を向くと、未来さんが目に映る。謎の機械を手に持ちながら、画面を眺めている。未来さんが僕に言う。

「どう? もしも、ハルトンが元気そうなら、この魔力を換金してもいい? 最近の俺は金欠で困ってるの。ポテチすらも買えないんだよ。マジで勘弁してほしいよね」
「ありがとうございます……。でも、それ返して下さい。凄くしんどいので……」
「仕方ないなぁ~。はい、これを付けて」

 未来さんからマスクを貰う。未来さんが機械を操作すると、徐々に身体が楽になる。凄く楽になり、マスクを外すと未来さんに言われる。

「まだ千円分くらい残ってるよ」
「もういいです。充分に楽になりましたから」
「本当に? じゃあこれは貰っておこうっと」

 嬉しそうな未来さん。そんなにお金に困っているのなら、自分の魔力を売ればいいのに……。この人だって、凄いはずだ。そう思いながら、機械を操作する未来さんに問いかける。

「そういえば、どうしてここへ?」
「基本的に魔力がなくなると、生き物は死んじゃうからね。ハルトンが死んだら、俺も死んじゃうし。そうなると、是が非でもここに来るしかないじゃない」

 未来さんと僕の命は繋がっている。片方が死んだら、片方に影響が出るのだ。それは目も同じこと。壊れた時はお互い様。二人して泣き喚くしかない。ぼんやりする僕に未来さんが言う。

「それにしても、ここって治安悪いよね。このままじゃあ、いつか殺されちゃうよ」
「どうしましょう?」
「さぁ? とりあえず、寝るときは部屋で寝ることだね。もちろん、鍵は閉めるんだよ。後、一人で行動するのは危険だね。まぁ、ハルトンは強いから。起きていたら問題ないでしょ?」

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