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校内対抗戦~学園最強対脳筋不良~

大変お待たせいたしました……申し訳ありません。

大学の方がひと段落したので、再び投稿を続けられたらと思います。

『いやあ、まさかの展開ですね! SクラスがFクラスに押されています! これは大番狂わせでしょうか!?』

『決してSクラスが弱いのではなく、Fクラスの生徒が強すぎるんですね』

『なるほど! 意味が分かりませんね!』


 ブルードの試合が終わると、マイケルたちはそんな会話をしていた。

 気づかないうちに、生徒たちまでとんでもない存在になっていたようです。まあ教える前から結果は見えてたけどね! 泣いてないよ!

 試合を終えたブルードが戻ってくると、アグノスに向かい合い、拳を突き出した。


「任せたぞ」

「っ! 任せとけ!」


 そして、アグノスはブルードの拳に同じように拳を突き合わせた。

 ……ナンダコレ。すげー青春してる。羨ましい。

 というか、普段言い争いみたいなの多いけど、お前ら仲良しだろ! 素直じゃねぇな! もっとやれ!

 ふと、Sクラス側に視線を向けると、あのいちいち嫌味を言ってきた先生が焦っていた。


「バカなバカなバカなバカな!? う、ウソだ! 不正をしたに決まっている! 司会! アイツらは不正をしているんだっ!」


 おおう。いわれのない罪を着せられそうだぜ。

 Sクラスの先生は、唾を飛ばしながら喚き散らす。

 だが、そんな様子を無視して、司会は進んでいった。


『さあ、次の試合に移りましょう! 次の試合は、あのAクラスのジオニス選手のお兄さんである、ロベルト選手が登場しますよ!』

『ほう。Aクラス対Cクラスのときに、圧倒的実力を見せつけていた生徒ですね? それのお兄さんということは期待できますね』


 何と、アグノスの対戦相手は、ランゼさんの息子さんであるロベルトらしい。

 どんな生徒だ? と首を傾げていると、戻って来たばかりのブルードが、顔を顰めていた。


「最悪だな……」

「え? どうして?」

「誠一先生は知らないかもしれないが、ロベルトはSクラストップ――――つまり、学園最強なのだ」

「へぇ……」


 ランゼさんの息子さんは、スゲェ優秀なんだなあ。

 そんなことを思っていると、闘技場には、金髪碧眼のクールな印象を受ける、すごいイケメンが立っていた。

 何だろう……ブルードと似た、王様の雰囲気って言うのだろうか? とにかく、俺みたいな一般人とは違う、高貴な雰囲気を感じる。

 思わずロベルトの雰囲気に圧倒されていると、ブルードはため息交じりに言った。


「それに、ロベルトは俺たちに対して、普通に接してくれる数少ない人間なのだ。正直、やりにくいだろう」

「あー……」


 本当に運悪いな! いや、戦いなんだし、アグノスのことだから手を抜くとか絶対ないだろうけど、相手としては何とも戦いにくい! こっちの事情が事情だしね!

 アグノスは、自身の武器である釘バットを肩に担ぎながら、闘技場に立った。


「まさか、アンタと戦うことになるとはなぁ……」

「……この度は、我々Sクラスが貴殿らに不快な思いをさせたこと、大変申し訳なく思う。すまなかった」


 アグノスが向かい合った瞬間、ロベルトは頭を下げた。


「気にしてねぇ……って言えば嘘になるが、それでもアンタには何の恨みもねぇよ」

「俺個人がよくとも、結果的に周囲のそれを抑えられなかったのも事実だ。まあ、Sクラス内でそのような立場にいるわけでもないのだがな……」


 呆れと疲労の溜息を吐くロベルト。

 学園最強って言われてるのに、Sクラスの中心人物じゃないっていうのも変な話だね。

 いや、あのSクラスならおかしくもないか……。


「もう忘れようぜ? んなことより、俺はお前と本気で戦えるのが楽しみで仕方ねぇんだ!」

「……そうか。そう言ってもらえるのなら……俺も本気で相手をしよう」

「応! 望むところよっ!」


 二人の会話を聴いて、司会の二人は驚く。


『なんということでしょう……三組目にしてようやく清々しい戦いが見られそうですよ!』

『そもそも、Sクラスにどれだけ性格に難のある人物が集まっているんですか? SクラスのSはスペシャルのSじゃなく、性悪のSなんですかね?』

『そうかもしれませんね!』


 認めるんかいっ!


