視力検査〈ニート編〉
隣に目を向ける。コタツに入りながら、抱き枕を抱え、爆睡するハルト。未来がなかなか帰ってこない。あいつは何をしているんだ? 早く帰ってこいよ。そう思っていたら、後ろから声が……。
「たっだいまぁ~。わぁ~、またハルトンいるし」
「変人に出会って、なえたらしい」
「あ~、成る程」
「それで、お前は何をしていたんだ?」
「説明するまでもないでしょ? 本の通りだよ」
本の通りか……。成る程、俺も質問があるのだが。未来に聞いてみる。
「お前はカルナのことをどうやって調べたんだ?」
「あれだよ。狭間の奥の記憶を触って来たの」
「せこいなぁ~」
狭間の奥には各個人にまつわる記憶が散乱しているらしい。それに触れると、その人の記憶を見ることができるそうだ。しかし、一般人には不可能だ。まずは狭間に飛べない。ほとんどバグ技である。俺が不満そうにしていたら、未来が話しかけてきた。
「まぁ、今回くらいだって。あまり記憶に触れると壊れちゃうから。普段は触らないし」
「あまりバグ技使用は止めてくれよ」
「え~、何で? バグ技って、一種の攻略法だよ」
「面白くないだろ。真面目に頑張っている人が可哀そうだ」
俺の話を聞いて、未来が腕を組む。
「でも、最後は大体バグ技に走るよね? どうして初めからバグ技使用しちゃいけないの? どうせ最後には使うんだからいいじゃん」
「ゲームが壊れたら、ゲームオーバーだぞ」
「ゲームじゃないし、壊れないって」
本当だろうか? いつかは狭間が拡散して、世界に無秩序が走りそうだ。そうなったら最後、俺達の存在はどうなる? 未来がケラケラ笑いながら話す。
「まぁ、一番しちゃいけないバグ技は、その本をハルトンに見せることだね。最強だよ」
「バグ技というか、それはもう攻略本だろ? まぁ、普通に考えたら見せないけどな」
俺も見せるつもりはない。ハルトも見たいとは思っていない……いや、どうだろうか。俺が主人公だったら、正直に言って気になる。手にとって開きたい。こんな物があったら、終結までに発狂しそうだ。きっと耐えられないだろう。
未来がコタツに乱入して、ハルトの様子を窺う。
「熟睡してるね~。ハルトンって、本当によく寝るよね」
「というか、こいつは寝付きが良すぎるぞ。約三分で声を掛けても起きなくなるからな。大した奴だ」
「無防備だね~。こういう時にマティーとかいう人が来たらどうするつもりだろ?」
「どうにもならんだろ? 襲われてお仕舞いだ」
結論を述べる俺。未来が笑いながら口を開く。
「まぁ、そうだね。寝ている時って、一番の弱点だよね。何もできないし」
「そうだなぁ~。どれほど最強でも、この時ばかりはなぁ~」
日常の会話に戻り、のんびりとお喋りをする俺達。それにしても、読んでいる本の主人公が隣で寝ているというのは、何だか不思議な気持ちになる。主人公って大変だな。と思いながら、幸せそうに眠るハルトに目を向ける。
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