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クレバーモンキー

「いた……!」

 進化の実を食べた後、ひたすら森の中を探しまわった結果、とうとう猿の集団を見つけた。

「キィッ!」

「キャッキャッキャッ!」

「ウッキィー!」

 よく見れば、俺が食べた、あの進化の実を囲んで喜んでいるようにも見える。

「……あ、鑑定してみようかな?」

 さっきまではそんな余裕がなくて、そこまで気が回らなかったけど……。

 でも、今のように、茂みに隠れた状態なら……。

 俺は早速『鑑定』を使用してみた。

 すると、俺の視界に猿の名前が現れた。

『クレバーモンキーLv:120』

 …………は?

 ち、ちょっと待て!名前がクレバーモンキーと言うのは、直訳すると賢い猿って事で良いんだけど……。

 レベルおかしくね!?120だぞ!?いきなりハードモード過ぎるだろ!?レベル1どころか、魔力以外全ステータス1の俺にどうしろと!?

 とんでもないレベルに驚いていると、俺は一匹のクレバーモンキーの行動に目が移った。

「……あれ、何やってるんだ?」

 それは、なにやらすり鉢の様なモノで、変な草を水らしきものと混ぜながらすり潰しているところだった。

 そのクレバーモンキーは、ある程度すり潰したモノを、ガラスの容器に詰める。

 完成した液体の色は青緑色であり、なにやら体に悪そうだ。

 てか、道具を器用に使ってるのを見ると、本当に賢いんだなと思う。

 そんな感想を抱いていると、突然クレバーモンキー達は行動を始めた。

「ウキィ!」

「ウキャキャッ!」

「キキィイ!」

 どこに行くんだ?

 ついて行くべきか、いかないべきか……。でも、クレバーモンキー達はこの場所にさっき作っていた液体や、あの進化の実を放置したまま移動して行く所を見ると、もう一度この場所に戻って来るのだろう。

「……なら、取りあえずクレバーモンキー達の置いて言ったモノだけ回収しておくか……」

 そう言い、クレバーモンキー達が移動するのをじっと待った。

 そして、全てのクレバーモンキーが移動したのを確認すると、さっきまでクレバーモンキー達がいた場所に出た。

「ふぅ……取りあえず、食料の『進化の実』を回収っと」

 俺は、落ちている進化の実を全部アイテムボックスに入れた。数えると、全部で9個だった。

 初めてアイテムボックスを利用したけど、便利だな。入れたいアイテムなんかを念じれば、簡単に入れられるみたいだし。

「……ってそう言えば、なんか異世界の知識かなんかの本を入れてるって言ってたよな?」

 うーん……確認したいけど、今確認して、あの猿どもが戻ってきたら困るもんな。後にしよ。

「……それ以上に気になるんだけど、あの液体って何なんだ?」

 それは、あの猿が作っていた体に悪そうな青緑の液体が詰まったビンだった。

 俺は、置いてある液体を手に取った。

「うわ……近くで見れば見る程体に悪そうだ……」

 その液体の入った瓶は、一個だけでなく、後4本ほどある。その隣には、この液体の原料と思われる草も積み上げられていた。てか、このビンどこで調達してんだ?まさか、作ってるとかじゃねぇよな?流石にそれは有り得ねぇだろ。……そう信じたい。

 そんな事より、この液体が何なのかと言う事の方が大事だ。

「……一応、鑑定してみるか?」

 そう言い、俺は鑑定のスキルを発動させた。

『最上級回復薬』

「うおう!?」

 まさかの結果に俺は驚きの声を上げた。

 これが回復薬!?しかも最上級!体にいいどころか、むしろ悪そうに見えるのは何故!?

「そ、それじゃあ……この草の山は?」

 再び鑑定を使用する。

『特薬草』

 そうきたかっ!ドラ○エじゃねぇかっ!

