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大杉さんが本性を現した。やっぱりこういう人だった……。もともと、わかってはいたけれど。再確認しました。ハルトの目が壊れてなければなぁ~。これもそれも、未来のせいです。
雪まつり〈柊編3〉
 翌日に入る。今日は十二月九日。あの出来事以来、青木の顔を見ていないが大丈夫だろうか? 大杉が慰めていると聞いたが、そろそろ二人の顔を見ないと心配になってくる。

 そういうわけで、朝食の時間。俺達が食事をしていると、大杉と青木がやってきた。青木は大杉に手を引かれながら、歩いている。未来が安全のために目を壊したと言っていたから、今の青木は失明状態。人の助けを借りないと、ろくに歩くこともできないのだろう。大杉が青木を空いた席に座らせて、そのまま自分も隣に座る。

 久しぶりに見る青木の顔は、何だかもの凄くお疲れ気味だ。やはりショックだったのだろう。そりゃあ、人殺しなんてしたら悪夢にもうなされる。それに対して、大杉は妙にご機嫌だ。青木の疲労具合とのギャップに、俺達がたじろいでしまいそうになる。どうしたのか? まさか、青木の不幸が面白いわけでもあるまい。

 女神様達は不安げに、青木を眺めている。俺たちだって心配だ。心配そうにしていないのは、意味のわかっていないちび共と、青木とはあまり親しくないリビナや姉貴。それに加えて、性格の悪い青木の師匠、未来である。結構な数だ、青木が少々哀れに思えてくる。そんな中、大杉が青木に問いかける。

「青木君、朝食は何がいい? セルフサービスだけど、欲しい物があれば取ってくるわよ」
「何でも……いいです」
「あら、そうなの? じゃあ、今日の朝食は私にする?」

 大杉の一言で、青木の顔が真っ赤になる。目が宙を舞い、あげくの果てには両手で顔を押さえて下にうつむく。そのまま小さく声を出す。

「わ、わ、和食……。和食がいいです。白ご飯が食べたいです」
「和食ね。わかったわ」

 そう言って、大杉が食事を取りに行く。その隙を狙って、シバルが青木に話しかける。

「ハルトさん、大丈夫ですか? 僕が言うのも変ですが……あまり深刻に悩まないで下さいね」
「…………」
「あの……別に、ハルトさんが悪いわけではないですし。これは仕方のないことですから……」
「…………」

 シバルが話しかけているのに、青木の反応は皆無だ。顔を両手で押さえたまま、動かなくなる。そんな青木を見て、未来が不適な笑みだ。青木に近づき、耳元で囁く。何を言っているのかは聞こえなかったが、青木がすぐに反応する。なぜか知らないが慌てふためき、椅子から落ちる青木。それを見て、笑い転げる未来。

 何のことやら? よくわからない俺達が首を傾げていたら、大杉が帰って来た。とりあえず、青木の分だろう。和食料理がトレーに乗っている。大杉が地面に転がる青木に話しかける。

「何してるの、青木君?」
「いえ……な、何でもないです」
「何でもないのに、椅子から落ちたの? いくらなんでもドジ過ぎるわよ」
「す……すみません」
「仕方ないわね~」

 大杉がトレーを机の上に置いて、青木の肩に手を当てる。直後、青木が怯えた表情。顔を真っ赤にしながら、大杉のいる辺りに目を向ける。本当にどうしたのか? 昨日の出来事で怯えるのはわかるが、顔を赤くする必要性はどこにもない。俺が妙な違和感を持っていたら、大杉が青木に口を開く。

「そんなに怯えてどうしたのよ? 別に何もしないわよ」
「っ……!?」
「何? 今の言葉が気になるの? もしかして、何かしてほしいの?」
「ち、違いま……。な、何も……ないです。何も……」
「本当に? 昨晩みたいに襲ってほしいんじゃないの?」

