名も無い物語3縦書き表示RDF


名も無い物語3
作:春功



「君が、好きだ」

なんて、恥ずかしくていえない。

いつも、すれ違う姿を見てるだけで。

ただ、それだけで胸が高鳴ってしまう。

君の笑っている顔に、揺れる繊細な黒髪。

それが、僕の目を釘付けにして止まない…。

でもきっと、彼女は僕の事なんて見てないんだ。

だって僕には、何もないから。

誇れるところなんて何もないから。

だからきっと告白してもだめなんだ。


彼女の幸せを考えるからこそ、僕ではだめなんだ。

だからこそ、この気持ちは心の奥底に閉まっておこう。

いつか、必ず自分を誇れるようになったとき、必ず。

「おはよう、宏介君」

それでも…

おはよう、なんて卑怯じゃないか。

そんなふうに声をかけられたら、僕だって。

本当は、好きで好きで、仕方がないのに。

そんな笑顔で言われたら、君に、好きだ、と言いたいじゃないか…

この気持ちが抑えられ無いじゃないか!

「君が、好きだ」

だから、僕はそう言った。

でも、その言葉を言ったのは、彼女がもう先に行ってしまった後で。

ただ、その言葉だけが、彼女を追いかけられず、空しく静かに消えていってしまった…

どうしたらいいんだ…

僕は告白して嫌われたくない。

でも、好きなんだ。

君のことがこんなにも…

前にこんな本を読んだことがある。

その本の主人公は、人を愛する事ができてこそ、人に愛されるのだ、とかそんな事を言っていた。

はっきり言って、クサい言葉だと思う。

クーイとかいう名の主人公がそう言っていた。

馬鹿にされるほどの戯れ言だと分かってる。

でも願わくば、自分もそうなりたいと思う。

クサくったって、恥ずかしくったって、それほど僕は愛しているのだから。

それで、彼女が僕を見てくれるのなら、なんだってできるよ。

冷たい風が、僕の体を覆った。

でも、言えないんだよ。
なぜなら、
彼女には、もう愛しい人が居るんだから。

それを分かっていても、僕は諦められなかったんだ。

未練タラタラだよな。

もし、告白しても、可能性がないのだとしたら。

これだけはさせて下さい。

君を好きでいさせて下さい。

僕にはきっと、そうした方がいいと思うから。

だから、幸せにずっと笑い続けてほしい。それだけで僕はうれしいんだ。

だけど、覚えていてほしいんだ。

僕は君にいつか必ず、告白するから。

惚れられるぐらい、良い男になってさ。

だから、待ってろよ。

必ず、強くなるから。

それまで楽しみにしてやがれ。

彼女がいない中で、僕は自分に言い聞かせるように宣言した。


その中で、自分の心が熱くなるのを感じていた…


苦しみ、辛さ、愛しさを経て、この人間は次に何を思うのか?













ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう