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力の使い方

 教室に移動した後、ベアトリスさんに手伝ってもらいながら何とかホームルームを終えた俺は、午前中の授業である座学をベアトリスさんが教えるのを見ていた。

 ちなみに、アルの方でも他のクラスで授業があるらしいので、今日はFクラスにはいない。アルの教師姿見てみたいな。

 ベアトリスさんの授業はとても分かりやすく、勉強が苦手そうなアグノスも、ベアトリスさんがアグノスが好きなものを話に交えながら教えることで、集中力を持続させようなど細かい気配りを感じられた。

 それに、何というか……授業をしているときのベアトリスさんは本当に生き生きとしていて、この人はアグノスたちに授業をするのが楽しいのだろうと見ている俺も感じる事が出来た。

 やっぱり、先生がしかめっ面で授業をしてくれるより、楽しそうにしてくれる方が受ける側も気持ち的に楽だよな。まあ、これは人それぞれなのかもしれないけど。

 そんなこんなで、座学を終えた後、サリアたちと昼食を終え、午後からは俺がアグノスたちの実力を見るために使用した闘技場で、魔法を教えることになった。

 闘技場に行くと、幸いなことに、俺たちの他に人の姿はない。やった、貸し切りだぜ。

 みんな闘技場に来たことを確認し、口を開こうとしたが、そこでふと気付いた。

 やはりというか、全員の目には諦めが浮かんでおり、ベアトリスさんでさえ、不安そうな表情を浮かべていた。うーん、こればっかりはなぁ……。

 うん、何とかなるだろ!


「じゃあ、アグノス。『ファイア』の呪文を唱えてくれ」

「いきなりっスか!? なんか、こう……難しい話とかはないんスか?」

「ない」

「マジッすか!?」

「逆に訊くけど、難しい話をしてほしいわけ?」

「遠慮します!」

「素直でよろしい」

「でも……いったい、何を根拠に……」

「なんとなく」

「なんとなく!?」


 スキルで魔法を使えるようにするとか言っても信じないだろうし。まあ、やれば分かることだしな。

 疑いタップリの目を向けながらも、俺がやるように促すとアグノスは片手を前に突き出し、言われた通り『ファイア』の呪文を唱えた。

 ちなみに、アグノスは火属性に特化しており、他の属性は使えない。


「『ファイア』! ほら、やっぱり――――できたよ」

『!?』


 アグノスの掌の上には、炎の塊が浮いていた。

 その光景を見て、サリアとルルネ、それと表情が分からないベアード以外の全員が目玉が飛び出しそうなほど驚いていた。あ、何気にオリガちゃんの前で『指導』スキルを使うのは初めてだったな。


「な? できた」

「いやいやいやいや、マジで!? マジで魔法使えてる!? この俺が!?」

「そう、アグノスが」

「――――兄貴、どんな魔法使ったんスか!?」

「火属性の魔法」

「そうじゃなくて!? どんな魔法を使えば俺が魔法を使えるようになるんスか!?」


 魔法を使えるようにする魔法って、なんかおもしろいな。実際はスキルだけど。


「ほら、せっかくだから『ファイアウォール』も使ってみな」

「えええっ!? いやっ、流石に中級魔法の『ファイアウォール』は飛びすぎじゃ――――できたよ」


 アグノスが、会話のなかとはいえ『ファイアウォール』と唱えた瞬間、アグノスの掌の上にあった炎の塊は地面に飛び移り、底からアグノスの視界いっぱいに広がるレベルの炎の壁が出現した。


