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年末年始〈その5〉
 ふわぁ……頭の中が変になりそう。連続でスプレーを浴びたから、気持ちいいを通り越して。死んじゃいそう……。荒い息、高鳴る心臓。必死にあえぎながら、うずくまっていたら。誰かが近づいてくる。誰……?

 ゆっくり顔を上げると、そこには彼女の姿が……。僕の顔に手を伸ばしてくる。彼女の手が僕の頬に触れる。それだけで身体が溶けてしまいそう。心臓が壊れそうな程に高鳴って、目から涙が出てくる。そんな僕の耳に、彼女の声が聞こえてくる。

「青木君。また負けちゃったの。意味わかる?」
「あぅ……?」

 負けた……? 何の話……? 頭が働かない僕。そして、彼女が僕の腕を押さえて、僕を押し倒す。何するの? 彼女に触られて、身体の中に走る快感。うわぁ……腕を触られただけなのに。何なの……この刺激。

 僕が抵抗できないでいたら、彼女が僕に手を伸ばす。何? 何する気? 彼女に触られて、思わず声が出る。

「ふわぁ!? あっ……?」
「悪いけど、ルールだから」
「やぁ……あ……あぁ!?」

 彼女が無理やり僕の服を奪っていく。強制的に一枚服を脱がされた……。彼女が立ち去る。身体に力が入らない。起き上がれない僕。ぐったりと横たわっていたら、騒々しい人々の声が聞こえてくる。お祭りのような騒ぎ様。何か……盛り上がっているみたい。

 寝転びながら今の状況を思い出す。そうだ……確か、未来さんが野球拳を始めて。なぜか……彼女が参加して。ぽつりぽつりと思い出す断片。あぁ……それで彼女が僕を身代わりに……。

 僕が思い返していたら、またもや彼女がやってくる。僕は必死に抵抗しようと、彼女の腕を掴むけれど。まったく力が入らない。逆に身体が触れ合って、変な声が出てしまう。嫌がる僕から服を奪って、彼女が立ち去って行く。

 このまま行くといずれは……。大問題だ。早く起き上がらないと……。起きて彼女を止めないと……。わかっているのに、身体が動かない。そんなこんなしている間に、上の服を全て奪われる。ヤバい、次は下? 何でもっと服をたくさん着てこなかったのだろう? 野球拳で悔し涙を流した人は数知れないと思われる。

 誰か助っ人いないかな? 仰向けから、どうにか身体を横に向ける。目に入るのは女の子達の熱烈な視線。何? その視線は何なの? まるで何かを期待するような目……。何を期待しているの? まさか……。

 僕が妙な雲行きを感じていたら、女の子達が大喜びに騒ぎ出す。どうしたの? 頭上に気配……。上を向くと、彼女の笑顔。ピースサインを出しながら、彼女が言う。

「また負けちゃった」
「え……」
「ごめんね、青木君」
「や……や……」

 容赦なく、彼女が僕のズボンに手を伸ばす。大騒ぎする僕。叫びながら嫌がったところで、勝ち目なし。はぅ……せめて狭間に飛ぶ事ができたら。まぁ、飛んだところで即死だろう。あの場所はおふざけで生きていける場所じゃないし。

 僕が嫌がって、叫べば叫ぶほどに。なぜか会場が盛り上がる。特にうるさいのはマティーの声。聞いているだけで、打ち切れそうになるけれど。手も足も出ないのだから仕方ない。

 涙を流す僕に向かって、彼女が話しかけてくる。

「青木君、どうする? 次に負けたらお仕舞いなんだけど」
「もう……やだ」
「嫌なの? だけど、私……あの惚れ薬が欲しいのよね。だって、青木君が言う事を聞いてくれないんだもの」
「何でもする……。何でもするから……許して」
「何でもしてくれるの? 本当に?」
「うん……」
「絶対に? 約束する?」
「うん……」

 こんな公共の場で全裸になって平気な程に、僕の神経は鈍感じゃない。ホロホロと泣きながら、彼女に乞い願ったら。彼女が優しく頭を撫でてくれた。

「わかったわ。じゃあ、棄権するわね。でも約束は守ってよ」
「ん……」

 助かった……。安堵する僕。直後、恐ろしい事態が訪れる。舞台の下から聞こえてくるのは女の子達の声。

「棄権なんて許さないよ!」
「ハルトのノーマルを見てみたいしね」
「ハルト様が全てお脱ぎになるまで、マティーは見守って差し上げますですよ~!」

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