終戦
ガッスルたちが大暴れしたことによって、他の冒険者たちも次々と魔物を倒しにかかる。
だが、大暴れしているのは、ギルドの冒険者たちだけではなかった。
「魔物風情が、調子に乗ってんじゃねぇぞおおおおおおおおお!」
「こちとら、毎日変態の相手でストレス溜まってんじゃあああああああ!」
「大人しく滅ぼされろおおおおおおおおおおおおおおおお!」
日ごろ、変態の巣窟であるギルド本部の連中に、苦労させられている国の兵隊さんたちは、ここぞとばかりに大暴れしていたのだ。
その中の一人に、俺の知人でもあるクロードの姿もあった。
「おおおおおおおおおっ!」
クロードは、片手剣を鋭く振るい、近づく魔物たちを次々と切り倒していく。
「ハッ! あの変態共に比べりゃ、魔物のほうがずっと可愛いじゃねぇか!」
「「「やめろよ……照れるだろ?」」」
「褒めてねぇよ!?」
一斉にクロードの言葉に照れ始めた冒険者に、すかさずクロードはツッコんだ。……クロードは普通ですごく安心した。
そんな光景を眺めていると、バーナさんが感心したように言う。
「フム……クロード君か。彼は中々やるようじゃな。ウィンブルグ王国には、優秀な兵士たちが多いのぅ」
「……その背景に、変態たちの姿がなければ素直に喜べるんでしょうがね」
認めたくねぇだろうなぁ……変態たちの相手をしてたら、強くなっただなんて……。
思わず遠い目をしていると、すさまじい轟音が辺りに響き渡った。
何事かと思い、その方向に視線を向ければ、常に何かを壊したいと叫んでいた、あの男の姿があった。
「イィィィィィィィィィイイイイイイイイヤアアアアアアアア! 楽しいじゃねぇかあああああああああああ! もっとだ……もっと俺に、獲物を……壊せるモノを寄越せええええええええええええ!」
男の姿は、胸元が大きく開いたシャツの上から、黒色のジャケットを羽織っており、たしか、コーンロウと呼ばれる髪型のオレンジ色髪と、燃えるような赤い瞳。
肩には、身長を優に超す巨大なハンマーが握られており、肩に担いで周囲の魔物を威圧していた。
「どうしたどうしたぁ!? 遠慮せずにかかって来いよぉ! ソッコーでミンチにしてやんよ!」
そう言い、男が大きく地面にハンマーを振り下ろすと、男を中心に半径10メートル程度のクレーターが出来上がった。
「つまんねぇなぁ!? そっちから来ねぇんじゃあ……俺から行くぜええええええええええ!」
男は、腰を大きく捻り、ハンマーを振りかぶりながら魔物の群れに接近すると、溜めていた力を解き放ちながら魔物にぶつけた。
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!
その一撃だけで、だいたい100体近くの魔物が消し飛んだように、俺には見えた。
男は、返り血を存分に浴びながら、愉快そうに笑う。
「ヒャハハハハハハハハハハハッ! 破壊ってのは、最っっっっっっっ高に健全だよなぁ!?」
どこが!? どこが健全なの!?
全然健全じゃねぇよな!? むしろ害悪だよね!?
あれ? おかしいぞ。味方なはずなのに、むしろ敵に見える……!
「【血で染まる者】グランド・ローゼン。彼こそ、まさしく実力はSランク。じゃが、見ての通り破壊にしか興味がなく、依頼をこなしても、高頻度で周囲の建造物等を壊しては、高額の違約金を払わされておる、Dランク冒険者じゃよ」
ダメダメじゃねぇかあああああああああああ!
俺は、バーナさんの説明に頭を抱えた。
き、強敵すぎるぜ……ギルド本部……!
「ふむ、誠一君。今度はあっちを見て見るといいじゃろう。あっちでは、人数の多いパーティが魔物と戦っておるぞ」
「え?」
バーナさんに促されるまま、その方向に視線を向けると――――。
「げえっ!?」
そこには、俺を……否、俺の貞操を狙ってきた、男たちの姿があった!
「彼らはC級のパーティ【薔薇の楽園ビー・エル】じゃな。先頭にいる男が、パーティリーダーのホモン・ゲイザーじゃよ」
名前が酷ぇぇぇぇぇぇええええええええ!