「俺の体どうした!? これ、本当に俺の体かよ!?」

「……落ち着け、貴様のそのダサい髪型はどこからどう見ても貴様だろう」

「ハッ!? 本当だ!? ってダサくねぇよ!」


 少し冷静さを取り戻したブルードに指摘され、アグノスは自分の髪を触りながら驚いていた。


「俺にこんな力が……俺ってすげぇぇぇぇぇぇええええええええええっ!」

「バカか、誠一先生の力だろうが」

「あ、ハイ」

「いや、そんなことないよ。俺は、ただキッカケを与えただけだから」


 そう、本当にキッカケを与えただけなのだ。

 アグノスたちは、元から持っていた才能を、俺がただ使えるようにしただけ。


「さて、これで信じてもらえただろう。じゃあ……みんなも魔法を使ってみようか?」


 俺がそう言うと、呆然としていたみんなは、目を輝かせたのだった。


◆◇◆


 あのあと、無事みんな魔法を使えるようになった。

 アグノスは火属性を、ブルードは水属性と氷属性、ベアードは土属性を。

 ヘレンは火属性と土属性、レイチェルは光属性、イレーネは闇属性、そしてフローラは風属性と雷属性を発現させたのだ。


「……この俺が、魔法を使う日が来るとはな……」

『誠一先生はすごいな』

「……強い上に、こんなに簡単に魔法を使えるようにするなんて、どんな化物よ……」

「誠一先生はすごい人だったんですねぇ~」

「フ……フフフ……フフフフフ。これで、私の欠点はなくなりました! パーフェクツ! ビューティフォー! 完全無欠、最強のイレーネ・プライムが完成しましたっ!」

「おお!? ボク二つも属性が使えるの!? すごくない!? ねぇ、これってすごくない!?」


 みんな、俺が教えた魔法をどんどん使いだしている。

 俺のように、アホみたいな規模ではないモノの、たった数分で最上級魔法まで使えるようになったのだ。

 アルに魔法を教えた時にも起きた現象だが、教える相手の属性に合わせれば、俺が覚えている魔法ならいくらでも簡単に使えるようにできちゃうのだ。

 ……これさ、簡単に使えるようにしてるけど、どっかの国とかに目をつけられたら厄介なことになるよな。なんせ、最上級魔法を使える魔法使いを、インスタントラーメンより簡単にたくさん生み出せちゃうわけだから、戦争とかの兵力補充とかに使われないわけがないよね。主にカイゼル帝国とかカイゼル帝国とかカイゼル帝国とか……うん、カイゼル帝国とか。

 まあ、向こうから手を出してくるなら、そりゃ全力でお相手しますけどね?

 一人黒い笑みを浮かべていると、未だに呆然としていたベアトリスさんが小さく呟いた。


「…………私は、夢でも見ているのでしょうか…………」

「え?」

「誠一さん……貴方はどれだけすごいことをしたのか分かってますか?」

「えっと……微妙です」

「……今まで、魔法を使えなかった生徒たちが、魔法を使えるようになったのですよ? 私がどれだけ頑張ってもできなかったことを、こんなに簡単に……」


 そう言うと、ベアトリスさんは涙を流し始めた。って、泣き出した!? これ、完全に俺のせいだよね!?

 そりゃそうか! 自分ができなかったことをアッサリやられたわけだからな! ちょっとは気を利かせろよ、過去の俺! 今の俺が困るだろうが!

 思わずオロオロとしていると、ベアトリスさんは涙を拭き、少し笑いながら言った。


「す、すみません……嬉しくて、つい……」

「え!? 嬉しいんですか!? 怒ってません?」

「? なぜ怒る必要があるのですか? 生徒たちの未来が、これで明るくなったんですよ? 怒る要素も、悲しむ要素もないじゃないですか」


 そう言うと、ベアトリスさんは眩しい笑顔を浮かべた。

 なに!? この先生! いい人すぎる! 誰だよ、あの廊下でベアトリスさんに顎クイしたヤツ! もう名前忘れたけど、なにそんなヤツにこんないい人のことを触れさせてんだ、過去の俺! 不甲斐ねぇな! 阻止しろよ! 結局俺のことだけどね!

