七夕祭り〈ユムア編〉
お昼前にラレスさんがやってくる。慌しく嬉しそう。何かな……? 私は放っておいてほしいのに……。
ラレスさんに腕を引かれる。どこへ行くの? そっちには行きたくない……。到着したのはやっぱり中庭。向かう先も予想通り、笹達のいた所……。
私が前を向かずに歩いていたら、ラレスさんが口を開く。
「ほら、見なさい! ビックリでしょ?」
仕方なしに前を見る。あれ……? 燃えたはずの笹達が元気に私を眺めている。よく似た子? 違う……。あの燃やされた子達に間違いない。どういうことかな? ラレスさんに目を向ける。すると、ラレスさんが笑顔で言う。
「わからないけど、今朝見に来たら、こうなっていたのよ。前に燃やされた笹は偽者だったみたいね。これで今夜の祭りも盛り上がるわよ。あたしも今から短冊に願い事を書くつもりだから。よかったわね、笹が無事で」
頷く私。私の様子を見守った後、ラレスさんが短冊置場に行く。願い事を書くみたい。
それにしても、奇妙な気持ち……。どういうことか理解できない。あの時、燃やされたのは確かにあの子達だった……。そうだ、本人達に聞いてみよう。笹に近づき手を触れる。
伝わるのは笹の気持ち。言葉はわからない。まだ、私には草木達の言葉を理解する力はない。笹達は何も知らない、燃やされた記憶もない。そんな雰囲気……。別の草花に触れてみる。恐怖心の後に続いた、不思議な心……。
どういうことかな? 私が首を傾げていたら、声を掛けられる。振りかえるとエアちゃんだ。
「どうしたんダ?」
「エアちゃんこそ……どうしたの? 顔色悪いよ……」
「うん……ちょっとナ……」
ボーっとしているエアちゃん。不意に前を向き、目を丸くする。私に向いて、問いかけてくる。
「おい、この笹は何ダ? 新しく作ったのカ?」
「ううん。さっきラレスさんに呼ばれて来てみたら、こうなっていたの。でも、この子達は燃やされた子と同じなんだよ。私にはわかるもの……」
「…………」
黙るエアちゃん。笹に近づき、何かを探している。一つの短冊に目を向け、首を傾げる。キョロキョロと辺りを見回し、広い通路に行って座り込む。地面を軽く叩いて、耳を当てる。どうしたのかな? 私が近づき、エアちゃんに問いかける。
「どうしたの?」
「微かだが、魔力が残っている……。あの出来事は夢じゃなかったのカ?」
「魔力?」
「いや……何でもない……」
腕を組みながら、考え込むエアちゃん。不意に私に向いて言う。
「そういえば、あいつらは知っているのカ?」
「え……?」
「あいつらダヨ。お前と一緒に笹を飾っていた奴ら」
「え、わからないよ……。私もさっき初めて知ったから……」
「そうか。じゃあ伝えた方がいいかもナ」
「あ……じゃあ、私が行くよ」
「え……」
エアちゃんが止まる。その後、心配そうに私に言う。
「どうしたんダ? ユムアにしては積極的ダナ」
「えっと……ハルトさん達は良い人……だよ」
優しかったし、怖くなかったし。質問とか……変な事も聞かれなかったし。一緒にいて楽しかったから。きっと良い人達……だと思う。私がおろおろしていると、エアちゃんが笑顔で言う。
「そうか。それなら行ってみろ。ユムアも成長したナ。独り立ちカ?」
楽しそうなエアちゃん。顔を赤らめる私。エアちゃんと別れを告げて、ハルトさん達の所に向かう。きっと皆喜ぶだろうな。ちょっと嬉しい気持ちになる。
ハルトさん達の部屋の前。少し怖気づいて立ち止まってしまう。ノックしようか、止めようか。考えていたら、扉が開いた。硬直する私の前に現れたのは、カルナさん。カルナさんが私に言う。
「ハルトに用か?」
小さく頷く私。カルナさんが続けて言う。
「残念だが、今日は駄目だ。明日にしてやれ。体調不良で寝込んでいるからな。祭りも不参加だそうだ。本人が皆に伝えてくれと言っていたぞ」
「え……」
こんな時に体調不良……。それは残念……。落ち込む私の様子を見て、カルナさんが話を続ける。
「まぁ、少し休めば体調も良くなるだろう。明日には走り回っていると思うぞ」
カルナさんの言葉を聞いて、少し安心する。明日には元気になるみたい。それなら、明日お話しようかな。カルナさんに頭を下げて、エアちゃんの元へと駆けていく。
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