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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
1  プロローグ
1/999

1-1 本当の意味で魔法使いになった

―1―


 目が覚めたらよくわからないことになっていた。

 視界がおかしいのである。

 元々、余り視力の良い方では無かったのだが、今はもう本当に薄ぼんやりとしか見えないくらいに目が見えなくなっている。その上、視界がおかしなコトになっている。

 まるでパソコンのマルチディスプレイのような視界に右三つ、左三つの画面がある感じになっている。もうね、見える箇所は増えたけれど何処を見ていたら良いかわからなくて頭が混乱する。

 とりあえず本能に従って足下一杯に広がっている葉っぱを食べる。もしゃもしゃもしゃもしゃ。


 再度、現状確認。

 昨日の夜露が溜まって出来た水たまりに写る自分の姿を見る。青い外皮に節のある身体、腕なのか足なのか左右四本ずつの手足……まんま芋虫です、ありがとうございました。って、どういうことだー!? なんで芋虫!? ま、まぁ、深く考えずに葉っぱを食べよう。もしゃもしゃもしゃもしゃ。


 更に現状確認。今、自分は大きな葉っぱの上に乗っているぽい。そして葉っぱは美味しく戴けるみたい。もしゃもしゃもしゃもしゃ。食っちゃ寝の生活です。


 更に気づいたコト。足下の葉っぱを幾ら食べても(と言っても葉っぱのサイズから言うと自分が食べた分なんて葉っぱに小さな穴を開けるくらいだけれど)次の日には復活している。翌日、起きてみると食べて開けたはずの穴が無くなっているんですよね。つまり食料に困ることは無いッ! ということでもしゃもしゃもしゃもしゃ。


 さてもしゃもしゃ食べているだけでは何なので色々現状を考えることにする。

 寝て起きたら今のようになっていた。

 黙々とストレスの溜まる真っ黒な仕事を終え(ストレスの多い現代社会ですね)コンビニで晩ご飯とショートケーキを買って……そうだ、思い出したッ!

 あれは誕生日の前日だったんです。一人寂しく誕生日の為にコンビニケーキを買って、ついに自分も魔法使いの仲間入りか、とさめざめと布団の中で泣きはらしていたんですよねぇ。もうね、まさか自分が魔法使いになるとは思っていなかったので本当に哀しかったんです。

 ネンレイ=カノジョイナイレキデス。


 ホント、モテナカッタ。


 自分で言うのも何ですが、それほど容姿が悪かったとは思わないんですよ。ちょっと中性的で背もそれほど高くは無かったけれど年齢よりも幾分か若く見られる程度の普通に中程度の容姿ではあったはずだ。

 性格もそこまでは悪くなかったと……うん、多分、大丈夫だったと思う、思いたい。確かにすぐ『死ねば良いのに』とか『絶滅しろ』とか言っていた覚えはあるけれど、それくらい普通だよね? ね? 会社の後輩の子にも慕われていたし……いや、あいつは飯を奢ってやった時だけ「流石、先輩です。私も先輩みたいになりたいです」と調子の良いことを言ってくれるが、すぐに「え、先輩、その年で彼女の一人も居ないんですか? m9(^Д ^)」「一緒に帰って誤解されると困るのでー」なんてからかってくる『死ねば良いのに』側の人間だった。え、俺ってもしかして、そんなに慕われてなかった? え? とまぁ、色々話が脱線したけれど誕生日の前日までの記憶はあるんだよなぁ。


 それがどうしてこうなった。


 ……まぁ、よくわからないので葉っぱを食べよう。もしゃもしゃもしゃ。




―2―


 飽きもせずにもしゃもしゃと食べては寝てを繰り返している。


 そして変化は突然に訪れた。


 視界に『もや』がかかるようになったのだ。最初は霧でも出てきたのかな、と思ったが、どうにも霧とは違う感じです。色が赤かったり、青かったり、黒かったり……もうね、最初はついに気が狂ったかッ! と思ったね。

 本能に従って、その霧? を吸い込む。お腹の中にある不思議器官に取り込むことを意識して吸い込む。どんどん吸い込む。何故、自分でもそうするのか分からない、それが本能だから!

 どれくらい吸い込んだだろうか。溜まりに溜まった謎の霧を謎器官の中で精製し吐き出す。


――《糸を吐く》――


 口から糸が吐き出される……で? と、とにかく考えよう。

 これ、口から出てるぽいけど口ではなく謎器官からだよねぇ。


 何度か糸を吐いて色々確認してみる。


 連続で糸を吐くことは出来ない。これはリキャストタイムみたいなモノなんだろうか?

 

 糸を出すのは疲れる。なんというか心的なモノが削られている気がする。


 自分の意志で糸の長さを変えられるし、吐き出す勢いも変えられる。長く伸ばせば伸ばすほど疲れる気がする。


 糸を吐き出したまま(口に繋げたまま)だと糸は粘着力を持っており、色々なモノにくっつけることが出来る。まるで某蜘蛛の人みたいなことが出来そうです。


 糸を切ると粘着力は消える。とても丈夫で綺麗な絹糸みたいな感じになる。


 糸を吐き疲れたら、足下の葉っぱを食べ、寝て、起きたら糸を吐き、実験を繰り返していく。

 何度も何度も糸を吐いていると待ち時間的なモノが短くなって連続で糸が吐けるようになってくる……。スキルレベルアップって感じだね。

 何度も何度も糸を吐いて気付いたんですが、これ魔法的な何かじゃね? 周りからだと口から出しているように見えるのだろうけれど、これ不思議エネルギーを溜めた謎器官から出しているし『通常の物理法則ではない』だーね。

 芋虫の本能に従って糸を出しているけど上手くすれば他の何かを生み出せるんじゃね? それは『奇跡の閃きだったのか必然だったのか』とフレーズが浮かんでくるくらいの思いつき。

 もし、この世界が異世界的な何かで、漂っている霧のようなモノが魔力的な何かだとするのならば……!?


 それはラノベのような厨二的な思い付き。


 まずは氷をイメージしよう。ゲームでは不遇なコトが多い氷魔法が自分は大好きなので、氷をイメージする。

 そして糸を吐いたときと同じ感覚で氷を精製しようとする……しかし上手くいかない。が、謎器官に何かが生まれそうな感覚。イメージ力が足りないのか、方法に何が足りないのか……。

 何度か試行錯誤を繰り返し、なんとなく手応えを感じる。多分、コレ、イメージ力だ。

 まずは水をイメージする。そして水が凍ってつららのようになっていく力をイメージする。


――[アイスニードル]――


 何時の間にか自分の目の前に手のひらほどの小さな氷の槍が浮いていた。


 で、出来たッ! 

 うおおぉぉぉぉ、魔法です。魔法ですよッ!

 目に見える形で現実に魔法がぁッ!

 

 その瞬間、俺は本当の意味で魔法使いになった。

 そして何かにごっそりと力を持って行かれる感覚とともに俺は気を失った。


4月24日修正

誤字修正


6月2日追加

昨日の夜露が溜まって出来た水たまりに写る自分の姿を見る

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― 新着の感想 ―
手のひらサイズのアイスニードル・・・ 芋虫サイズの手のひらサイズだよね!? 絶対可愛い感じのやつじゃんか!それでいて将来火力高かったらロマンしかない。
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