再度、無人島編〈柊編10〉
何事もなく時が過ぎ、何事もなく夜中になる……というのは半分嘘になる。それもそのはず、青木が厄介なお子様になっているので。その世話が大変なのだ。ニートや姉貴は育児放棄で、スザクはミルとお喋りだ。
残ったお子様……セルはミルが相手をしてくれないので。拗ねて俺に八つ当たり。俺の事が気に入らないと喚きながら、すぐに暴力を振るおうとする。殺す気はないようだが。結構、あざができそうなくらいに力強く叩いてくる。
それに対して、こちらも色々と対応だ。何とかしてご機嫌を取ろうと、努力する。俺の育児経験からいくと、ヒュプの反抗期を見ているよう。あいつもしばらくすると、このような反抗期がやってくるのだろうか? まだ見えない未来であるが、今からでもノイローゼになりそうだ。
おだてながらも、肝心なところは叱りつけて。それでも褒めて、慰めて。ご機嫌を取りながら、相手の反応を窺う。そういう事をしているうちに、ある程度は対応の仕方が掴めてくる。
コミュニケーションを上手に行うコツは、とにかく会話をすることだ。そうすることで、相手の感性を理解するのだ。俺が長い時間を掛けて、分析したセルの性格を発表すると以下のような結果になる。
まず、年はウェスタやヒュプよりも上であろう。イメージはそうだな……人間で言う小学五年生くらいか? 時々、しっかりした面を見せるが、それでもどこか幼げな所がある。
次に、気になる点だ。会話の途中、俺が質問をした際に考える時間が妙に長い。後、言葉遣いが少し変だ。というのも、普通なら一言で言ってしまうような事でも。言葉を分割してしまう。
別にわざとではないだろう。続けて言葉にすることができないのだ。頭の中で文章を作りだすのが下手らしい。要するに、おつむが弱いということだ。
気質はそうだな……。自己中のやんちゃ者と言ったところか? 何かと疑い深く、人を信用しないような神経質な部分があり。グループとか苦手そうだ。一匹オオカミ的な部分がある。わかりやすく説明すると……普段は大人しいがキレたら怖い奴。みたいな感じか? 後、嫌な事があったらヒステリックになり、大暴れする。言葉通りの大暴れだ。泣くだけではない。物を投げ、叩き、壊し。一度でいいから、親の顔を見てやりたい気分になる。
いくぶん話をしたところで、向こうも警戒心が薄れてきたらしい。やはりそういった所はお子様だ。大人だったら、第一印象で全てが決まる。セルがちょっぴりご機嫌に成り始めた頃に、就寝時間。
もう少しで仲良くなれそうなのだが。まぁ、仕方ないだろう。一日で仲良しになれるなんて考えていない。特に、厄介性で有名な覚醒青木様だ。もしも、そんなに素早く仲良しになれたのなら、きっと裏に何かある。
姉貴が一言、口を開く。
「じゃあ、あたしは寝るとするよ。今日は疲れたからね」
「お休みなさいませ、姉上様」
ニートが敬礼し、スザクがマネをする。姉貴が俺の部屋から出て行った。ミルがセルに声を掛ける。
「お兄様、行くわよ。そう、わたし達の部屋に戻るわよ」
「まだ……遊ぶ」
「別にいいわ。だけど、わたしは知らないわ」
ミルが言って、その場で消える。自室に戻ったのだろう。ニートが手を上げ、扉に向かいながら口を開く。
「じゃあ、おやすみー」
「おやすみ」とスザク。
「え? ちょい待てよ。おい!?」
部屋から出て行こうとする二人の背中に声を掛けるが、無反応。二人が部屋から出て行った。残されたのは俺と……セル。え? マジで? 紙切れで手作りしたトランプを楽しげに並べるセル。あの……そろそろ寝る時間なんですけど。俺がセルに声を掛ける。
「おい、セル。そろそろお休みしないか? 明日も早いんだぞ」
「僕から……。これと……これ」
裏向けて並べたトランプを二枚、表に反す。じっと眺めて、面白くなさそうな顔をするセル。再び裏に向けてから、俺を見る。
「次……」
「え? あぁ、俺の番か……」
神経衰弱な……。俺の神経が衰弱しそうだ。別に神経衰弱を行っているからではない。眠気に襲われて衰弱しているのだ。全然乗り気になれない俺が仕方なしにトランプを引っ繰り返す。もちろん、一発で合うわけがなくて。再び裏向け、セルの番。
よくよく考えたら、こいつ……昼寝していたよな? ソファーに横たわって、眠っていたのを覚えているぞ。それに比べて、俺は寝てないんだ。寝させてくれよ。心底お願いする俺だが、手が既にトランプモードに入っている。
なかなか揃わない俺達二人。このゲームだけで、一日は持ちそうだ。きっとゲームが終わる頃には、明日の朝になっているだろう。元気なセルを見ながら、ため息をつく俺。明日は船の上で永眠しよう。
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