 大杉の言葉を聞いて、青木が硬直する。顔を赤らめたまま、石像のように動かなくなる。大杉は青木の様子を眺めながら楽しげだ。春日井理論を用いなくても、超ドSだろう。一目でわかる。青木が困る様子を見ながら、笑みを浮かべているのだから。

 それにしても、大杉は青木に何をしたのだろう? 昨晩、襲ったと言っているが。まさかのまさかな行動には出ていないだろうな? 青木の様子を見る限り、何をしていても不思議じゃない。逆に言えば、今まで大人しかったのが不思議なくらいだ。

 気が付くと、大杉が青木に無理やりキスを食らわしている。青木は半泣きになりながら、大杉に襲われるばかり。こういう状況を見ると、思いだすなぁ……。そう、元々はこういう関係だった。大杉が女王で、青木が下僕。やはり世界の秩序は変わらないのだろうか?

 大杉が青木から口を離して、青木に言う。

「ほら、青木君。気分はどう?」
「あ……」
「何? もっとしてほしいの? だけど、残りは朝食の後ね」

 大杉が無理やり、青木を立たせて椅子に座らせる。そのまま青木に朝食を食べさせる。何というか……青木はまるで大杉の言いなりだ。女王の命令を忠実にこなす下僕になっている。不意にシバルが口を開く。

「ハルトさん、大丈夫ですか? 何だか様子がおかしいのですけど……」
「大丈夫よ。私の身体で悩殺しただけだから」

 大杉が言った直後、青木がお茶を吹き出した。直撃したのは春日井、哀れなり。むせかえす青木に向かって、春日井がブーイングだ。

「おいー、ハルトーン! 俺がずぶ濡れだぜー!」
「ゴホッ! ゴホッ! す……すみません」

 青木……今にも泣きそうだ。大杉の話を真に受けるなら、大杉は青木と……。という事になるが、昨晩の時点で目が壊れている青木が大杉を襲うとも思われないので。現実は逆……大杉が青木を犯したのか?

 俺が思考していると、地獄耳な奴がやってくる。姉貴だ。姉貴が大杉に問いかける。

「何だい、何だい? 面白いお話かい? 昨晩、この子と何をしたって? 詳しくお聞かせ願いたいね」
「いいわよ~、詳しく語ってあげるわ」
「いやー! あー! 駄目―!」

 発狂しだす青木。姉貴が満面の笑みを浮かべる。俺を苛める時と同様の笑顔。姉貴が唯一できる笑顔だ。そして、大杉が自慢げに話しだす。

「それがね……。昨晩、彼をベッドに押し倒して……」
「あー! やー! 駄目―! いやー!」
「あんまりに暴れるから、例のスプレーを追加して。大人しくなったところを……」
「いやー! ごめんなさい! ごめんなさい! 何でもするから! それだけは許して! 本当、ごめんなさい! 本当、何でもするから! お願い、お願いだから。それだけは止めて!」

 今の青木を文字で例えるなら『必死』。まさにその一言。大杉にしがみ付いて、泣きながら訴えている。青木の言葉を聞いて、大杉の口が止まる。そして、青木に問いかける。

「何でもしてくれるの? それはいいわね。やっぱり言うのやーめた」
「はぁ~……」

 青木が安堵のため息だ。選ぶ彼女を間違えたんじゃないか? 思わず聞いてみたくなるが、それをすると大杉に叩かれるから黙っておこう。

 とにもかくにも、元気そうで良かった。大杉に童貞を取られた代わりに、精神崩壊は免れたな。良いのか悪いのか知らないが、何事も前向きに考えよう。

 大杉にいたぶられる青木を見ながら、俺やシバルは安心する。もちろん、可哀そうな青木には同情しているが。落ち込む暇がないのは良い事だ。落ち込めば落ち込む程に状況は悪化することが多い……ような気がする。やはりポジティブが一番である。

 そんな事を言っていたら、笑っていられない事に気が付く。というのも、女神様グループから不穏な空気が……。いちゃつく大杉と青木を睨む人達が数人……。おい、青木。後ろを振り向け。言っても、青木には見えないから……黙っておこう。

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