何なの!? パーティ名から、本名まで……すべてにおいて、コイツらのためにあるような名前じゃねぇか!
「彼らの恐ろしいところは、依頼を完遂するたび、同志が増えることにある。今となっては、貴族界の中にも、彼らの仲間は多くおるし、その人間は世界各地に散らばっているというんじゃから、驚きじゃよ」
恐ろしいよおおおおおおおおおお!
ゾンビ以上のホラーなんですけど!?
てか、今気付いたけど、サリアをナンパした連中がアイツらと一緒にいるんだけど!?
こ、怖ぇ……餌食になってんじゃねぇか……。
俺が全力で恐れおののいていると、パーティリーダーである――ホモンが、言い放った。
「この街には、まだまだ俺たちが可愛がってねぇ坊やたちがたくさんいるんだ。全力で魔物どもを殲滅するぞぉぉぉぉぉおおおおおおお!」
「「「オウッ!」」」
守ってくれるのはいいんだけど、動機が不純すぎる……!
ホモンたちは、怪しげな腰遣いで魔物たちを錯乱し、次々と魔物を打ち倒していく。
もうヤダコイツら。
現実逃避をし始めた俺だったが、不意に視界に映りこんだ人物に、目を見開く。
「えっ!? の、ノアードさん!?」
何と、アルとの関係で悩んでいたとき、優しく諭してくれた、喫茶店アッコリエンテのオーナーである、ノアードさんが、戦場のど真ん中に姿勢よく立っていた。
しかも、その姿は、出会ったときと変わらず、バーテンダーのようなスタイルである。
「な、なんでこんなところに!?」
「ん? ああ、ノアードか。彼なら、まったくの心配は無用じゃな」
焦る俺とは対照的に、バーナさんは落ち着いてそう答える。
すると、ノアードさんに向かって、一体の巨大なライオンのような魔物が急接近していた。
「おお、あれはSランクの『ビーストキング』じゃな」
「Sランク!?」
しかも、ノアードさんに襲い掛かっているのは、Sランクの魔物らしい。
よく観察してみれば、たしかにビーストキングという魔物は、他の魔物より一回りも体躯が大きく、人間を軽く一飲みしてしまいそうなほど巨大な口には、ギラギラと鋭い牙が生えそろっていた。
ビーストキングは、雄叫びを上げると、ノアードさんを噛み千切らんと驚く速度で襲い掛かった。
「……残念ですが、貴方の命を貰います」
それだけ呟くと、ノアードさんは、いつの間にか両手に草刈り用の鎌と同じサイズの、漆黒の鎌を握っていた。
それをそれぞれの手で弄ぶと、ノアードさんはビーストキングの噛みつきを左足を半歩引くことだけで避け、瞬時に右手の鎌を逆手に持ち替えると、人間でいう頸動脈に当たる場所をすれ違いざまに切り裂いた。
頸動脈を斬られたビーストキングは、尋常じゃない量の血を噴出させ、数歩よろめくと静かに倒れた。
「……安らかな死を」
ノアードさんつえええええええええええええ!
てか、マジでカッコイイんですけど!? ノアードさんって何者!?
