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視力検査〈その3〉
 診療所からの帰り際、ヘラヘラしながら部屋に戻る。色々な人に心配してもらえる僕って幸せだなぁ~。向こうの人はもちろんのこと、他にも心配してくれている人達がたくさんいる。心配を掛けるのは嫌だけど、それでも何だか少し嬉しい。

 やっぱりカルナさんっていい人だな。何だかお姉さんみたいだし。説教は長いけど、僕の事をよく考えてくれているみたいだ。ここの人達が皆してカルナさんみたいな人達だったらよかったのに……。そうでなくても、せめていびるのは止めてほしいな。

 好印象なんて贅沢は言わないから、普通であってほしい。それにしても、どうして皆は僕の事を毛嫌いするのだろう? 理由くらいは教えてほしいのだけど……。

 そう言えば、ここに住んでいる人達って、どういう風に集められているのだろう? 自由にしては、変わり者が多いし……。見かける顔ぶれもパターン化している。初見の人もいるにはいるけれど、あまり数は多くない。

 ジジイのことだ。何かわけありばかりを集めているのだろう。僕だってわけありだ。もしや、更生保護施設か? あながち間違いでもなさそうだな。



 頭の中で推論を立てながら、部屋に戻る。そろそろお昼にしようかな。扉を開けて、中に入り、部屋の違和感に気づく。泣きそうなシナが床に座っている。何だかお姫様のような格好……。僕が近づき、声を掛ける。

「どうしたのですか、その格好は? 王子様待ちですか?」
「わらわは眠っておったのに、無理やり起こされたのじゃ~」

 不意に後ろから気配。振りかえる。そこには案の定、凶悪そうな化け物……マティーが立っていた。ちょっと失礼じゃありませんか? 勝手に人の部屋に入るのは……。超興奮気味のマティーが怪しい服を手に持ちながら、僕に近づく。

「ハルト様~。この間は逃げられてしまいましたけれど、今回は逃がしませんですよ。マティーの言いつけ通り、お着替えして下さいね」

 僕が注意する前に、マティーが襲いかかってくる。ライさんはどこに行ったんだー!? ギャーギャー喚きながら、部屋の中を逃げ惑う僕。

 狭間に逃亡してもいいけれど、逃亡したところで行く宛がない。その上、能力の使い過ぎは身体に毒だ。僕の能力は副作用が大きい。一度落ち込んだら、寝込んでしまうくらいに気分が悪くなるし、右目が壊れたら当分は両目共に失明だ。行動が制御されてしまう。

 それにライさんと出会わないと、お昼が……。僕が頭の中を整理していると、マティーに腕を掴まれる。ヤバイー! 

 何だかんだ言って、向こうは普通の女の子ではない。神様だ。神力を使って、押し倒されたら、そこでおしまい。こっちも本気を出さないと逃げ切れない。かといって、大暴れすると、怪我をさせてしまいそうだし。

 こういう時に、男って辛い……。理屈あれども、男が女の子を傷つけたら、その時点でアウトだ。こういう所に住んでいると特にそうなる。何せ大抵の人が僕の敵だ。僕に勝ち目はない。

 押し倒されて、服をはぎ取られる。誰か助けて! 犯されるー! 流石に僕も発狂する。

「ちょっと! 止めて下さい! 嫌です! あっちへ行ってください!」
「大人しくしないと、もっと酷い目に遭わせますですよ!」
「っ……!?」

 怖い、怖い、怖い、怖い! 助けて、助けて! やだやだやだ! どう考えても犯罪レベルだろ!? 半泣きになりながら、叫びまわる。

「助けて! ライさん! どこに行ったの!?」
「フフフフッ、マティーからは逃げられませんからね。ハルト様が居る限り、どこまででも追いかけますですよ」
「怖いし! いらないし! そんな展開!」
「ハルトから、手を離すのじゃ!」

 シナがマティーの服を引っ張る。そうだ、少しでも時間を稼いでくれ。ライさんが帰ってきたら、マティーを追い払ってくれる。頑張るシナに、マティーが超笑顔を送る。

「あら? おちびさんもたくさんお着替えしたいのですか? よろしいですよ~。マティーは色々と用意していますのです」
「にゃ~」

 シナが逃げる。ベッドの中に潜り込んで、逃亡だ。ちょっとお願い! 見捨てないで! すぐに、僕とマティーの目が合う。終わったな……。不意に諦める僕。もういいや……。どうせ自分には身を守る程の価値もないだろう。

 マティーに好き放題される僕。あ~あ、好いてくれるのはありがたいけれど、こういう好かれ方はちょっとなぁ……。僕が半死していると、ライさんが帰って来た。すぐにライさんの怒鳴り声。ライさんとマティーの喧嘩が始まる。

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