何だか変じゃないですか? 〈ニート編〉
「スタート地点から、何かが変だぞ。この話」
一人で呟く。隣で寝転んでいる奴……未来が俺に口を開く。
「当たり前じゃん。ハルトンが主人公でしょ? 俺の弟子だよ。何をやらかしても、不思議じゃないし」
言われてみればそうだが……。そう考えると、ある意味で最強の主人公か? 俺が悩んでいると、未来が俺の考えを読んでくる。
「確かにある意味で最強だよね。ゲームとかでも、バグって最強の裏ワザだものね。常識的な視点で見たら勝ち目ないし。今回は非常識をモットーにストーリーが展開するのかな?」
「とりあえず、道理にあった話になってほしいな。無秩序は嫌だぞ。筋道が通っていない話も嫌だ」
「まぁ、ある程度は普通に進むでしょ? 主人公が真面目な分、ブラックな話になったりして……」
「ブラックも嫌だな」
どうして知人の不幸を小説で読まねばならぬのか。そんなのはゴメンだ。いくら本好きでも、知人の不幸はゴメンだぞ。頼むから、ハッピーエンドになってくれよ。無理なら、俺が無理やりハッピーエンドに書き換えてやる。俺があくどいことを考えていると、未来が話しかけてきた。
「っていうか、ゼイちゃん。自分の紹介しておきなよ。俺は何か既に、紹介されてるし。早めにゼイちゃんがニートだってことを紹介しておかないと……」
「いや、それは紹介する必要ないだろ?」
「この人、ニートだから」
「仕事はしているぞ!」
怒鳴る俺。未来が欠伸をしながら、答える。
「ニートじゃん。ニート。前回もニートだったんだから、今回もニートだよ。本の神様、ニート。あ、ちなみに俺は時間の神様。あだ名は未来で、本名はディサスト。ハルトン……ハルトの師匠。今回の主人公の師匠だよ。詳しいことは時間経過と共にわかるでしょ? 今はこれくらいでいいんじゃない」
「はいはい、どうせ俺はニートですよ。仕事しているけど、ニートですよ。誰が言い出したんだよ……俺のことをニートとか。失礼にも程があるだろ……」
俺がぶつくさと文句を言っていると、未来がクッションを投げてきた。コタツの上にあるコーヒーカップを巻き込んで俺に直撃する。そして、俺が発狂だ。
「おい! コーヒーがこぼれたじゃないか!」
「ニートがうるさいからいけないんだよ」
「服がぬれたじゃないか! どうしてくれるんだ?」
「放っておけば乾燥するんじゃない?」
罪意識ゼロか。流石、未来だ。少しは反省しろよ。俺が未来に言葉する。
「お前なぁ~。時間の神様なんだから、時間を戻せよ。コーヒーの時間をこぼれていない時まで、逆流させろよ」
「嫌だし。能力を使って、目が壊れたら、ハルトンに怒られるもの。俺は右目があるからいいけど、ハルトンは左目が見えないから。なるべくは能力を使わないようにしてくれって、頼まれてるんだよ」
「単に面倒くさいだけだろ?」
「うん」
未来が即答だ。こいつは人のことなんて考える奴じゃない。ハルトを利用して、それっぽいことを言っているだけだ。こいつは弟子の幸福なんて考えちゃいない。自己主義である。未来が不満そうに俺に向く。
「今、超失礼な事を考えてたでしょ?」
「いや、気のせいだ。それより、ハルトはどこにいるんだ?」
「さぁ? 向こうじゃないの?」
適当に話を流す俺に、未来が答える。まぁ、多分そうだろう。ここにいないってことは向こうへ帰ったんだろうな。しかし、本の続きが展開されないということは、寝ているのか? 寝てそうだ……。あいつは暇があると、すぐに寝るからな。
まだかまだかと期待しながら、手に持つ本に目を向ける。早く話が展開しないかな。週刊雑誌を読んでいる気分だ。
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