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プライベート〈柊編〉
 大杉に怒られて、しょぼくれる俺。そんな俺を慰めてくれるのは桜井だ。青木は俺達の話を聞きながら、笑っている。大杉は未だに文句を言い続け、春日井は状況を理解していない。ニートは遠くで椅子に座りながら、本を読んでいる。お前は何しに来たんだよ? お見舞いじゃなかったのか?

 青木の部屋にて、皆で駄弁る。話のネタは、学校の事や笑い話。暗い話にならないのは、人数が多いためか。それとも、皆がそういう話を避けようとしているからか。

 青木の様子を見る限り、まるで深刻そうにしていない。本当に眼球をもぎ取られたのか? いつも通りに振る舞う青木に対して、問いかけてみたくもなる。不意に青木が口を開く。

「そう言えば、未来さんは? まだお出かけ中ですか?」
「あぁ、狂人を探しに走り回っていると思われる」とニート。
「元気ですね……。もう諦めればいいのに」
「そうかもな」

 青木が驚き声で言って、ニートが返事をする。その後、しばらく日常の話が続き。青木が話を変えてくる。

「すみません……。そろそろ疲れてきたので、一人にして頂けないでしょうか?」
「え? あぁ、悪いな」

 俺が言って、扉に向かおうとしたら。大杉が前に出る。こいつに限って、一番に退場するとは思えない。俺が眉をしかめていたら、案の定。大杉の奴が扉を開けて、停止。外には出ない。ただ……開けただけだ。

 皆がすぐに勘づいて、扉の近くまで足音を立てながらやってくる。そこで停止、外には出ない。要するに、青木を騙そうとしているのである。ニートの奴なんて凄いものだ。足音を立てながら外に出て、足音なしで入ってくる。

 ニートのマネをしようとする春日井を、俺が止めた直後。大杉が扉を閉める。これで俺達は外に出た。そういう事になっているのだが……。青木に向くと、首を傾げている。しっくりしない気持ちがあるのだろう。不意に青木が口を開く。

「皆さん……まだいるでしょ?」

 もちろん誰も喋らない。納得がいかないのか、青木がもう一度問いかけてくる。

「本当にいないのですか? いなかったら、返事して下さい」

 返事をしそうになる春日井を止めて、停止する俺達。青木が不思議そうに首を傾げる。

「おかしいなぁ……」

 初めは不審に思っていた青木だが、しばらく経つと次第に警戒心が薄れてくる。妙に安心した顔つきになり、プライベートモードに入る青木。ベッドに寝転んで、独り言を話し出す。

「目が見えなくなったってことは~。アニメが見れないってことか……。あのアニメ……最後どうなるんだろう? あの子、可愛かったのになぁ~」

 聞くのも悪いような話。何も知らずに、青木が語る。

「まぁ、いいか。点字はマスターしてるし。読書はできるよな……。まぁ、『閉じた時間』に落ちれば何もないけど。どうなのだろう? 魔力でカバーすれば、あの空間でも耐えられるのかな……? 本……」

 続く独り言……。

「でも、落ちるの嫌だなぁ~。いや、別に僕は構わないのだけど……。裏の僕……絶対に嫌がるし。想像できるし。不愉快な気分になるのだろうな~。まぁ、大暴れしたところで。何もないから問題ないのだけど」

 人の独り言を聞いていると……こちらまで恥ずかしくなってくる。青木が口を開く。

「だけど、暇だろうな……。向こうに何か持っていこうか? 持って行ける物って……何? 本くらい? う~ん……そういえば、魔力で物ってどれくらい作れるのだろう? 試してみようか?」

 そう言って、青木が上体を起こす。不意に青木の手が紫色に輝いて、手の平に魔球が登場。すぐにそれの形が変わって、平たい物になる。青木が一人で呟く。

「お皿……。簡単すぎるな……」

 次は、その皿が形を変えて、コップになる。その次は、本。その次は、上着。コロコロと形を変えていく魔球に飽きたのか。青木が一時停止する。不意にキョロキョロと辺りを見回して、口を開く。

「誰もいませんよね?」

 警戒心の強い奴だ。まだ信用していなかったのか? 俺達は友達じゃなかったのか? まぁ、事実裏切っているわけだが……。最後は青木が、部屋に誰もいないと思いこみ。とんでもない物を作りだす。

 魔球が大きく拡大し、何になるのかと思ったら。何ともまぁ……大杉である。しかも、お上手だ。マジで大杉の分身……。大杉の分身が青木に抱きつき、キスを始める。目を丸くするのは本物。何気に恥ずかしそうな顔をして、驚いている。

 どう考えても、超失礼な俺達。これは……見てはいけないシーンだよな? ある意味、本物とキスをしている所を見るよりも失礼な話だ。何せプライベート。今更、話しかけるなんて事はできっこない。

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