 あの時は気にも留めなかったが、今になって殴っとけばよかったかな? と思ってしまったのだった。


「……誠一お兄ちゃん、すごい……」

「でしょー? 誠一ってすごいよね!」

「さすが私の主様です!」


 サリアたちも、俺のことを褒めてくれた。……ヤバイ、嬉しい。

 あまり褒められ慣れてないので、少し照れていたが、すぐに気を引き締めると一人の生徒に視線を向けた。


「レオン」

「ひっ!?」


 名前を呼んだだけなのだが、レオンは酷く怯えた様子を見せ、謝罪の言葉を口にし始めた。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 頭を抱え、蹲るレオンの様子を見て、俺はすぐに駆け寄った。

 ベアトリスさんも、レオン君の異常を察知し、駆け寄って来る。


「おい、大丈夫か? そんなに怖がらなくても……」


 もしかして、俺が怖がられてる? 何もしてないのに? それは流石に傷ついちゃうよ? 化物みたいなステータスでも、心はシャボン玉だからね? だからお願いしますよ、俺の体さん。斜め上に進化しないでください。

 俺が声をかけると、レオンは怯えを強め、さらに言葉の内容を悪化させた。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい! もう二度と魔法は使いません! 使わないから、もう暴力を振るわないでください! 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……もう痛いのは――――」

「!?」

「レオン君!?」


 そこまで言いかけて、レオンは突然気を失った。


「レオン!? しっかりしろ! どうした!? もしかして俺怖い!? そんな凶悪な顔してた!? フードで見えないと思ったんだけどさ!?」

「誠一さんも落ち着いてください! 私は取りあえず、レオン君を保健室に連れて行きますので、他の生徒たちを見ててください」

「わ、分かりました」


 本当なら、男の俺がレオンを連れて行くべきなのだろうが、レオンが目を覚ました時に使い物にならないであろう俺が行くよりは、安心できるベアトリスさんがいた方がいいだろう。

 小柄なレオンと言えども、男なので重いかと思っていたのだが、ベアトリスさんは軽々とレオンをお姫様抱っこして連れて行った。……ベアトリスさんがお姫様抱っこしてるのはすごい違和感だが、抱っこされてるレオンが違和感ねぇぞ。

 そんなことを考えていると、サリアたちが俺のもとに来た。


「誠一、どうしたの? レオン君は大丈夫?」

「ああ……ベアトリスさんがついてるから大丈夫だと思うけど……」

「兄貴! レオンのヤツ、どうしたんですか!?」


 サリアと話していると、レオンが倒れる様子を見ていた他の生徒も駆け寄ってきた。


「いや、俺には何が何だか……」

「フン。恐らく、何かしらのトラウマが蘇ったのだろう」

「え?」


 腕を組んで、相変わらず優雅な態度のブルードがそう言った。


「先ほどの会話を聴いていると、レオンは『もう二度と魔法は使わない』と言っていた。つまり、レオンは元々魔法が使えるということだ。そして、何より『暴力を振るわないで』と言っていた。……何があったのか分からないが、それでもアイツにとって魔法がトラウマなのは間違いないだろうな」

「……」


 あまりにも冷静な分析をするブルードに、俺は呆気にとられていた。ホント、この人優秀過ぎない? それとも俺がバカなだけ? あ、そんな気がしてきた。


「それで? 誠一先生、これからどうするのだ?」

「どうするって言われてもなぁ……取りあえず、ベアトリスさんが帰ってくるまでは、せっかくだから好きに魔法を使ってみれば――――」


 そこまで言いかけた瞬間だった。


「おや? これはこれは! 無能集団のFクラスではないですか!」

「あ」


 何と、朝ベアトリスさんに絡んできた男が、自分のクラスの生徒を引き連れてやって来たのだ。


「アナタは! ……あ、えっと……あー……うん。……何の用ですか?」

「この私の名前を忘れたのか!?」

「すみません……興味がなくて……」

「興味がない!?」

「……ぷっ」


 あ、思わず口に出ちゃったよ。いやぁ、失敗失敗。だから、オリガちゃんは笑わないの!

