表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第五話S 受け継がれる精神
153/359

受け継がれる精神Ⅶ

「回収した時、既にライアスさんは亡くなっていました」


「……あの傷なら、そうだろうね」


 喪に服しているかのような、辛気臭い顔をしながらも、カイトの言葉には強い意思が籠っていた。


「やるべき事は、分かりましたか?」


「遅すぎたけどね、でも……俺はようやく気付けたんだと思う」


 手に握った狂魂槌を眺めながら、カイトは語り始める。


「結局俺は、逃げようとしていただけなんだよ。守りきれなかった、救えなかった多くの人。ブラストさんの託してくれた希望。それらから目を背けようとしていた」


 カイトは言い、シアンに目を向けた。「死んだ方が楽なんていうのは、当たり前だったんだ」


「やっと気付いてくれたのですね」


「それを意図してあんな事をやらせていたの?」


 笑顔のまま頷き、シアンはそれまで厳しくしていた声色を変える。


「ニオさんにも、ライアスさんにも頼みました。このままカイトがいなくなれば、この戦争に勝てないと思いましたので」


「はは、シアンらしいね」


「――それと、わたしもカイトが心配だったので」


 顔を赤らめたシアンは背を向け、小さな声で呟いた。


「シアン、優しいよね」


「そうでもないですよ。ただ自分勝手なだけです」


「それは俺も同じだよ」


「えっ」


「俺、気付かされたんだよ。戦争を止めるだなんて言ってたけど、実際は大切な人達を守りたい、ただそれだけを願っていたんだって」


「大切な人……ですか」


「うん。ニオやシアン、水の国で出会った皆を守りたいんだ。だから、人を助ける為だったら、命令を破るかもしれないね」


 命令違反をする、などと言われたにもかかわらず、シアンは満面の笑みを浮かべて笑った。


「それでいいのですよ。やっぱり、カイトさんはそうやって周囲に気兼ねなく、真っ直ぐな正義を掲げている時のほうが格好いいですよ」


 シアンが抱いていた不満とは、詰まる所ここに掛かっている。


 ただ強いだけの戦力ならば代替が利くが、強い上に特殊な精神性を持っているからこそ、シアンは見捨てようとはしなかった。


「……魔物の気配を感じます。カイトは防御の為に出てください」


「おう、任せておいてよ!」


 悩みを断ち切ったカイトは健やかな顔で親指を立てると、そのまま走り去っていった。


「ライアスさん、ありがとうございます」


 誰もいない一室で、シアンはそう呟いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