『それはともかく、早速試合の方を始めていきましょう! ロベルト選手対アグノス選手……試合、開始!』


 リリーさんの合図と同時に、アグノスはその場から一気に駆け出した。


「先手必勝だぜっ! オラアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 そんな威勢のいいスタートダッシュを見て、ブルードは頭を抱えた。


「あのバカ……学園最強相手に無策に突撃するヤツがあるか……! いや、それがアイツ一人だった……」


 ブルードの言った通り、アグノスは勢いよく釘バットを振りかぶり、ロベルトに突撃するも、軽くかわされ、ロベルトは冷静に魔法を放ってきた。


「『雷雨らいう』」


 右手をアグノスに向けて突き出すと、空中からアグノスに向けて、雷の槍が、大量に降って来たのだ。


「おわっ!? 雷の雨だぁ!? どこで雨宿りすればいいんだよっ!」


 そういう問題じゃない。

 とはいえ、槍が降るなんて言葉があったけど、雷の槍なんて降られたら困るよなぁ。

 それよりも、アグノスは次々と襲い掛かる雷の槍を、持ち前の身体能力を活かして避け続けた。

 ……やはり、ブルードやベアードと同じで、魔法を使う気配がない。魔法を使えば、別に身体能力にモノを言わせなくても対処できるのだが……。


「まさかすべて躱されるとはな……」

「これ以上の攻撃を、俺は知ってるからな! オラ、気ぃ抜くと痛い目見るぜ!」

「くっ!」


 アグノスは、雷の雨を避け続けながらもロベルトとの距離を詰めており、雷の雨をかいくぐった後、そのまま釘バットを力強く振るった。

 それを、ロベルトは腰に差していたロングソードで受け止める。

 そして、その場でアグノスとロベルトは怒涛の剣戟を繰り広げた。


「やるじゃねぇか! 魔法だけが得意なんだと思ってたぜ!」

「大したことはない。だが、どうやら近接戦闘は貴殿が上手のようだ。なら……!」


 激しくアグノスとロベルトが剣を打ち合い、鍔迫り合いを続けていたが、ロベルトがさらに力を加え、アグノスを大きく吹き飛ばした。


「なあっ!? トンデモねぇ力だな!」


 吹っ飛ばされたアグノスは、すぐに体勢を立て直したが、ロベルトはその間に距離を置き、地面に手をついていた。


「『雷針柱らいしんちゅう』」


 すると、ロベルトが手をついた場所からアグノスめがけて、鋭い雷の柱が次々と地面から発生した。


「上の次は下かよ!?」


 先ほどのように、アグノスは避け続けようとしたが、上からの攻撃より地面からの攻撃の方が避けにくいらしく、数発ほど体に雷の柱を受けていた。


「があああああっ!」


 それでも、アグノスは襲い来る雷を釘バットで防ぎ切り、何とか耐え抜いた。


「チクショウ……腕が痺れたぜ……」


 アグノスの体中から煙が出ている。


「まさかこれすらも防がれるとはな……さすがに自信を喪失しそうだ。もっと精進せねばな」


 そんなアグノスの様子を見て、ロベルトも警戒を忘れず、それでいてさらに高みに行くことを決意していた。……こういうのが本当に凄いヤツなんだろうな。


「これは様子見などと言ってられないな……」

「あん?」

「――――出し惜しみはなしだ」

「!」


 アグノスが首を傾げると、ロベルトは一瞬目を瞑り――――。


「『雷神装らいじんそう』」

「ハァ!?」


 ロベルトが目を開けた瞬間、ロベルトの体には、雷で作られた鎧が纏われていた。

 その姿は神々しく、男心をくすぐるようなカッコイイデザインだった。


「かっけぇぇぇぇぇぇえええええええ!」

「あのバカは……」


 アグノスは試合中ということも忘れて絶叫していた。純粋すぎるだろ!

