七夕祭り〈その5〉
泣きそうな僕にエアさんが言う。
「大丈夫か? 目が涙目だゾ」
「僕は犯人じゃありません……」
「可能性としては、そちらの方が考えられるナ」
考えられるだけであって、絶対宣言はしてくれないのか……。少し寂しい気分になる。隣でライさんがエアさんに訴える。
「ご主人でないのは確実である! 吾輩の命を掛けても言いきれるであろう! それでも、そなたは信じてくれぬのか?」
「お前がいくら言いきっても、僕は知らないんダ。見ていないのだから、何もいえないゾ。だが、まぁ、お前らではないだろうナ。これはあくまで推論だが……」
エアさんが腕を組む。笹の燃えカスに目を向け、説明する。
「以前にも似通った事件が起きたんダ。ユムアが大切に育てていた鉢植えが壊されていて、苗が踏みつけられていた」
「そんなことが?」
驚く僕。エアさんが淡々と語る。
「ユムアのことを皆が嫌うんダ。根暗とか、付き合い悪いとか言ってナ。確かにユムアにも悪いところはあると思うが……」
言葉を区切って、僕に向く。
「ここは偏屈ばかりだからナ。常識を心得ている奴なんて、あまりいないゾ。今更、気をつけろなんて言っても意味ないだろうが、嫌になったら出て行くんダナ。その方がきっとお前のためになると思うゾ」
「そうですか……」
嫌になったら破壊神だ。今の僕には出ていく所なんてないのだから。大暴走して、皆殺しにして、世界を支配してやる。案外にスッキリするかもしれない。
この手で殺戮をしたらどんな気分になるのだろう? 自分をいたぶっていた人達が次々に死んでいく……。それはもう快感だろうな。苦しむ人々を見ながら、いい気味だと思うのか。一層の事、今から行動してやろうか。
まぁ、無理な話だな。ここにはジジイがいるから、僕が暴れてもすぐに止められる。ジジイがいなければ、行動に移してもいいかもしれない。そう思う程に、今の僕は悲しい気持ちでいっぱいだ。
結局の所、明日の七夕祭りは笹なしで行うことになった。屋台など他にも準備しなくてはいけないものが多いため、笹の準備までしていられないらしい。
ユムアさんには会っていない。自室から出てこない上に、僕も自室に引きこもってしまっている。こんな状況で、もう一度出会って作り直すことは難しいだろう。
カルナさんが訪ねてくれて、少し気分が落ち着いた。泣き喚くシナを慰めて、絵本を読んでやる。しばらくすると、シナも落ち着きを取り戻し、僕の膝上を枕にして眠りだした。しんみりとした空気が部屋を覆う中、元気なのがライさんだ。未だに怒っている。ライさんが僕に言う。
「それにしても、ご主人を犯人におとしめようだなんて、ここの者は礼儀がなっていませんな」
「仕方ありませんよ。僕は外来生物みたいなものですから」
僕が言って、シナの頭を撫でる。シナの柔らかい髪に触れると何だか心が癒される。まるで人形を触っている気分だ。ふわふわなシナの髪をいじっていたら、ライさんが話しだす。
「ご主人は諦めが良すぎですぞ。どうしてそんなにも人が良いのか……。こんな時くらいは、怒りを拳に込めて大暴れしてやって下され。吾輩も援護します、故に、宣戦布告ですぞ!」
ライさんが一人で威勢よく飛びまわる。宣戦布告……。その言葉に触れた途端に、戦争が始まるのか。神に対立するのなら、僕は何になるのだろう? 人間でも悪魔でも幽霊でも召喚獣でもなく……。
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