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突然のお別れ〈ラレス編〉
 朝っぱらから、騒がしい。どうしたのかしら? 走り回る女の子を一人捕まえて、聞いてみる。詳細を抜いて、一言で言えば。ハルトがいなくなってしまったらしい。今後、城には戻ってこないって……。そんな話、初耳だけど!?

 どういうことよ? 混乱する私。そんな中、珍しく放送が流れだす。聞こえてくるのはジジイの声。

「さて、皆の衆。今日のバストは何センチじゃ? 大きい者も小さい者も、わしの好みの眼中じゃ。バストで知りたい事があれば、わしの所へ来るとよい。たっぷりと丁寧に教えてやろう」

 長い前置きを言った後、集会の時間帯を口にする。今日の十二時に、大広間に集合。ハルト消失の件に付いて、語ってくれるはず……。

 十二時までの間、仕事をしようと手をつけるけれど。どうにも集中できずに、手が止まる。十二時の集会が気になってしかたない。他の子達も集中できていないみたい。これじゃあ、仕事にならないわ。

 今日は休みにして、他の日にまわそう。皆に言って、食堂を閉める。十二時まで後一時間。時間を持て余し、気が気でない私。そういえば、あいつなら知っているんじゃ? 
 黒コートの部屋へと足を向ける。何かある度に、あいつに頼ってしまう。だって、それなりに解決するんだもの。



 黒コートの部屋の前。扉をノックするけど、反応がない。合鍵を使って、入ってみようかしら? そんな事を考えていたら、誰かに話しかけられる。

「何してるの? ラレス?」
「あぁ、フレイヤ。ちょっと黒コートに用事があってね」
「未来に用事? ラレスったら、なかなかやるじゃない」
「違うわよ! ハルトの事を聞きに来ただけ」
「な~んだ、てっきり未来といちゃつくのかと思ってたのに」
「誰があんな奴と!」
「そんな事を言って。城中じゃあ、かなり噂になってるよ。二人の仲」
「…………」

 この間の事……。あたしは話していないし、もちろん黒コートも黙っているはず。きっと誰かが適当な事を言って、それが広がったんだと思う。本当に、誰よ? 変な噂を始めたのは? 話を変えるついでに、フレイヤに問いかける。

「それで、黒コートがどこにいるのか知らない?」
「未来なら、診療所だって。寝込んでいるって噂だけど……」
「寝込んでいる? また病気なの?」
「さぁ?」

 首を傾げるフレイヤにお礼を言って、さっさと離れる。フレイヤと一緒にいたら、尋問されそうになるから。今は乗り気になれないわ。診療所に向けて、速足で歩く。黒コートの奴、また無理をして倒れたのかしら? 本当に飽きないわね。

 診療所の前に来て、中に入る。人の姿はない。そういえば、今日は休業日。外の看板にも書いてあったわね。受付に顔を覗かせて、大声で口を開く。

「すみませーん」

 しばらくすると、カルナが出てくる。あたしに向いて、問いかける。

「どうした? 急用か?」
「違うわ。ただ……黒コートの様子を見に来ただけよ」
「あぁ、未来の……。未来なら向こうだ。先程までは高熱を出していたが。今は安静にして眠っている。あまり引っ張り回すんじゃないぞ。また熱が出ると困るからな」
「わ、わかってるわよ」

 カルナの指差す方へと足を向ける。歩いて行くと、ベッドで眠る黒コートを発見。えらく傷だらけで、服もボロボロ。何をしていたのかしら? あたしが眉をしかめても、黒コートは起きそうにない。

 声を掛けても起きない、揺すっても起きない。最後は痺れを切らして、思わず黒コートの頭を殴ってしまう。大きな音が鳴って、カルナの怒鳴り声が聞こえてくる。やっちゃった。カルナがあたしの前に来て、説教を始める。次にこういう事をしたら追い出すと脅された。

 カルナが去って行った直後、黒コートに動きが。目を覚ます黒コート。やっと起きたわね。あたしが黒コートに話しかける。

「気分はどう?」
「身体中が……痛い。なぜか……頭も痛い」
「あ、ごめん。それ、あたしかも」
「病人を殴るなんて……君は悪魔か?」

 もう一度殴ってもいいかしら? だけど、カルナがいるのよね。カルナに追い出されるのは嫌だし。今日は止めておこう。ぐったりする黒コートに質問を投げる。

「それで、あんたは何をしていたの?」
「化け物と戦っていた……」
「化け物? それ、夢の話?」
「いや……リアル」

 どういうことかわからないあたしに黒コートが説明してくれる。長い話。作り話のような話を聞いて、反応に困るあたし。だけど、嘘ではないみたい。黒コートはこんな奴だけど、嘘をつく事はまずない。妙に真面目な部分がある。

 話し終えた黒コートが、今度はあたしに問いかけてくる。

「それで……ハルトは?」
「それがいないのよ。城中のどこを探しても見当たらないらしいの。だから、皆が大騒ぎしているわ」
「そうか……。もう行ったのか……」
「行った? あんた何か知っているの?」
「…………」

 黙り込む黒コート。不意にあたしに目を向ける。すぐに目を逸らして、無理矢理に起き上がろうとする。あたしが注意しても、話を聞かず。何とか身体を起こして、立ち上がる。まるで立っているのが精一杯みたい。かなり辛そう。

 あたしが心配げに見守っていたら、急に肩を掴まれる。ビビるあたしの顔に黒コートが顔を近づけてくる。え? って思った直後、あたし達の唇が触れ合う。脳内停止。驚くあたしから顔を離して、黒コートが決め台詞。

「サヨナラ」

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