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かまえて狙ってハズします! 作者:寿
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馬でゆくラビット駆除


 だがしかし、身内の色恋話でありながら、俺には関係の無い出来事だ。そうでなければこの年まで、「一人カムイ」などと呼ばれていない。
 それに取り立てて珍しい話でもない。人と人が好き合う。自然にくっつき結ばれる。もしも俺が願うなら、うまく行きますようにということだけ。俺たちチームしおからの場合、ひとつ屋根の下の住人同士。私生活のトラブルは即刻、仕事に影響してくる。そのようなことがありませんように、と願うばかりだ。
 しかし、チビこくて痩せっぽちのライゾウと豊満ボディのマミ。なんとも微笑ましい組み合わせと思う。独身の俺がこんなことを言うのもなんだが、お似合いではなかろうかというのが素直な感想だ。マミも自分を必要としてくれる人間に飢えていたはずだ。猟に一生懸命なばかりでなく、そちらの方にも目を向けてもらいたいと思う。
 さあ、若い二人のことは若い二人にまかせて、俺は作戦の遂行に専念だ。
 最終的な目標はカメロンの射獲。それを達成するために現在、東の森の水場を押さえにかかっている。
 この森は水が豊富だ。どれだけの水場があるかわからない。しかし我々には馬がある。かなりの広範囲を探索できるはずだ。
 まずはギルドで教わった、毒草の群生地を回る。単純に、毒草を食べるポイズンラビットを狙うためだ。ポイズンラビットがいるならば、水場も近い可能性がある。もし無かったとしても、それは人間の足を基準にした話。カメロンの足ならもしかしたら、二〜三キロ離れていてもそばの水場になるかもしれない。だからポイズンラビットがいれば、即座に叩いておく。
 この辺りに毒草の群生地があるはず。そう思って辺りを見回していると、はるか遠くから銃声が聞こえた。サンペイのものだ。デコの二〇番よりは重く、ライゾウの十二番よりは軽い音だ。
 その音に驚いたか、ポイズンラビットが三羽出てきた。
 静かに鉄砲を肩からおろし、くの字に折る。レバー操作や撃鉄を起こす音が、ラビットを刺激しないようにだ。
 弾をこめたら鉄砲を組み直して伸ばす。ラビットとの距離は五〇メートルも無い……と思う。床尾を肩につけストックに頬を乗せ、馬上のままかまえる。
 ここ、と思ったときには引き金を引いていた。轟音が響き、雪柱が立つ。その中にはポイズンラビットがいた。次の一羽は外した。が、これで上々。ラビットは手に入れたし、姿なきカメロンにはプレッシャーをかけることができたのだ。
 馬のままラビットの亡骸のもとへ。さすがに回収は馬をおりた。
 毒消し魔法の袋にラビットを入れて、馬にくくる。
 水場はあるだろうか? 馬の上から眺めたが、それらしいものは無い。次の群生地へ移動することにする。
 まだ太陽は登っていなかったが、周囲が肉眼が見渡すことができるようになった頃、次の群生地に着いた。すでにラビットの姿は無く、あちこち穴だらけ。そしてここには、水場と呼べる川があった。足場の良い場所を選んで、馬に水を飲ませる。川上に歩いて、俺も頭にキンとくるような、冷えた水をいただく。
 再び馬上。この辺りは徹底的に調べあげ、可能な限りポイズンラビットを撃った。もしもカメロンがこの周辺を餌場水場としているなら、二度と近づかないのではないか? というくらいに弾をバラ撒いた。おかげでラビットを収穫は五羽。なかなかの大猟である。
 以前にも記したが、ポイズンラビットは地面の窪みなどに隠れていたりする。最初の一羽を撃つと、そばで隠れていたラビットたちが銃声に驚き、わらわらと出てくるのだ。大猟の理由はそんなところにあった。
 川の手前で左に折れる。ライゾウと合流しようと思ったからだ。そろそろ帰還のことも考えておかないとならない。デコのことはサンペイが回収してくれるはずだ。放っておいても良いだろう。川沿いを上流に向かう。
