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彼の指先が示したのは、己自身の影であった。

「あっ!!」

ブランは思わず息を飲んだ。レイロックが指した彼自身の影はあきらかに「濃かった」のだ。あたりを照らすのは月明かりのみだ。ブランも他の者達の影も、かろうじて見える程度である。だがしかし…彼の影はどこまでも黒く、くっきりと彼の輪郭をかたどっていた。じっと見ていると、闇の世界の深淵までもが見えそうな、それだけでも「怪異」と呼ぶに十分なものであった。

「さあ、出てきなさい」

そう言うとレイロックは、何やらブツブツと呪句を唱えた。
すると、驚くべきことに彼の影から何者かが飛び出した!!

「あいつだ」

この中で唯一その「何者か」と面識のあるブン・ラッハがつぶやく。
現れたのは、まさに恐るべき怪物であった。人型ではあったが、その身長はブランの倍近くあり、全身は筋肉の鎧に覆われ、腕などは大人の男の胴ほどある。
頭髪は完全に抜け落ち、身につけているものは、ぼろぼろの腰布一枚だった。

「なんという、おぞましい…」

ハートストンの漏らした感想にはブランも大いに共感できた。
その怪物は、それほどに発達した戦士の体を持ちながら、全く「生きている」という感じがしなかったのだ。
肌は今にも腐敗臭が漂ってきそうな土気色であり、その目からは完全に生気が失われていた。言葉を話すような知能はないようで、口からは絶えず獣のような激しい息づかいが漏れていた。


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