 で、でも、効果が想像しやすいからいいだろう。

「これは……回収するしかないだろう」

 俺は、さっそく全部の最上級回復薬と特薬草をアイテムボックスに仕舞った。

「ヤバい……思わぬ収穫だったぞ……」

 クレバーモンキー……恐るべしッ!

「かなりの数回収できたけど……もしかして、ここら辺には同じ様に薬草とかあるんだろうか?」

 そうだとすれば、少しでも多く採取しておきたい。仮に何か起こった場合の保険としてだ。

「仕方ねぇ……取りあえず欲しいモノは回収できたし、次は薬草を探してみようか」

 あのクレバーモンキーが縄張りらしき所にしている位だ。この近くには他にも木の実やキノコがあるかもしれねぇもんな!

 次の行動を決定すると、俺はすぐにその場から立ち去った。


◆◇◆


「うーん……」

 俺は一つの草と睨めっこをしていた。

 あの後、すぐに手当たり次第草を引っこ抜いては『鑑定』のスキルを発動させ、何か使えそうなモノは無いかと調べ続けていた。

 だが、結果は全てただの草。何の効果も無く、むしろ生のまま食べれば腹を壊しそうだ。

 でも、それはさっきまでの事。今は、別の状況で苦悩している。

「これ……何の効果があるんだ?」

 やっと見つける事が出来た『鑑定』に反応した草。

 ただ、そこに書かれてある事に俺は悩まされていた。

「……分かる訳ないだろ?全部『?』じゃあ……」

 そう、『鑑定』した結果、そこに現れた説明やその草の名前は全て『?』で表記されていた。分かる訳が無い。

「文字化けしていない分、まだいいんだろうけど……本当に何なんだ?」

 ただ、『鑑定』に反応したって事は、何かしらの効果は期待できる筈だ。

「……よし!」

 俺は、この草を食ってみる事にした。

 腹壊すかもしれないが、それでもどう言う効果があるのかを確認しないと先に進めない。ずっと現状維持のままになるのだ。

 何かを得るには、何かを犠牲にする必要がある!……犠牲にするのは自分の体だけど。

 でも、情報を手に入れるにはやむを得ない。

 一番最悪なのは、その時に効果を発しなくて、後々に出てくるタイプだった場合だ。

 毒があったらと考えると、嫌になる。

「……ええい!考えれば考える程食えなくなるだろうがっ!」

 一旦考えだすと負の連鎖が起こるので、俺は決意を固めると、一気にその草を口に含んだ。

「……にっげぇぇぇぇぇぇ……」

 メチャクチャ苦かった。

「ゲホッ!ゴホッ!クソ苦ぇっ!で、でもこれは体にいい証拠なんじゃないか!?」

 そうポジティブにとらえようとした瞬間だった。

「がっ!?」

 突然体が硬直して動けなくなった!

「あがががが」

 体中が麻痺している。全然動かない。

 こ、これって……麻痺状態になる草だったのか!?

 でもこうして実際に麻痺った状態になると、そう考えざる得ない。

 いきなりハズレを引いちまった……!

「あがが……」

 口から出る声も奇妙なモノ。それに、体が硬直した時の体勢が悪かったのか、地味に体中が痛い。

 そんな状態がしばらくの間続く。

 ヤベェ……今あの猿とか狼とか来られると、どうしようもないんだけど……。

 だが、不幸中の幸いと言うべきか、俺の麻痺が治まるまでの間、危険な生き物は一匹も現れなかった。

「……あ」

 とうとう麻痺から回復する。

 ハッキリ言おう。1時間もの間麻痺の状態だった。体中が痛いです。てかあの化物共が襲って来ないかヒヤヒヤだった。

「ひ、酷い目に合った……」

 もう二度とあんな目に遭いたくねェ……。

 俺がそうげっそりとした気分でいると、突然頭に変な声が響いてきた。

『スキル≪麻痺耐性≫を習得しました』

「は?」

 いきなり声が頭に響いた事もそうだが、スキル?