顎が外れそうなレベルで驚いていると、バーナさんは当然といった様子で言う。
「まあ、これくらいは朝飯前じゃろうな。なんせ、【死】と恐れられた、伝説の暗殺者なんじゃからのぅ」
誰か助けてください。もう俺にはついて行けません。
俺が理解するには早すぎたんだ。そのうち腐るぞ。
何とか現実を直視ていると、サリアたちが戦っている姿が目に入った。
「えいっ!」
サリアは、腕だけをゴリラに戻し、次々と魔物を殴り倒していく。
その光景に、周囲の冒険者や兵士たちは唖然としていた。
……いや、無理ねぇよな。すごい美少女のサリアが、腕だけムキムキにさせて、魔物を倒してる姿なんて――――。
「嬢ちゃんやるじゃねぇか! 俺らも負けてられねぇな!」
「よっしゃあ! やってやるぜぇ!」
「クッ! 何という筋肉……! サリア君が、まさかここまでだったとは……! だが、私は私の筋肉を信じるぞ!」
全然大丈夫そうでした。さすがだね。つか、ガッスルは張り合うなよ。
まあ、なんていうか、サリアは人間の状態だと、力を発揮できないらしいから、変身する必要があるのだが、部分的な変身だけでも、強さは戻るようだ。
そんな考察をしていると、サリアが俺の姿に気付き、元気よく手を振ってきた。……惚気そうになるな。
次に視線を移すと、アルが自分の得物である大きな斧を振るっていた。
「はあああああああああああっ!」
アルは、グランドさんほどではないにしろ、一振り一振りが強力で、魔物を的確に倒していく。
だが、魔物の数があまりにも多く、アルは魔物に取り囲まれた。
「アル!?」
「大丈夫だ!」
急いでアルのほうに向かおうとしたが、アルに止められる。
魔物たちは、次々と牙や尻尾など、凶悪な一撃をアルに浴びせようとするが、アルは冷静にそれらを見切り、最小限の動きでそれらをかわした。
そして、ある魔物の尻尾が、地面に叩き付けられた瞬間、大きくアルはジャンプすると、足元にいる魔物の群れに向けて、右手をかざすと最近習得したばかりの魔法を放った。
「『アイス・プリズン』!」
その魔法は、最上級氷属性魔法であり、右掌から強烈な冷気が放出され、一気に魔物の群れが氷の檻に閉じ込められる。
すると、アルは上空で大きく斧を振りかぶると、スキルを発動させた。
「『メテオクラッシュ』!」
真上から振り下ろされた一撃は、氷漬けにされた魔物を容易く粉砕し、地面に巨大なクレーターを作り上げた。
「なっ?」
肩に斧を担ぐと、にこっと俺に笑いかけた。
思わずその笑顔に見惚れると、アルはその様子に気付き、慌てた様子で他の魔物を倒しに向かった。……結局惚気てんじゃねぇか、俺。
ため息をついていると、よく知る声が耳に飛び込んできた。
「私と主様が笑って美味しい食べ物を食べるためにも、貴様らには消えてもらうぞ」
声の主は、ルルネであった。
ルルネは、迫りくる魔物の群れに怯むどころか、腕を組んで仁王立ちで待ち構えている。
そんなルルネに、魔物の群れがまさに接触すると思ったその瞬間、ルルネは長い足をゆっくりと上げ、空手の蹴りのような構えをとった。
そして、鋭い蹴りを先頭の魔物に放った。
ズパアアアアアアアアアアアアアアン!
先頭にいた魔物は砕け散り、なぜかルルネの放った蹴りは、ソニックブームを生み出し、周囲にいた魔物をズタズタに切り裂いた。
ルルネは、蹴りを放った姿のまま、一言。
「私を倒したければ、多くの神でも連れて来い」
ロバだよね?
何度記憶を掘り返してみても、ルルネはロバという記憶しか出てこない。
何なんだろうね。蹴りでソニックブームですか。それに、ロバの言うセリフじゃねぇな。
もう、俺は考えることを放棄した。現実逃避じゃないよ? これは必要なことなんだよ?
視線をずらせば、オリガちゃんがナイフを使い、どんどん魔物を倒している姿が。
「……」
オリガちゃんは、危なげなく、先ほど見たノアードさんのように、的確に魔物の急所を突いて、倒していた。
悲しいことだが、オリガちゃんはそう言う技能を徹底的に叩き込まれている。
本職は暗殺者なんだろうが、普通の戦闘でもレベル通り、圧倒的な力を見せつけていた。約束通り、終わったらなでなでしてあげよう。
こうして、いろいろな冒険者たちの様子を見ていた俺は、小さく呟く。
「これ……俺いらなくね?」
そう思ってしまうのも無理はないと思うんだ。
だが、近くにいたバーナさんは、少し視線を鋭くし、遠くを見つめながら俺の言葉に反応した。
「いや、そうも言ってられんようじゃのぅ……」
つられて俺もその方向に視線を向ければ、波のように押し寄せる魔物の姿が。
「5000と報告では聞いておったが、どう考えてもそれ以上……しかも、今まではSランクの魔物はちらほらとしか見かけなかったが、今度はそうじゃないようじゃしのぅ」
「え? それはつまり……Sランクの魔物ばかりが押し寄せてるってことですか!?」
「そう言うことじゃな」
ナンテコッタイ。
本当に、どうしてこんな状況になったのだろうか?
原因は分かっていないようだが、こんなに一斉に攻めてきて……どこかでこんなに集まってたのなら、普通気付くはずだ。
だが、俺たちは全く気付かなかった。
もしかして、これって人為的に引き起こされたモノなんじゃないか?