 俺もアグノスの様子に内心でツッコんでいたが、ブルードは頭を抱える。

 というか、あの魔法は何だ? 雷属性の魔法一覧には存在しない魔法だけど……。

 そんな風に思っていると、脳内に久々にアナウンスが流れてきた。


『雷属性オリジナル魔法【雷神装】を習得しました』


 よし、俺の体が余計なことをしてくれたのは分かった。

 いやだってオリジナル魔法ですよ!? 他人が頑張って編み出した魔法をこんなに簡単に習得しちゃってさぁ!?

 俺は俺で別の意味で頭を抱えていると、司会のリリーさんたちも驚いている様子だった。


『な、何なんでしょうか!? あの姿! あの魔法! 私は見たことがありません!』

『……あの魔法は、見た目の通り雷を身に纏うのですが、その雷の衣は並の鎧を上回る防御力を誇り、何より速さが跳ね上がるのです』

『マイケルさん、あの魔法を知っているのですか!?』

『ええ。あの魔法は【雷女帝】――――エレミナ・キサ・ウィンブルグ。現役のS級冒険者の魔法ですよ』

『ええええええええええっ!? ウィンブルグってことは……ロベルト選手のお母様!?』

『そういうことでしょう。とはいえ、あの魔法を【雷女帝】の他に再現できる存在がいたとは……』


 俺もたった今使えるようになりました。ごめんなさい。

 ていうか、ロベルトのお母さん……つまり、ランゼさんの奥さんってまさかのS級冒険者!? ということは変態!?

 ……いや、非常に失礼なことを言ってるのは分かるが、前例が酷いからね! ガルガンドさんとガッスルたちだけども!

 まさかいわゆるお妃様の地位にいながら冒険者であるなんて……王城に行ったとき、会えなかったのもどこかで冒険してたからなのだろうか? だとするとアグレッシブすぎる。

 そんなことを思っていると、ロベルトは苦笑い気味に言った。


「まあ、俺は母上のように長時間この魔法は使えないがな。だが――――」

「なっ!?」


 一瞬、ロベルトの姿がぶれたかと思うと、すさまじいスピードでアグノスに接近し、剣を横に振るった。


「ッ!?」


 本能的に危険を察したアグノスは、無意識に体が防御態勢をとったが、関係ないとばかりに大きく吹っ飛ばされた。


「まだまだ行くぞ」


 そこからは圧倒的だった。

 全方向からの超高速の斬撃を集中砲火されるだけでなく、蹴りや拳なども絶え間なく繰り出され続けるのだ。

 俺は目で追う事が出来るが、正直他の人間にはロベルトの姿は目に映っておらず、アグノスが勝手にいろんな方向に吹っ飛ばされているように見えるだろう。


「――――!」


 斬撃などの余波で地面が抉れ、一発一発の威力もとんでもないことが見て分かる。

 そんな中、アグノスに反撃する暇などなく、ただ一方的に打ちのめされ続けた。

 見ているだけでも痛々しいほどに、アグノスは傷ついていた。

 もう、いつ倒れてもおかしくない。

 だが――――。


「くっ!」


 アグノスは、倒れない。

 むしろ闘志を燃やし、ギラギラと目を輝かせながら、じっと攻撃を耐え続けているのだ。

 その様子に、押しているはずのロベルトに焦りの表情が見える。


「ここまでしても倒れないか……!」

「んなヤワな鍛え方してねぇよ!」

「そうか……なら――――!」


 突然、ロベルトの背後に、大量の雷の槍が出現した。


「もう俺に余力はない。これが全力だ……!」

「いいぜ……真っ向から叩き伏せてやんよっ!」


 アグノスはふらふらになりながらも、真正面に釘バットを構えた。


「『雷極槍らいきょくそう』!」


 そして、大量の雷の槍は、一斉に放たれると、一つの軌道に集合し、やがて極大な一本の雷の槍が完成した。

 その槍は、アグノスを貫かんと、圧倒的なスピードで飛翔する。

 それに対して、アグノスは――――。


「マジのマジのマジのマジのマジのマジのマジのマジのマジのマジのマジの一撃ぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」


