実はタックン達……偽ハルトに会ってません。
雪まつり編の時、うまい具合に会ってなかったと思われます。(多分……)
年末年始〈柊編2〉
俺の前にて、大杉と案内人が楽しげに話をしている。話のネタは青木だろう。会話にその名が含まれているので、間違いないと思われる。ちび共と春日井が走り回る中、桜井が話しかけてくる。
「それにしても、綺麗なお城ですね。外国に来ている気分になります」
「まったくだな。日本にこんな所があるとすれば、テーマパークくらいだろう。と言っても、流石にここまでレベルの高い物は見た事ないが……」
「私も……こんなに素敵なお城は初めてですね。幼い頃は憧れました。こういうお城って、女の子の夢ですから」
「安心しろ。城がなくても桜井は充分にお姫様だ」
楽しげに微笑む桜井に、本気とも冗談とも取れる言葉を投げかける。俺の言葉を聞いて、桜井は顔を赤らめ。ちょっと恥ずかしげに、はにかむ。そんな可愛い桜井を眺めながら、ほのぼのしていると前衛から声が聞こえてくる。
「えー、マジで!? ハルトとしたの!?」
「そうよ。まぁ、私が襲ったんだけど」
「それで、どうだった!? ハルトは何か言ってた?」
「その時の彼、とっても可愛かったわ。丁度、目が壊れていて失明状態だったから。逃げ場がなかったのよね。泣きながら嫌がる割には嬉しそうなのよ。最後は私の言いなりだったけど」
「へ~、面白い話を聞いちゃった。また皆に教えてあげないとな」
こいつらは差し詰め、噂好きのメイドと言ったところか。お姫様には値しない。実際は、青木が王子であるのだから。大杉が一番、お姫様に近いのだろうが。まったくもって、お姫様らしさを感じない。以前から青木に聞きたかったのだが、どうしてこいつの事が好きなんだ? 俺には青木の好みが理解不能だ。
前衛にて、女子の会話とは思えないような会話が聞こえてくる中。遠くに噂の人物を発見だ。青木とその隣にいるのはネコ耳女神。二人が何やら会話をしている。青木がネコ耳女神に口を開く。
「ということは、魔力情報さえ理解できれば自力で魔力の確保ができるわけですね」
「まぁ、そうなるナ。自然の物は無意識の内に理解している事ダガ。お前は人工的に作られたものダカラ、その理解が乏しいのだろう。だけど、どうして今更……。今まで通り、本人から魔力を分けてもらえばいいダロ?」
「いえ、そういうわけにもいきませんよ。以前にも説明した通り、あの人はもう……。それに、僕だって自立しないと不便で仕方ありませんから」
「……そうか。だけど、魔力情報の理解は難しいゾ。一言で説明できるような事ではないからナ。特に人工のお前には難しいと思われるゾ」
何のことやら? 大杉よりも速く、春日井が走って行き。青木にダイブしようとする。
「ハルト~ン!」
すぐに回避され、春日井が地面に落下。その上にヒュプがダイブして、続いてウェスタがスーパージャンプだ。そして、春日井がご臨終する。目を丸くしながら、青木が口を開く。
「あれ? どうして皆さんが?」
「年末だから遊びに来たのよ」
大杉が青木に抱きつく。すぐに、首を傾げて不思議そうな顔をする。
「あれ? 変ね……。青木君よね?」
「いえ……僕は偽者です。本人のコピーでしたけど……今は異なる存在です」
青木が口を開く。偽者? 何それ? 状況理解に乏しい俺達に、詳しく説明してくれるのはネコ耳女神。そして納得。成る程、こいつは……青木は青木でも、いつもの青木とは少々勝手が違うらしい。
それにしても大杉の奴……よく気が付いたな。正しくは違和感を持っただけであるが。俺にはまったくわからなかった。これが恋の力であろうか? 思わず、感心してしまう。続いて、ネコ耳女神が偽青木に言う。
「お前らの区別は難しいからナ。肩にタスキでも掛けてもらわない事には、わけがわからなくなりそうダ」
「そんなの恥ずかしいですよ。絶対に嫌です」
「まぁ、しいて区別できるとしたら。ペンダントを付けているか、付けていないかの違いダナ」
「そうですね。だけど、本物も常に首から下げているわけではないので。ズボンのポケットに入れている時もありますし。絶対というわけでもありませんので、ご了承下さい」
「何だかややこしいな~」
春日井が眉をしかめる。確かに、何だかややこしい。それにしても、俺達はこいつの事を何と呼べばいいのか? 青木ではない、青木……。偽青木とも呼びづらい。俺が偽青木に問いかける。
「それで、俺達はお前を何て呼べばいいんだ?」
「え……そうですね。では、『ハル』と呼んで下さい。本物とかぶるとややこしいですからね」
「よし、理解した」
「それで、本物の青木君はどこにいるの?」
会話を戻すのは大杉。ハルが大杉に口を開く。
「多分、自室でしょう。僕の事だから、また昼寝でもしているのだと思いますよ」
「お前は昼から寝ているのか?」と俺。
「違います。昼も寝ているのです」
昼も? じゃあ、夜も? どれだけ寝ているの? お前は冬眠中の熊か? 学校でもよく寝る奴だったが、授業は真面目に受けていた。授業すらなくなったこいつは常に寝ているらしい。少々羨ましいと思ってしまう。
呆れる俺を無視して、案内人が口を開く。
「じゃあ、行こうか? ハルトの部屋はあっちね」
ハルとネコ耳女神に別れを告げて、案内人に案内される。青木の部屋の前に辿り着き、案内人が扉を指差す。
「ここがハルトの部屋。じゃあ、私は行くね。ちょっと用事が出来ちゃったし」
案内人が手を振りながら、超ご機嫌に去っていく。いらぬ事をしそうなオーラをかもし出しながら、立ち去った。後で何か起きそうだが、俺には関係ないだろう。そして、大杉がノックもせずに部屋の扉を開く。おいおい、せめてノックはしろよな……。常識だろ?
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