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七夕祭り〈その4〉
 七月六日

 目が覚める。昨日の出来事を振り返り、少し楽しい気分になる。明日はいよいよ七夕祭りか。僕達以外の人達も願い事を書いてくれていると信じたい。笹の様子が気になるけれど、それは明日のお楽しみだな。

 そう思いながら部屋でゴロゴロしていたら、突然に荒いノックが聞こえてくる。扉を開けると、外にはラレスさん。血相を変えながら怒っている。あれ? 僕は何かしましたっけ? ラレスさんに問いかける。

「あの……どうされましたか?」
「いいから来なさい」
「はい……」

 全速力で用意を済ませて、ラレスさんに付いて行く。シナとライさんには部屋に残ってもらった。どう考えても嫌な雰囲気だ。二人を連れていくべきではないだろう。

 そう思いながら、歩いていたら後ろからライさんが素っ飛んできた。ライさんも事態の異変に気付いたらしい。僕を心配してくれているのか。ライさんの登場で少し不安が和らぐ。



 到着すると、そこは中庭。ずんずんと奥に進む。もしかして、笹の飾り付けが問題だったのかな? だけど、すぐにそうではないことに気が付く。

 昨日、笹を置いた場所に行くと、笹が消えていた。あれ? と思って、近くの地面を見る。地面が黒く焦げていて、燃えカスが地面を覆っている……。それを見て、すぐに理解する。ライさんが騒ぎ出す。

「これは何事であるか!?」
「笹が燃やされているのよ。ユムアがせっかく作ったのに……」

 ラレスさんが言って、振り返る。僕を睨みながら、怒鳴り出す。

「あんたが犯人でしょ!?」
「どうして僕が!?」

 いくらなんでもそんな馬鹿な……。僕だって、制作に参加しているのだ。自らが努力をして作った物をわざわざ破壊しようなどとは思わない。ラレスさんが怒鳴り続ける。

「昨晩、あんたらしき人物をここで見かけたって女の子がたくさんいるのよ! それでも違うと言いきるわけ!?」
「そんなことを言われても、僕は知りませんよ。僕だって、ショックなのです。昨日、皆で努力して作った笹ですよ。その時、僕だって参加していたのです。どうして、自分で作った物を燃やさないといけないのですか?」
「そんなこと知らないわよ! どうせむしゃくしゃしていて、ストレス発散でもしようと思ったんじゃないの? それか、ユムアに嫌がらせをしたかったのかもね。自分の待遇が悪いからって、弱い者苛めをしてもいいと思っているの!?」

 弱い者苛めって……ラレスさんには言われたくないな。僕とラレスさんが騒ぐ様子を見て、他の人達がこちらを見る。まるで僕が犯人だとでも言いたげに、僕に指差す人もいる。

 大抵の事は我慢するけど、冤罪なんてかぶりたくない。必死になって言い訳をする僕。それでも、僕の立場は悪くなる一方。ライさんも言い返してくれるけど、誰も聞く耳を持っていない。

 僕が追い詰められてきた時、やって来たのがエアさんだ。エアさんの登場で、場の雰囲気が変わる。ラレスさんがエアさんに問いかける。

「ユムアは?」
「部屋にこもったゾ。相当にショックだったみたいダ」
「そうよね……」

 ラレスさんが頷き、すぐに僕を見る。

「エアもこいつに言ってやってよ! 犯人のくせに、知らない振りをするのよ」
「何だ? お前が犯人なのカ?」
「違います! 誤解ですよ! 僕は犯人ではありません!」

 僕がエアさんに訴える。ラレスさんがすぐに割って入る。

「何を言ってるのよ? こっちには証拠があるのよ。夜中にあんたを見た子はたくさんいるんだから。アリバイだってないんでしょ? あんたが犯人で決定じゃない!」
「だから、誤解です! 大体、夜中なんて眠っていますよ。真夜中に中庭なんかにいるほうがおかしいのです!」
「ご主人が犯人なわけがなかろう! 昨日、一生懸命になりながら飾りを作っておられたのだ! 吾輩達だって参加しておる! それをご主人が燃やすわけがない!」
「あんたは黙ってなさいよ! 関係ないでしょ!?」

 ラレスさんが怒鳴る。永遠と続く悪循環。どんどんエスカレートしていく現場。エアさんがラレスさんに問いかける。

「夜中に見かけたというのは、本当にこいつなのカ?」

 それに対して、答えたのはライさんだ。ラレスさんから聞いた話を具体的に説明する。

「それは正答ではない。正しくは、ご主人らしき人物だそうだ。そうであるな、ツンデレ?」
「誰がツンデレよ!? この飛行物体!」
「吾輩はUFOではないぞ! 大体、この姿も偽りで……」

 話を変えようとする二人を制して、エアさんがラレスさんに聞く。

「こいつが言っていることは本当か?」
「そうだけど……。でも、こいつらしき人物なんて、こいつしかいないじゃない。誰がどう見間違えるのよ、こんな奴」

 ラレスさんに指を差される。それを見て、僕の目に涙が溢れてくる。エアさんがラレスさんに言う。

「記憶なんて適当なものダ。常に変化していくからナ。大体、その証言は信用性に欠ける。こいつはここでは忌み嫌われているんダ。誰かが陥れようとしていても不思議じゃない」
「あんた、こいつの肩を持つつもり?」
「別にこいつの肩を持っているわけではないゾ。冷静に分析しているだけダ。大体、こんな無駄な推論を立てるより。これからどうするべきなのカ。ジジイに聞きに行った方が、効率がいいゾ」
「…………」

 ラレスさんが沈黙する。すぐにエアさんに口を開く。

「わかったわよ。ジジイに言ってくるわ」
「ああ、頼んだゾ」

 ラレスさんが振り返り、立ち去ろうとする。数歩だけ歩いて、立ち止る。そして、顔だけ僕に向けて、捨て台詞。

「あんた、犯人だって証拠が出てきたら、ただじゃ済まないわよ!」

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