転移魔法っていう便利な移動手段まであることだし。
それに、ランゼさんは、魔族との共存を望んでいるらしいから、それが目障りな国からの侵攻とか……。
まあ、所詮素人の考える浅知恵なので、当たっているとは到底思えないが、それでも、もしこの状況を生み出した人間がいるんだとすれば、一番の害悪はそいつだろう。
意味のない考察に頭を使っていると、バーナさんが前に出た。
「どれ、ワシも参戦するとしようかのぅ……」
そう言うと、バーナさんは身長を越える大きな杖を前にかざした。
すると、赤色、青色、緑色、橙色、黄色、水色、白色、黒色の球体が現れ、バーナさんの目の前でサークルを描き出した。
そしてそれらの球体は、一つずつ合わさり、やがて不気味な色の球体が一つ、その場に浮かび上がっていた。
その球体を出現させると、バーナさんは笑みを深め、魔法名を言う。
「ほれ、滅びなさい。『カオス・レイン』」
バーナさんが魔法名を唱えた瞬間、不気味な球体は、無数に枝分かれしながら上空に打ちあがり、やがて魔物の群れにおびただしい量となって、降り注いだ。
その魔法の威力は、すさまじかった。
一つ一つの大きさは小さいのに、触れた瞬間魔物たちが次々と消し飛んでいくのだ。
「ちと、数が多いのぅ……これならどうじゃ。『カオス・トルネード』」
今度は杖を構えることもせず、バーナさんは左掌を上に向けた状態で、その左手を軽く、まるでボールを放り投げるような動作を起こした。
すると、降り注いでいた魔法の軌道が途中で変わり、やがて円を描くように無数の魔法が回転し始めた。
その光景は、まるでシャッターを開けた状態で撮影した、星の写真のように見えた。
魔法は、回転速度を早めると、徐々にその間隔を狭くしていき、最終的には無数の魔法が高速回転して、竜巻のようなものが生み出された。
その魔法でできた竜巻は、さっき以上の威力と範囲で、次々と魔物を殲滅していく。
「ホッホッホ。まだ、若い者には負けてられんからのぅ」
この人もヤベェ。
俺より化物なんじゃねぇの? 超越者って言うくらいなんだしさ。
なんだ、こうしてみると、俺なんて全然大したことねぇじゃねぇか!
いつまでも見ているわけにもいかないし、そろそろ俺も参戦しないと。
よぉし、これだけ化物みたいな連中が揃ってるなら、俺が少し張り切っても大丈夫だろう。
ただ、今回はすごい数の魔物が押し寄せてきていることを考えなきゃな。
そう考えると、いちいち前線に出て、剣を振るうより、俺が広範囲の魔物を倒せる魔法を、新しく創り出して戦ったほうが効率がいいな。
まずはイメージだ。
広範囲かつ、無差別じゃなくて、魔物だけを倒せる魔法。
それなら、やっぱり頭上からの攻撃が一番安全だろう。今俺のいる場所から、極大のレーザーをぶっ放すよりはね。
頭上からの攻撃で、広範囲……なんていうか、神様の裁き的なイメージが浮かぶなぁ。
まあいいや。中二的なネーミングになりそうだけど、前に生み出した魔法に比べれば、何てことねぇな。
そう思った俺は、イメージをしっかりと固めると、右腕を頭上にかざし、考え付いた魔法名を口にした。
「ジャッジメント!」
………………。
冷たい風が、俺の目の前を吹き抜けた。
アレ? オカシイ。魔法が発動してくれない。
俺は顔を真っ赤にして、その場にうずくまった。
ぬああああああああああああああああああああ! 恥ずかしいぃぃぃぃぃぃいいいいいいいい!
何で発動してくれないの!? あんなにふざけた魔法名のときは反応してくれたのに!