 そんな俺の態度にこめかみをヒクつかせる相手の先生。ホント、名前なんだっけ? 完全記憶さん、仕事を……いや、この人の名前はそこまで重要でもないか。そもそも、自己紹介されてないはず。たぶん。


「ふ……ふふふふ……無能集団の教師は、所詮無能というわけか……いいだろう。教えてやろうじゃないか……私はクリフ・ボルド! カイゼル帝国の侯爵だぞ、頭が高い!」

「はぁ。そりゃあ俺の方が身長高いですからね」

「……ぷふっ」


 進化の実のおかげで、進化した俺の体はモデルのような身長と、体格を手に入れていたため、背は結構高い。嬉しい限りだな。でもそのことを言ってるんじゃないのは俺でも分かる。なに、俺のお茶目よ。それと、オリガちゃん。俺の服の裾を掴むのはいいけど、堪えられてないよ。むしろ吹き出しちゃってるよ。


「貴様ぁ……! 無能の分際で、この俺をバカにするなど……!」

「オウオウ、いきなりやってきてよぉ、人のことを無能呼ばわりとはいい度胸じゃねぇか、アァン!?」


 すると、今まで黙って見ていたアグノスがとうとう我慢できずにそう口を出した。

 しかし、相手の生徒たちからも、何やら取り巻きを引き連れた、どこかブルードに似ている男子生徒が姿を現した。


「無能を無能と呼んで何が悪い? ああ、そんなことも分からないのだな。無能だから仕方がないな」

「んだとゴラ゛ァ!?」

「おお、人語すら解さない野蛮なヤツめ。こんな連中を相手にしている担任や副担も相当な無能だな」

「テメェ……兄貴やベアトリスの姐さんをバカにすんじゃねぇ……!」

「だからアグノス、やめろ!」


 今にも飛びかかりそうな雰囲気だったアグノスを、俺は制止させた。


「なっ!? どうして止めるんスか!?」

「え、だって無駄じゃん。その時間が」

「へ!?」

「俺たちの大切な時間だぜ? いちいちこんなことに使うのもバカらしくね?」

「……誠一お兄ちゃん……もうちょっと……興味をもって……ぷっ」


 そう言われてもなぁ……いちいち敵意を向けてくる人に愛想振りまき続けるほど俺は人間デキてない。

 ただ、社会に出れば、人間関係も大事になって来るし、そんなことも多くあるんだろうけど、俺にとって、このクリフ先生とやらがいようがいまいが、何ら支障はないしね。

 俺の言葉が聞こえていたクリフ先生は、唖然とした様子だったが、次第に表情を赤黒く染めた。


「貴様ぁ! 覚悟はできてるんだろうなぁ!?」

「何のです?」

「今度行われる校内対抗戦だ! 無能集団の分際で、このSクラスに逆らったこと……後悔させてやる」

「……」


 どうしよう。すでに後悔してる。

 何がって? そりゃあこんな人と少しでも面識持ったことだけど?

 ぼーっと早くこの会話終わらねぇかなぁと考えていると、不意にクリフ先生は笑顔になった。


「まあいい。私たちSクラスにだけ許された特権で、校内対抗戦に参加できない勇者たちの力を借りて、生徒たちをより強くする事が出来るのだ!」

「え」

「来たまえ、勇者たちよ!」


 クリフ先生がそう言うと、なんと、神無月先輩を筆頭に、次々と同じ高校の生徒だった勇者たちが姿を現した。中には、翔太たちの姿もある。

 その光景を見て、俺は呆然としていた。


「ハハハハハ! もう許しを乞うたところで、無駄だよ! 惨めに大勢の前で恥を晒すがよい! 行くぞ、諸君!」


 そう言うと、クリフ先生は生徒たちと勇者たちを引き連れて、闘技場の奥へと行った。

 その際、なぜかブルードに似た雰囲気をもつ生徒が、またも廊下ですれ違ったときのように俺を激しく睨みつけ、そして何故かサリアたちも睨みつけていった。だれ? あの子。

 神無月先輩は俺の方を心配そうな視線を向けてきたが、俺は大丈夫だと伝わるはずのない念を送った。すると、なぜか神無月先輩は安心した様子を見せた。あれ!? 通じてる!?

 他にも、翔太は俺たちのことを気の毒そうに見つめ、賢治は怒っていた。恐らく、Fクラスと面識がないとはいえ、バカにした態度をとるクリフ先生にキレたんだろうなぁ。

 あとは、俺のことを虐めていた青山たちが、不快な視線をサリアたちに向けていた。……さすがにこれには、俺もイラッとしてしまった。うーん……俺も人並みに……いや、割とイラッときたから、結構な嫉妬やら独占欲はあるってことか……ちょっと安心したわ。

 まあそれはいいとして、まさかこんな場面で全員の勇者たちと会うことになるとはなぁ……。

 どこか現実逃避気味にそんなことを考えるも、翔太たちとはどうにか接触しないとなとも考えていた。

 すると、アグノスが、悔しそうにつぶやく。


「兄貴……俺、あそこまでバカにされるのが悔しいッス……」

「大丈夫だって。もうみんな魔法使えるんだし、すぐ見返せるよ」

「そうじゃなくて……! 兄貴や、ベアトリスの姐さんがバカにされるのが許せねぇんスよ!」

「え?」

「今朝、聞いちまったんスよ。兄貴とベアトリスの姐さんがあのいけ好かねぇ野郎どもと会話してるのを……兄貴は全然気にした様子はなかったっすけど、それでもベアトリスの姐さんが悲しそうにしてたのが……!」


 何と、アグノスは今朝のクリフ先生との会話を盗み聞きしてたようだ。うーん、気が緩んでたから、まったく気付かなかった……。

 アグノスは、そこまで言うと、不意にブルードたちの方に振り返った。


「なぁ、お前ら……悔しくねぇか? 魔法が使えなかった俺たちを、ずっと見捨てないで面倒見てくれたベアトリスの姐さんがバカにされるのが……! 俺は悔しい……!」

「フン。だったら見返せばいいだろう」

「…………へ?」


 アグノスが悔しそうに叫んだのを、ブルードは冷静に一言で返した。


「もう俺たちは魔法が使える。なら、校内対抗戦のときに見せつけてやればいい。定期試験は、このクラスがトップを独占すればいい。違うか?」

「お、おぉ?」

「……定期試験が不安だな……」

「バカだって言いてぇのか!?」

「そうだが?」

「否定しろよっ!」


 アグノスたちがまたコントのようなことを繰り広げていると、フローラが笑いながら言った。


「ははは! いいじゃない! ボクたちで、全員見返してやろうよ! 定期試験が怖いけどね!」

「……最後に情けない一言がなければ、いいこと言ってたのに……。まあいいわ。私も、ベアトリス先生がバカにされるのは許せない」

「さすがに、あれは言いすぎですよねぇ~」

「大丈夫ですよ。この最強無敵の私が、みなさんを完璧にサポートすることを約束します! ああっ私ってどこまでもいい女……!」

「お前ら……」


 アグノスは、それぞれの言葉に感動する。

 すると、ベアードがアグノスの肩に手を置いた。


『言われるまでもない。みんな、ベアトリス先生が好きだからな』

「ああ……そうだよな!」


 アグノスの瞳に、闘志の炎が灯った。


「よっしゃああああああっ! お前ら、散々バカにしてきたアイツらを、ぜってぇ見返してやろうぜ……!」

『ああ!』


 全員、アグノスの言葉に賛成の声を上げた。

 その光景に、ベアトリスさんは本当に慕われてるんだなって思った。

 勇者がどんだけ強いのかは知らない。

 でも、教えるのは化物であるこの俺だ。

 俺は、校内対抗戦で、相手がどんな反応をするのかを想像して、黒い笑みを浮かべていた。……あれ、もしかして俺って少しSっ気がある? いかんいかん、俺はノーマルだ。

 それはともかくとして、チートって、普段は戦闘以外ではあまり使う機会なかったけど……。


「チートってのは、こう使うんだ」


 そう思うのだった。

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