 俺は自分のステータスを開き、スキルの欄を確認した。


≪柊誠一≫

種族:人間なのかさえ疑わしい

性別:臭さを極めたキモ男

職業:野性味溢れるホームレス

年齢:17

レベル:1

魔力:17

攻撃力:1

防御力:1

俊敏力:1

魔攻撃:1

魔防御:1

運:0

魅力:測定不能のその先へ(低過ぎて)

≪装備≫

ゴミ以下の学生服。ゴミ以下の学生ズボン。モザイク必須の肌着。モザイク必須のパンツ。

≪スキル≫

鑑定。完全解体。麻痺耐性。

≪状態≫

進化×1。


 なんか酷くなってる!?

 ヤベェ……種族に至っては疑われ始めた……!

 性別も更にバージョンアップしてるよ!?悪い意味でな!

 職業は前回よりいいのか悪いのか判断できねぇぞ!?

 魅力に至っては、測定不能の先行っちゃったよ!?もうどうしようもなくね!?

 もうツッコむのも嫌になるんだけど、装備とか名前が泣けてくるのは何故?

 確かに風呂にさえ入っていないので、俺の体臭は更に磨きがかかっている事だろう。そんな状態で服を着ているという事は、その体臭が必然的に染み込む訳で……。それに、土ぼこりやら垢やらで凄く汚いので仕方が無いと言えば、仕方が無い。

 まあそれは一旦置いておいて……この≪状態≫と言うのと、進化×1、とやらは何なんだろうか?前確認した時は無かったんだけど……。

「……あ、そうだ。この際だから、スキルの内容を確認してみるか」

 そう言い、俺は自分のスキルを思い浮かべてみた。

 すると、目の前にそのスキルの説明が現れる。


『鑑定』……ある程度のモノを細かく解析する事が出来る。ただし、ある一定以上のレア度を誇るアイテムや、格上の相手には完全に解析できない。

『完全解体』……魔物を倒した際、手に入るアイテムが最大量となり、その魔物の全てが手に入る。

『麻痺耐性』……麻痺が効かなくなる。


 うん、『鑑定』や『麻痺耐性』の説明はなんとなくわかる。

 でも、『完全解体』とやらの説明がいまいちよくわからない。手に入るアイテムの数が多くなるってのは理解できるんだけど、魔物の全てと言う部分が良く分からないのだ。

 それに、『鑑定』の説明欄にあったレア度と言う単語も知らない。まあ、神から貰った本に書いてあるんだろうけど。

「うーん……謎だらけだなぁ……。結局この草の名前も分からないし」

 そう言いながら、残りの草をもう一度鑑定してみた。


『特麻痺草』……食べたりして体内に取り入れた瞬間、一瞬で体を完全麻痺させる草。凶暴な魔物が間違えて食した結果、麻痺する場合もある。


 怖っ!?てか危ねぇな!?しかも麻痺の前に『特』って付いてるよ。どんだけ麻痺の威力があるんだよ。

 てかこれ間違えて食った魔物とか哀れ過ぎる……。

 なんに使うんだろうな?これ。てか今更だけど、鑑定できたし。何で?

「……ああ、成程」

 俺は少し考えて、鑑定が上手くいった理由が分かった。

「今回の鑑定は文字化けしてなかったから、こうして身をもって体感することで、その内容が分かるように出来てたのか」

 へぇ~……。

 …………。

「めんどくさっ!?」

 一々鑑定して『?』って出るたびに食わなきゃいけないの!?またあんな辛い思いしないとだめ!?

 な、何とかならねぇのかよ!嫌だぞ!?一々麻痺ったり毒ったり……体が持たんわっ!

「あー……今日は疲れたぞ、俺……」

 今日は……なんか探索を続ける気分じゃなくなってしまった。

「仕方ない……明日もう一度頑張ってみるかぁ~」

 今日はしっかり休んで明日に備えよう。

 そう思った俺は、また安全そうで、登れそうな木を見つけてそこに何とかして寝るのだった。

 ただ、この時の俺は、『特麻痺草』の凄さを全く理解できていなかった……。

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