番外編〈その13〉
十一月二十一日
お昼過ぎ、珍しい人がやってくる。僕の部屋をノックして、入ってきたのは未来さん。凄くご機嫌だ。どうしたのだろう? 未来さんの様子を見て、ライさんが問いかける。
「未来殿、えらくご機嫌ですな。どうかされましたのですかな?」
「いやぁ~、いい商売を見つけてね。一儲けしてきたんだよ」
何やら怪しそうな雰囲気だな。警戒しながら、僕が問いかける。
「いい商売って何ですか? どうせよからぬ商売でしょう?」
「いや、一言で言えば。とあるDVDを売ってきたんだけど。せっかくだから、皆も見てみる?」
とあるDVD? もう怪しいオーラ満タンじゃないか。乗り気でない僕をよそに、未来さんがDVDをセットする。テレビの電源を入れると、シナとフィンがテレビの前に座りこむ。アニメでも始まると勘違いしているようだ。
DVDが再生されて、タイトルが表示される。タイトルの名前を見て、飲んでいた梅茶を吹き出してしまう僕。タイトル名……それは……。
『ハルトの日常』
舐めるのも大概にしろ。僕がむせかえしている間に、DVDは再生され続ける。テレビに映るのは僕の羞恥醜態。
ネット麻雀で負けて発狂しているシーン。早朝から寝ぼけて、着替えの前後を間違えているシーン。扉の角で足の小指をぶつけて、死にかけているシーン。などなど、こんなのは序の口だ。もっと酷いシーンなど口にできない……。
僕が風呂場で熟睡するシーンを見ながら、ライさんが口を開く。
「ご主人、風呂場で眠るのはあまりよろしくありませぬぞ。と、以前にも注意しましたのに……」
ライさん、問題はそこじゃないですよ……。すぐに未来さんに怒りをぶつける。
「ちょっと、これはどういう事ですか!?」
「いやぁ~、ジジイに頼まれてね。ハルトをぎゃふんと言わせたい、っていうから。じゃあ、何か手はないかなと思って。色々と考えた結果。ハルトの日常生活を暴露しちゃおうということになり。俺が趣味で集めていたビデオを編集して、作ったわけ」
そんな……最低だな、この師匠は。僕が最悪な気分に陥っていると、DVDがとんでもない展開に。記憶のない映像、僕が女の子達に襲われている。女の子達に口で言えないような事をされて、いやらしい声で叫ぶ僕。ちょっと待てよ、こら!
どういうこと!? 脳内が停止。一瞬、意味がわからなくなる。次に、この間の事を思い出す。自分の複製を作った日……。話では聞いていたけど、まさかこれ? 僕が言葉を失っていたら、どんどん場面が切り替わる。
色々な女の子といちゃつき。犯し、犯され。どう考えても大人向け。この時には既に、フィンとシナには目隠しをしている。こんな物は見せられない。赤面しながら蒼白するという器用な顔をする僕に、未来さんが声を掛けてくる。
「このDVDがね。大人気でさぁ、一枚一万円という高額なのに、何と百枚近く売れたんだよ。いやぁ~、マジで儲かったね」
「ただのエロビデオじゃないですか!」
「結構、大変だったんだよ。女の子達に許可を貰うのに走り回ってね。流石に、こんな物を許可なしで販売するのはマズイでしょ?」
「僕は許可なんて出していませんけど!?」
「まぁまぁ、かたい事は言わないで。ほら、売り上げの半分あげるから」
「いりませんよ! ただちに売ったDVDを買い戻して下さい!」
「そんな無茶な。もう誰に売ったかなんて忘れちゃったし」
思わず、殺意を抱きそうになる。ここでバカ師匠を殺して、僕も死んでやろうか? 冗談抜きで思っている。だけど、そんな事をできるわけなく。ライさんに向いて、泣き言を言う。
「ライさんはどう思いますか!? こんなの酷いですよね!?」
「はい、流石にやり過ぎだと思われますぞ。それにしても、未来殿は手加減をしりませぬな」
「そんなことないし。大体、ここで登場しているハルトは偽者だから。別にいいじゃない」
いいわけないだろ! いくら偽者でも、ほとんどそっくりだ。知らない人が見たら、僕だと間違うに決まっている。今にも泣きそうな僕に向いて、未来さんが口を開く。
「それにしてもハルトって、襲う率より、襲われ率の方が高いよね」
「ご主人は女子に弱いですからな」とライさん。
「そんなのどうでもいいから、DVDを回収しに行けよ!」
発狂する僕。頭が痛くなってくる。誰かこの師匠をどうにかしてくれ。とにかくテレビの電源を消して、DVDを取り出しぶち壊す。一つ消滅。これが後、百もあるの? もうやだ……。諦めて、ベッドに潜り現実逃避。あ~、居酒屋に行って乱酒したい。
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