これじゃあ俺が痛いヤツじゃねぇか! …………今さらだな。
幸いなことに、誰も俺の奇行を目にしていなかった。……あれ? なんだかより一層悲しくなってきた。
一人勝手に悲しんでいると、それは起きた。
突如、晴れていたはずの空が、黒雲に包まれたのだ。
急にあたりが暗くなったことに驚き、空を見上げると――――極大な光が次々と、降り注いだ。
しかも、すさまじい速度で降り注ぐ魔法だが、国の兵隊さんたちには何の被害もなく、的確に魔物たちだけを狙ったのだ。
さらに、忘れていたが、俺のスキル『無間地獄』の効果で、魔物たちは死ぬことができない。いや、死ぬ寸前のダメージを与えるわけだから、結局放っておけば死ぬんだけども……。
そんなことを思いだしていると、魔物たちの絶叫が耳に入ってきた。
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!』
その叫び声は、大地を震わし、周囲一帯に大きく響き渡った。
よく見れば、魔法はちゃんとすべての魔物に降り注いでいるようだ。
ただ、俺の魔法を見て、数多くの人が目を見開いている。
中でも、バーナさんはこれでもかというほどに目を見開いて、俺を凝視していた。
ま、まあ、やりすぎた感はあるけども、これで一件落ちゃ――――。
「「「「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!」」」」
アレ?
もう一度魔法が降り注いでいる場所を確認すると、何と、ガッスルたちにまで魔法が降り注いでいた。
……アレ?
急いで魔法を中断する。
オカシイな……何でガッスルたちに?
首を捻りながら、もう一度同じ魔法を発動させた。
「「「「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!」」」」
…………アレ?
もう魔物の群れは全滅したのか、今度はガッスルたちにだけ、魔法が次々と降り注いだ。
すると、脳内にアナウンスが流れる。
『スキル【魔法創造】が発動しました。誠一魔法【ジャッジメント】が創造されました』
誠一魔法って何!?
すでにツッコミどころしかないが、取りあえず魔法の効果を確認した。
『誠一魔法:ジャッジメント』……使用者の認識する、害悪全てに裁きの光を降り下ろす魔法。
この一文を見て、俺はぽんと手を打った。
「なるほど! 俺がガッスルたちを害悪だと思ったから、ガッスルたちにも効果があったのか!」
「「「「納得してないで止めてえええええええええええええええええええ!」」」」
仕方がないので、魔法を中断させた。
すると、俺の魔法を受けた変態たちは、体中黒焦げで、頭はアフロになっていた。
「いやぁ、最後の最後で強烈な一撃をもらってしまったな! ハッハッハッハッハッ!」
体が黒焦げだからこそ、より一層歯が白く輝いて見えるガッスルは、爽やかに笑ってサムズアップしてきた。……タフすぎる。
「ああん……いいですわ……久しぶりに、骨の髄までしびれましたわっ!」
エリスさんは、表情を蕩けさせながら、体をくねくねさせる。本当にSでもMでもいけたんだ……。
「これはこれで、私の裸を見てもらうのもアリかもしれませんな」
「私も、この格好のほうが、幼女からの受けもよさそうですな」
ウォルターさんと、スランさんは、朗らかに笑ってそんな会話をしている。
……本当に、この変態たちオカシイ。
俺の魔法を受けて、ケロッとしてやがる。
思わずその光景に戦慄していたが、俺の魔法によって、残りの魔物は全滅した。
あまりにもあっさりとした幕引きとなってしまったが、本当なら、もっと苦戦して、絶望する場面だったのだろう。
だが、結局……最初から最後まで、ツッコミどころしかない戦いだった。
それでもいい。みんなが無事ならば……。
――――魔物による被害人数:0,倒した魔物の数:たくさん――――
◆◇◆
薄暗い部屋の中、一人の男が愉快そうに笑い声をあげる。
「んひっんひっんひっんひっ! 今ごろテルベールは……」
そこまで言うと、笑い声を大きくした。
そして、狂ったように男は言葉を紡ぎ出した。
「んひっんひっんひっんひっ! 苦しめ! 絶望しろ! そのすべてが、魔神様の――――」
だが、男の言葉は最後まで言い切ることはなかった。
なぜなら、突然、男の頭上から、極大の光が降り注いだのだ。
「んぎゃああああああああああああああああああああああ!!」
光が収まると、こんがりジューシーな男が一人、無様にその場所に転がっていた。
「な、何が起こって……ガクッ」
男は、結局訳も分からないまま、気を失った。
――――そんな悲惨な目にあっている人間がいることを、誠一も知らない。
【血で染まる者】グランド・ローゼン……破壊狂。
【薔薇の楽園ビー・エル】ホモン・ゲイザー……男好き。
7月23日修正。破壊狂の名前を、以前出していたことを忘れていました(汗)なので、修正しました。
㋈2日修正。魔法名を『ジャッジメント』へと変更しました。