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七夕祭り〈その3〉
 シナとライさんが七夕の飾りを作る中、僕がユムアさんに問いかける。

「笹はどうされますか?」
「…………」

 僕の言葉を聞いて、ユムアさんが駆けていく。しばらく経って、帰って来た。手には笹が二本。ちょっと小さすぎる気がするけど……。僕がユムアさんに言う。

「もう少し大きいものはありませんか?」
「っ……」

 ユムアさんがうろたえながら、一本の笹を僕に手渡す。どうするのかと思っていたら、ユムアさんの身体が緑色に輝きだした。ユムアさんが手に持つ笹も輝きだす。そして、急成長だ。どんどん大きくなる笹。数分も経たぬうちに、立派な笹に変身する。これがユムアさんの能力か……。凄いなぁ~。思わず、感嘆の声を漏らす。

「凄いですね。これは立派な笹です。これだけ立派だとお願い事も叶うような気になりますね」
「…………」

 僕の言葉を聞いて、ユムアさんの顔が赤くなる。褒められたことが恥ずかしいみたい。大したことは言っていないのだけど……。ユムアさんから笹を受け取り、もう片方を預ける。先程と同様に成長する笹。

 時間もかけずに、大きく立派に成長した笹が二つになる。これだけあれば大丈夫だろう。次は飾り作りだ。シナとライさんの元へ行き、折り紙を借りて飾りを作る。



 四人で飾りを作っていたら、シナが口を開いた。

「見ろ、ハルト! できたぞ!」
「へ~、上手いじゃないですか。椅子ですね」

 僕がシナの頭を撫でていたら、ライさんが割り込んでくる。

「七夕飾りで椅子は変であろう。七夕といえば、織姫と彦星がメインである」

 そう言いながら、大量の織姫と彦星を作るライさん。まぁ、ありだろう。笑いながら頷いてみせる。織姫と彦星の数さえ合えば問題ない。はみ出し者がいなければ、きっと上手くやっていける。

 ユムアさんはひたすらに輪を繋げている。ちょっと長すぎる気もするけれど、綺麗に飾ることが出来れば問題ない。僕が折り紙を折っていたら、ライさんに話しかけられる。

「ご主人は何を折っていられるのですか?」
「サンタクロースです」
「…………」

 沈黙するライさん。やっぱり駄目かな? 思いつつも、作り続ける。完成。躊躇しないで、笹につける。うん、いい感じだ。ライさんが僕に言う。

「ご主人、いくらなんでも季節外れですぞ」
「いいじゃないですか。いつも寒い季節に出向いてもらっているのですから。たまには夏のバカンスも悪くありませんよ」

 僕が言ったら、ライさんが再び沈黙だ。僕達の話を聞いていたのか、不意にユムアさんが微笑む。クスクスと小さく笑っている。すると、何だか場が和む。ちょっと近づいた気分。談笑しながら、余計な物を制作する。



 気が付くと六時だ。笹に目を向けると、豪華な飾り付けで、楽しい雰囲気が漂っている。後は短冊に願い事を書くだけだ。これは個人でやってもらおう。明日にでも、皆に書いてもらうように、ジジイに頼んでおこう。

 とりあえず、自分達の分を書いておこうか。僕が皆に口を開く。

「では、一人一枚。願い事を書くことにしましょう。後で書くのは面倒ですからね。少しくらいフライングしても問題ないと思いますし」

 そういうわけで、願い事を考える僕達。さて、何にしようかな? 確実に叶わない願い事を書いても仕方ないし……。結構、本気で考える。不意にシナの短冊に目を向ける。そこにはこんな文字が……。

『神を皆殺しにする』

 流石にこれはなぁ……。シナに注意を促す。

「シナ。他の願いはありませんか? そんなことを書いてしまうと、余計にシナが苛められてしまいますよ」
「大丈夫じゃ! わらわにはできるぞ!」

 胸を張る子ども。僕が近づき、別の願い事を考えさせる。次にライさんの声が聞こえてくる。

「できましたぞ。吾輩の願いは『大量の漫画を読破する』でありまする」

 それって願い事というよりは、目標に近い気がする。それでも、満足そうなライさん。こういう書き方をすると、普通に願いを書くよりも可能性を感じるな。きっとライさんはこの願いを自らの力で叶えるだろう。

 ユムアさんは恥ずかしいのか、書いた短冊をずっと手に持っている。見られたくないのだろう。僕も無理やり見ようとは思わない。さて、僕はどうしようかな? う~ん、よし。これでいこう。短冊に文字をつづる。

『友達ができますように』

 面白味に欠けるかな? 結構、切実な願いなのだけど……。ライさんが僕の短冊を覗きこんで、口を開く。

「ご主人……。えらく重い願いですな」
「ハルトにはわらわがいるから大丈夫じゃ」

 シナが僕に近づき、膝の上に座る。嬉しいことを言ってくれるシナを抱きしめて、皆に言う。

「これだけ努力して作った笹飾りです。きっと願いも叶いますよ」

 こうして完成した笹飾り。明日の夕方くらいにはもっと豪華になっているはずだ。中庭に笹を残し。ユムアさんに別れを告げて、ジジイの元へと足を向ける。明後日は七夕か……。もしも、ジジイが願い事を書いたなら、七夕の前に引きちぎってやろう。あくどいことを考える僕がいる。

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