再度、無人島編〈柊編3〉
キャンディーを口の中で転がしながら、二人の話に耳を向ける。なんというか、ややこしい世の中だ。とにかくこの島は不思議に満ちている。全てを総合した結論であろう。
二人の会話について行けず、一人寂しい思いをする俺。最後はつまらなさのあまり話を変えてやることにした。
「そういえば、このペンションには面白トラップが山積みされているんだろ? 例えば、どういう物があるんだ?」
「ベッドの下に穴が空いていて、隣の部屋まで繋がっていたり。物を動かすと、壁が移動して、隠し通路が現れたり。他にも天井裏とか……いろいろありますよ。シバルさんくらいは気づいていたのではないですか?」と青木。
「しかし、あいつは何も言わなかったぞ……。それに気づいている素振りもなかった……。どちらかと言えば、他の事に気を取られていたからな」
「例の爺さんだろ? 俺は会っていないから知らんが。いきなり消えたのなら、人間じゃないよな」
とニート。前回、この島で会った平石さんの事だろう。俺達にこの島の話を色々と教えてくれた。シバルと相性が悪く常に口喧嘩をしていたのを覚えている。
最後は、歌花の開花を見て、消滅してしまった。満足そうな声が聞こえたと思って横を振り向くと、既にそこはもぬけの殻。先程までいた平石さんの姿がなくなっていたのだ。それ以来、平石さんには会っていない。
興味深そうに青木が言う。
「そのお爺さんは何者なのでしょうね? 僕も一度は会ってみたいです」
「成仏したのなら、このままスルーしたいところだ」
とニート。確かに……。もしも、平石さんが幽霊であり。あの出来事をきっかけとして、成仏したのなら。そのまま放っておいてやりたいし、俺も係わりたくはない。幽霊騒動に良い思い出がないので尚更だ。
そんな話をしていたら、元気な姉貴が登場だ。ビールを飲みながら、俺達に近づいてくる。
「何だい? こんなに男が集まって、何の話だい? まさか、夜な夜なあたし達を襲おうなんて企んでいるんじゃないだろうね?」
「姉貴に襲われる事はあるかもしれないが、姉貴を襲う事はないだろう」
俺が言ったら、ニートと青木が深く頷く。すぐに姉貴が俺達に暴力を振りだす。俺の頭を叩いた後、ニートの顔に蹴りを入れる。続いて、青木の腹部に拳を突き出すが、青木に避けられカラ振りだ。姉貴が鼻息を立てながらほざきだす。
「面白くないね。ここは殴られておくもんだよ。あたしの顔立てのためにもね」
「痛いのは嫌いです。殴るのなら、柊さんにして下さい」と青木。
「そうかい、わかったよ。じゃあ、拓海。準備はいいかい?」
「いや、殴るのならニートにしてくれ」と俺。
「無理だ、無理。俺よりも柊が妥当だろう」
ニートが片手で顔を押さえながら、もう片方の手で俺を指差す。二対一で、俺の負け。即座に俺が逃げようとするところ、姉貴の蹴りが飛んできた。蹴りを避けたと思ったら、今度は突きだ。これも上手くかわす事ができた。どんなもんだ! 思っていたら、腕を取られ、絞め技である。俺が大声で喚き散らす。
「ギブだ、ギブ! マジでギブ! 本当、マジムリ! 腕がちぎれる! マジ、勘弁! 痛い痛い痛い痛い! 痛いから! 痛いって言ってるだろ! 止めろよ、止めろ! 止めてくれー!」
情けないほどに騒いだら、どうにか姉貴が許してくる。俺を離して、口を開く。
「駄目だね、拓海は。大物に成れる気配を感じないよ」
「大物って何だ? 格闘技家の事か? それともプロレスラーの事か?」
「あたしの弟なのにね。何でこんなに弱いんだい? なんなら、この子にでも教えてもらったらどうだい?」
姉貴が青木を指差す。こいつに何を教えてもらうんだ? いくら戦闘訓練をしてもらった所で。所詮、俺は人間だ。お前ら人外と一緒にするな。俺がため息をついていたら、青木が立ち上がり口を開く。
「では、僕は少し休みます……。あ、夕食はいりませんので。柊さんの食事まで頂いて満足ですから。では、また明日……」
青木が立ち去った。残された俺とニートで姉貴の面倒を見るのか。不満そうなニートが俺を睨んでいるが気にしない。姉貴が有頂天に話し出す。
「さぁ、何をしようかね? あんた達がよければ、ちょっとしたゲームをしないかい? 少し小遣いを掛けてだね。まぁ、ちょっと……あれだよ、あれ」
博打と言いたいのだろう。トランプか? 麻雀か? 俺が眉をしかめていたら、姉貴がある物を取り出した。それを見て、言葉を無くす。姉貴が取り出した物は……花札。俺が姉貴に怒鳴りだす。
「わかるわけがないだろ! せめてトランプとかにしてくれよ!」
「あんた達がわからない方がいいんだよ。小遣いを全部巻き上げてやるつもりだからね」
姉貴が高らかに笑い、カードを並べる。そうやって、始まるゲーム。ルールも教えてくれない冷血な姉貴に対して、俺達はどうやって対抗すればいいのか?
ニートを見ると、不適な笑みだ。もしやこいつ……。だが俺には関係ない。ニートが強かろうが弱かろうが、俺が弱い事に変わりない。無知な俺を支えてくれるのは何であろうか? とりあえず、夕食を作るという言い訳で。さっさとこの場を流してしまおう。
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