 また銃声が聞こえた。今度は左手、ライゾウだろう。マミをライギョの池まで送ったせいか、まだ森の中だ。銃声が連続している。豊猟なのか? はたまた外しているのか? ライゾウの技量を考えれば、豊猟と見て差し支えないだろう。
 俺の方はその後、出会い無し。ライゾウには一度チャンスが訪れたらしい。銃声が聞こえてきた。
 川沿いで馬に朝飯を食わせる。俺自身もビスケットで軽く腹拵えする。その最中にライゾウの姿が見えた。
 馬に負担をかけないように、ゆっくりとこちらへ向かってくる。荷袋がふくらんで見えた。どうやら大猟のようだ。
「餌をやってるのかい、ダンナ」
「ああ、お前の馬も腹ペコだろう。ちょうど水場もある」
 ライゾウは馬を降り、川へ向かう。馬と一緒に水を飲み、餌をあたえる。ライゾウもまた、軽い朝食を摂った。
「この川沿い、下流に向かってラビットの団地があったな」
「こっちは森の中がメインだったよ。なかなかの大猟だ」
 サンペイの銃声も、森の中で聞こえたことを告げる。あちこちに水場があるんだねと、ライゾウは笑った。
 一休みしてから、駒を並べて帰還する。もちろん雪を踏んでない、俺とライゾウのたどったルートの、中間を歩く。そこでもワンチャンス。銃声に怯えたのか、群れからはぐれたポイズンラビットを一羽、ライゾウが仕留めた。
 もしもラビットが、怯えて単独行動していたなら、これは良い兆候となる。ここいら周辺は、十分に荒らし回った証拠だからだ。カメロンとしては、餌場を変えなくてはならなくなる。マミのひそむ、ライギョの池に出現する確率が高くなるのだ。
 サンペイ、デコと合流するために林道へ。二人は先に林道で待っていた。
「大猟のようですな、隊長」
「そちらもなかなかの猟果だな」
「町に近いポイントは駄目だったわ。森の中でも、ろくな獲物が居やしないの」
 デコが文句をたれる。その割りに荷袋はふくらんでいた。
「これ? これは川沿いを歩いてからの成果よ。さすがに水辺は、いろいろ集まるわね」
「まあ、森の入り口も猟場としては悪くないんだ。ハトやキジもつく。ポイズンラビットだけがいないんだ、悪く言うな」
「わかってるわよ、それくらい。……で、あんたたちはどうだったのよ?」
 森も奥深い場所は、ラビットがよくついていた。そして川沿いも、なかなか期待がかけられる。ただしあまり上流に行くと、ライゾウのポイント近辺になれば出会いが少なくなる。
「今回はラビット撃ちにかこつけた、カメロンの追い出しに御座る。そこを見れば上々の出来に御座ろう」
「ポイズンラビットの群生も、だいたい把握できたしね」
 サンペイとライゾウが笑う。
「でも馬で歩いて思ったんだけど、本当はポイズンラビットもたくさん森の中にいるのかもしれないわね。あたしたちが見かけないだけで」
「いくら冒険者でも、あまり森の奥までは行かないからな」
 春になったらみんなで馬を使い、一度毒草の群生地を調べ直すのもいいかもしれない。新しい群生地が見つかれば、情報をギルドに高値で売りつけることができるかもしれない。新種の毒草なんて見つかった日にはもう、鉄砲のローンも怖くなくなるだろう。
 ちょっと心踊る話だが、その頃にはサンペイ、アキタに帰るのだろうか? 冬の山越えが大変だから、キアッパに残りチームに所属しているだけだ。
 まあ、猟師にとって明日のことなどどうでも良い。
「マミ姉の方はどうだろね?」
「妖精がついてるから、寂しくはないと思うけど……」
 若手二人は姉貴分の先輩を思ったようだ。しかし心配される部分が、凍死やオオカミじゃなく「寂しい」ってのもマミ、どうよ?
「向かえに行ってやるか」
 昨日の今日でカメロンを当てていたら、それは凄いことだ。しかしそんなことは、いくらなんでもあり得ない。そんなことになれば、俺は息絶えたカメロンに問いかけるだろう。
 怪鳥とか呼ばれてるクセに、そのザマはどうなのよ? と……。
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