 全力でフルスイングし、極大の槍と釘バットが正面衝突した。

 凄まじい力の奔流のようなモノが、釘バットと極大の槍が衝突している部分から放出されており、見ているだけでもとんでもない力が加わっていることが分かる。

 アグノスは、血反吐を吐く勢いで叫んだ。


「気合が……足りねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええ!」


 すると、徐々にアグノスの方が槍を押し返していき――――。


「マジスゲェ気合だあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 ついに、アグノスは雷の槍を薙ぎ払った。つか語彙力ヤベェ。


「だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 その勢いのまま、アグノスはロベルトに迫る。

 ロベルトも、言葉通り余力を使い果たしたのか、雷の鎧は消えていた。

 それでも、ロベルトも気力を振り絞り、吼えた。

 そして――――。


「……」

「……」


 アグノスの首元と、ロベルトの首元に、お互いの武器が突きつけられていた。

 会場全体を、沈黙が包む。

 最初に我に返ったリリーさんが、勝敗を告げた。


『はっ!? こ、これは……引き分け! 引き分けです!』


 何と、二人が武器を首に突きつけるタイミングは、俺から見ても全く同じだったのだ。

 つまり、今回は引き分けである。

 司会の言葉を聞き、二人は静かに武器を下ろした。


「引き分けか……いや、貴殿が魔法を使えていたのなら、結果はまた変わっていただろう」

「いや? これが俺の全力だ。魔法も一つの力だろうが、俺の一番はやっぱり、鍛え抜いたこの体だからよ」

「……そうか。何はともあれ、楽しかった。ありがとう」

「応! 俺も楽しかったぜ!」


 そういうと、二人はその場で握手をしたのだった。

 ……だが、これでFクラスとSクラスの引き分けが確定した。


『ええっと……この試合が引き分けということは……Fクラスが次に出場する選手がいなければ、人数の都合上、引き分けになりますね』

『ふむ……人数が足りず、Fクラスが二勝しているにも関わらず引き分けというのも変な話ですがね。まあ五人中二人勝ち、一人が引き分けならばそういうこともあるでしょう』


 そんな司会の会話を聴いていると、なぜか闘技場にSクラスの生徒が一人立っていた。

 よく見ると、どこかレオンに似た雰囲気がある。

 その生徒は、俺たちの方を見て、見下しながら言った。


「そこにまだ一人戦えるヤツがいるというのに、それで引き分けなどバカか? それはこの試合そのものを放棄したのと同じだ」


 ちょっと何を言ってるのか分かりませんねぇ。

 仮にレオンが試合に出たとして、それでレオンが勝ってしまえば、Sクラスの負けが確定するっていうのに……。

 というか、このまま進めばSクラスは無条件で引き分けになれるんだから、二敗してる今、変な動きをおさない方がいいんじゃないだろうか?


「それとも何か? 戦えないとでも言うんじゃないだろうな? いや、有り得るな! なんせ無能なFクラスだもんなぁ!? さっきまでの試合だってそうだ。魔法が使えないお前らに慈悲をかけて手を抜いてやったのだ! お前らなんざ本気を出せば一瞬で叩きのめせるんだ。所詮、魔法も使えない、努力も実を結ばないザコどもだもんなぁ!?」


 いや、君は今までの試合のどこを見てきたんだ?

 本気じゃなかったとしても、その結果やられてちゃあ意味ないし、何より無能にやられた他の生徒は何になるの?

 まあ、これは俺たちをただ煽ってるだけなんだろうが。

 ブルードたちは、相手の生徒の言葉に顔を顰めるも、何も言わなかった。

 よくもまあこんなにもいろいろとバカにするような言葉が出てくるもんだと思っていたときだった。


「……」

「え、レオン?」


 不意に、レオンが立ち上がったのだった。

そろそろ物語が動き始めます。

楽しみにしていただけたら幸いです。

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